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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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野外訓練キャンプ初日

土砂降りだった。


比喩でもなんでもなく、

本当に、空が壊れたみたいな土砂降り。


セナ「……え?」


ぽつ、ではない。

ざあ、でもない。

どばあああああ、だ。


あ、雷が光った。

一瞬、世界が白くなる。


わぁ!

……きれーい!


――じゃない。


次の瞬間、

雨が肌に刺さった。


痛い。

地味に、めちゃくちゃ痛い。


「冷たっ!」


ローブの上からでも分かる。

叩きつけられる水滴の圧。

風も容赦なく、前から横から後ろから、好き勝手に吹き付けてくる。


そして――


リュックサックが、重い。


ものすごく、重い。


(……うそでしょ……)


背中にずしっとのしかかる重量感。

肩紐が食い込む。

歩くたびに、ぐらっと重心が揺れる。


前世の私、えらい。

キャンプには撥水加工。

これは、ガチで正解だった。


学園のローブに、

前もって変成魔術で撥水処理を施しておいた自分を、

私は今、全力で褒めたい。


セナ「私、天才では……?」


ローブの表面を、雨がつるつると滑り落ちていく。

中まで染み込んでこない。

素晴らしい。

本当に、素晴らしい。


チラ、と周囲を見る。


……。


……あ。


忘れた子、いる。


顔が、死んでいる。


完全に、魂が抜けた顔。


ローブが水を吸って、色が変わっている。

重そう。

寒そう。

なにより――


絶望している。


(……もう泣けてきた……)


そんな中、

満面の笑みで教官が立っていた。


教官「いやぁ!良い天気ですね!」


……どこが?


教官「実に訓練日和だ!」


……どの辺が?


誰も突っ込まない。

突っ込めない。

突っ込む気力も、雨に流された。


教官「では!班分けといこうか!」


雨音に負けない声量。

さすが教官。

喉が強い。


教官「この班はね、欠けない限り卒業まで一緒だ!」


……欠けない。


(死なない限り、ってことだよね?)


一瞬、空気が冷えた。

雨のせいじゃない。


教官「A班!B班!C班!」


次々に名前が呼ばれ、

学生たちがぞろぞろと移動し、整列していく。


「A班!」


呼ばれた。


移動する。


同じ班になった顔ぶれを見る。


A班男子「俺、レック!レック・レス!」


元気が良い。

雨に負けていない。

むしろ楽しそう。


A班女子「私、シアン。シアン・カーネ」


落ち着いた声。

髪をきっちりまとめている。

この人、頼れそう。


A班男子「ファルケ・アリョール」


無口。

目つき鋭め。

リュックの持ち方が慣れてる。


セナ「セナ・リーヴェルです」


名乗った瞬間、

少しだけ、緊張がほどけた。


変成科オンリー。

でも、ひとりじゃない。


仲間がいる。


それだけで、

胸の奥が、少し軽くなった。


……と思った、次の瞬間。


A班男子「痛ッ!目に雨入った!」


A班女子「大丈夫!?……きゃっ!」


足を滑らせた。


A班男子「……あ、やば。忘れ物したかも……」


セナ「……」


セナは、思った。


(……このメンバー、不安しかない……)


いや、違う。

きっと、私も含めて。


野外訓練初日。


ひたすら、

土砂降り豪雨。


足元はぬかるみ、

靴はすぐに泥だらけ。


一歩進むたびに、

「ずぶっ」と嫌な感触が伝わってくる。


行軍。

目的地まで、ただ歩く。


派手な魔術もない。

戦闘もない。


あるのは、

雨。

風。

重い荷物。


そして、

自分の体力の限界。


(……これ、訓練というより……)


セナ「……修行……?」


前を行く教官の背中は、

やけに楽しそうだった。


空は暗く、

雷がまた光る。


わぁ!

……やっぱり、きれい。


そう思わないと、

やってられなかった。


野外訓練キャンプ初日。


こうして、

地獄みたいに元気なスタートを切ったのだった。



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