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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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相棒と幼馴染

学園に戻った日の夕暮れは、思ったよりも賑やかだった。

食堂は人で溢れ、金属の食器が触れ合う音と笑い声が天井に反射している。

森の夜の静けさとは、まるで別世界だ。


長机を囲んで、変成科A班は並んで夕飯を食べていた。

久しぶりの学園食は、正直、森の族長メシに比べると少しだけ物足りない。

でも、それを口に出すほど野暮じゃない。


「ねえ、明日さ」


スプーンを置く音と一緒に、少し弾んだ声がした。

身を乗り出して、目を輝かせている。


「週末でしょ? みんなで出かけない?」


一瞬、沈黙。

それから、斜め隣で肩をすくめる気配。


「……シアンが行くなら、行く」


即答に近い声。

当たり前みたいに頷いているのが、もう“そういう距離”だ。


その流れを、何の疑問もなく引き取る声が重なる。


「俺たちも行くよな?」


視線が、自然にこちらに向く。

確認じゃない。前提だ。


「うん、行く!」


答えた自分の声が、少し高かったのは自覚している。

ラウル以外と街を歩く。

買い食いして、寄り道して、くだらない話をする。


……あれ?


それ、ちょっと楽しみじゃない?


胸の奥で、ぱちんと小さく何かが弾けた。


夕飯を終えて、皿を戻す。

自然とA班で固まり、変成科の寮へ向かう。

歩幅も距離も、森にいた頃のまま。


夜風が通り抜ける回廊。

石畳に影が落ちて、灯りが揺れる。


その時だった。


変成科寮の前。

少し暗がりになった場所に、立っている影があった。


……あ。


気づいた瞬間より先に、足が止まる。


そこにいたのは、ラウルだった。


壁際に背を預け、腕を組んでいる。

表情は読み取れない。

でも、視線だけは――ずっと、こちらを見ていた。


A班が近づく。

風が、強く吹いた。


「セナ」


名前を呼ばれた瞬間、身体が自然に反応した。

隣にいた長身が、何の迷いもなく距離を詰める。


指先が、頬の横に触れて。

銀色の髪を、耳にかける。


「すごい突風だな」


笑い合う声。

軽くて、親しげで、当たり前みたいな距離。


「ほんとだね」


返した自分の声も、迷いがなかった。


後ろでは、恋人繋ぎのまま歩調を緩めた二人が、何の違和感もなくその光景を受け入れている。

まるで、ずっとそうだったみたいに。


――世界が、回っている。


ラウルがいなくても。

セナの隣に、別の男がいても。


その事実が、はっきりと形を持って、目の前にあった。


視線を感じて、ふと顔を上げる。


寮の影。

そこに、ラウルがいた。


目が合った瞬間、胸が一気に温かくなる。

さっきまでの楽しさとは、まったく別の種類の感情。


「……ラウル」


名前を呼ぶ前に、もう歩き出していた。


ラウルの表情が、わずかに緩む。

でも、声は低く、短い。


「来い」


それだけ。


手首を掴まれて、引かれる。

力は強いのに、乱暴じゃない。

迷いがなくて、逃がす気もない。


「ごめん、先戻るね!」


振り返って言うと、A班は一瞬だけ目を丸くして、すぐに笑った。


「おー」

「また明日な」

「族長、逃げるなよー」


軽口。

でも、その視線の奥にある理解が、妙に刺さる。


引かれたまま、少し離れる。

背後の気配が遠ざかる。


ラウルは、何も言わない。

ただ、手を離さなかった。


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