成人式、赤子のまま入場
これは――神殿だな。
高い天井。
白い石柱が何本も並び、奥へ奥へと続いている。
差し込む光は柔らかく、空気そのものが清められているような、
やたらと厳かな雰囲気。
……場違い感がすごい。
私は今、
赤子用のふかふかした布に包まれ、
成人式なるものに参加している。
今一度、言わせてほしい。
我――
いや、違う。
我ら、赤子ぞ???
神官らしき人が、前方で声を張り上げている。
「良き日に、成人式が執り行われることを――」
うんたらかんたら。
祝福だの、導きだの、
とにかく長い。
赤子に理解を求める気はないらしい。
潔い。
ちら、と視線を巡らせる。
同世代と思しき赤子たちは、
親御さんの腕の中で、見事に昼寝中だった。
口を開けて寝ている子。
指をしゃぶっている子。
よだれを垂らしている子。
……平和か。
この中で、意識がはっきりしているのは、
たぶん、私だけだ。
成人式って、なに。
疑問が解消される前に、
神官のながーい話が、ようやく終わった。
「では――」
その一言で、空気が変わる。
赤子たちが、順番に神官へと託されていく。
流れ作業のように、丁寧に、しかし迷いなく。
ふむ?
ほぅ。
女の子は、こっち。
男の子は、あっち。
なるほど、男女別か。
……って。
「ラウルよ、またなっ!」
心の中で手を振る。
ラウルは、きょとんとした顔のまま、
男の子側へ運ばれていった。
そして私は、
女神官の腕に抱えられ――
身ぐるみ、剥がされた。
えっ。
ちょっと待って。
説明なし!?
布が取られ、
腕や足にひやりとした空気が触れる。
そして、視界が開けた。
「わ……」
思わず、声が出る。
神殿の奥。
そこには、泉があった。
透明で、澄んでいて、
底から淡く光を放つ水面。
神殿の中に、こんなものがあるなんて。
女神官が、
キラキラ輝く腕輪のようなものを、私の腕に装着する。
冷たい金属。
なのに、不思議と嫌な感じはしない。
そのまま、
両手を胸の前で組まれ――
祈られた。
なにを祈っているのかは、わからない。
けれど、その声は静かで、
なぜか、背筋が伸びる。
次の瞬間。
泉へ――
ぽーい!!
…………は?
がぼ。
ごぼごぼ。
がばっ。
えっ、待って。
溺死!?
短い人生だった……
百年赤子……。
……いや。
めちゃくちゃ、熱い。
これ、温泉じゃん!!!
ひぃいいいいいい!!!!!!
思考より先に、身体が反応する。
熱い!
熱い!
赤子に優しくない!!
じたばたと手足を動かした、その瞬間。
腕輪が、ぐっと引っ張られた。
なに!?
なにが起きた!?
そのまま――
一本釣りみたいに、陸へ引き上げられる。
「げほっ、げほっ!」
水を吐き出しながら、息を整える。
……あれ?
視界が、ぼやけている。
神殿の柱が、歪む。
天井が、遠い。
身体が、妙に重い。
そして――
さっきまで見えていた女神官の顔が、
やけに低い位置にある。
……ん?




