神殿生活たのしい
神殿生活――
これが、思っていた以上に、楽しい。
まず、頭がいい。
いや、元からではなく、今の状態が異常なのだ。
記憶力というものが、
レベル上限を振り切っている感覚。
神官の話。
講義内容。
板書。
実技の手順。
次々に、するすると頭に入ってくる。
しかも、ただの知識じゃない。
経験値として定着する。
あ、これ前世でやったやつ。
あ、でもこの世界だと、こうなるのか。
前世の記憶と、異世界の常識が、
頭の中で自然に混ざり合っていく。
これが、気持ちいい。
「覚える」というより、
「思い出す」に近い感覚。
これは……楽しい!!
元ベイビーズだった子たちも、
それぞれのペースで成長している。
魔術に目を輝かせる子。
歴史の話に食いつく子。
神学だけは苦手で、毎回寝落ちする子。
興味のあるもの、ないもの。
得意と不得意。
それがはっきり分かれていくのも、面白かった。
同じ赤子スタートなのに、
知識量も、理解速度も、
もうバラバラだ。
私はというと、
前世の下地があるせいか、
どの分野もそこそこ楽しい。
特に生活魔術。
「前世にも、これ欲しかった……!」
汚れが一瞬で落ちる。
水を運ばなくていい。
乾燥も早い。
一方で、不便なところもある。
通信は魔道具頼り。
ネットはない。
検索もできない。
「文明の利器、恋しい……」
でも、それすら新鮮だった。
気が付けば、
季節が一巡りしていた。
神殿の中庭の木々が、
芽吹き、葉を広げ、色づき、
また落ちる。
あっという間の一年。
「明日で、修了です」
神官の言葉に、
教室が少しざわついた。
修了。
教育・課程・学びの一定段階を終えること。
神殿準備クラス、修了。
……早いな。
感慨に浸る間もなく、
荷物をまとめる。
持ち物は少ない。
知識は、山ほど増えた。
「よし」
いざ。
実家に、帰るよ!
ふと、ラウルの顔が浮かぶ。
……元気に育ったかな?
赤子百年時代、
何度も命を救ってきた幼馴染。
今度は、
どんな姿で会うんだろう。
楽しみだな。
胸の奥が、
少しだけ、きゅっとした。




