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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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きのこ栽培と農業

雨はようやく落ち着いた。

空気は湿って、土の匂いが濃い。

森が息をしているのがわかる。


私は今、しゃがみ込んで、両手を地面に翳している。

変成魔術を展開中。


対象――

きのこ菌。


「……増えろ……増えろ……」


地味。

とにかく地味。


でも、これが生きるってことだ。


背後から、遠慮がちな声。


「……族長、これは?」


振り向くと、手に持たれているのは乾燥した茶色の塊。

見覚えがありすぎる。


「出汁の元よ!」


即答。


「増やすのよ!!!」


一瞬の沈黙。

次の瞬間、ああ!と納得の声が上がる。


きのこ。

海藻。

乾物。


地味だけど、命の味。


私は立ち上がって、声を張った。


「各班に声かけてー!

 豆!玉葱!長葱!小葱!」


やたらとネギ率が高い。


「ネギ好き多くない!?」

「万能だからだよ!」

「わかる!」

「刻めば勝ち!」


うん、わかる。


「芋!」


どよっと空気が揺れた。


「キター!!」

「神!!」

「主食!!」


芋は正義。


さらに。


「……穂米、持ってきてる人いる?」


恐る恐る聞いたら、手が上がった。


「え、なんで!?」


本人は首を傾げる。


「……安かったから……?」


幸運すぎる。


人参。

林檎。

柑橘類。


四十人もいれば、全員がドライフード一択なわけがない。

むしろ、

「なんでそれ持ってきた?」

と思ったものが、あとから刺さる。


布。

針。

鍋。

木匙。

石臼。


生きるためのものは、派手じゃない。


ふと視線を上げると――


教官。


テーブルにクロス。

椅子に優雅に腰掛け。

紅茶。

バゲット。

片手に恋愛小説。


……にやにやしてる。


「……教官」


呼びかけると、顔も上げずに一言。


「いい眺めだねぇ」


ホリデーか。


完全に観察者。

いや、愉悦者。


「変成科はね、こうじゃなきゃ」


知らんがな。


でも。


文句を言う気は、不思議と起きなかった。


私たちは今、畑を作っている。


地面を均し、

排水を考え、

区画を切る。


魔術で耕し、

土の質を変え、

水分を調整する。


派手な光は出ない。

爆発もしない。


でも。


ここが、生きる場所になる。


誰かが言った。


「……これ、訓練だよね?」


別の誰かが笑った。


「生活だろ」


その通り。


変成科は、今日も後ろに立つ。


前に出ない。

でも、消えたら詰む。


私は、土に触れながら思った。


――ラウル、今頃なにしてるかな。


同じ学園。

別の場所。


でも。


生きるために必要なことをしている。


それだけで、今日は十分だった。

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