幼馴染と一緒に実家へ帰る
「セナ!」
名前を呼ばれた、と思った次の瞬間。
世界がぐっと近づいた。
――抱き締められた。
勢いが強い。
腕が長い。
胸板が硬い。
「だ、だらた、たな……だれかなあま?」
言葉が、完全に赤子のままだった。
自分でも、びっくりするほど、舌が回らない。
脳は成人、口はバブ。
赤子、まだ卒業できてなかった。
「ぷはっ!」
頭上で、肩を揺らす気配。
「俺! 俺だよ! ラウル!!
セナっ!! あいたかった」
笑い声と一緒に、腕の力が少し緩む。
顔を上げると、そこにいたのは――
淡い金髪。
二重で、澄んだ翠の瞳。
背は高く、たぶん175センチくらい。
引き締まった体躯の、美少年。
……え。
美味しい。
幼馴染が、こんなイケメンに育ってるなんて。
ありがとう神様!
私へのご褒美ですかね!?
「……」
ラウルが、じっと私を見る。
そうだよね。
あの、ちまこい赤子が。
百年バブってた赤子が。
一気に成人して、再会。
そりゃ、観察したくもなる。
私は、ふっと一歩下がって、
両手を広げた。
そして――
くるり、と一回転。
「どう?」
ふふふ。
見よ。
この、両親の遺伝子が勝ち誇った身体を!
銀髪は肩で揺れ、
ワンピースの裾がふわりと広がる。
ラウルは、一瞬、言葉を失った。
それから――
ぽっと、頬が赤くなる。
「……すごく、綺麗で……ドキドキする」
素直。
非常に、素直。
「そうだろう、そうだろう」
うんうん、と大きく頷く。
褒められて、素直に嬉しい。
ラウルは、照れたまま視線を逸らし、
それから、私に向き直った。
「……俺達の家に、帰ろう」
その言い方が、
あまりにも自然で。
胸の奥が、きゅっと鳴った。
「うん!
一年振りだから、緊張するよね」
実家。
変わらないはずの場所。
でも、私も、ラウルも、
もう“赤子”じゃない。
神殿を出ると、外の空気は少し冷たくて、
懐かしい匂いがした。
並んで歩く。
歩幅は、まだ少し違う。
それでも。
当たり前みたいに、
隣にいる。
――この感じ。
とてもしっくりくる。




