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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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懐かれ過ぎてる

今日も今日とて、変成科は地味だった。


派手な爆発もない。

剣がきらめくこともない。

詠唱で空気が震えることも、基本的にはない。


――けれど。


いないと、詰む。


それを、全員が理解している。


四科合同訓練所。

広大な演習地の中央では、今日も盛大な地獄絵図が展開されていた。


騎士科が前線で踏ん張り、

魔術科が後方で術式を組み、

戦闘魔術科が容赦なく火力を叩き込み、

治癒魔術科が縫うように駆け回る。


そして、その全部を――

支えているのが、変成科だった。


「やばいよー!!」


悲鳴に近い声が飛ぶ。


「任せて!」


即座に返る声。


「いける!」


短く、確信に満ちた判断。


私は地面に手をつき、魔術式を展開する。


「唸れ! 遺伝子!!」


地面が応える。

構造が変わる。

崩れかけた足場が補強され、

盾の角度が最適化され、

一瞬遅れていた連携が、ぴたりと噛み合う。


次の瞬間。


騎士科が派手に吹っ飛び、

治癒魔術科が「はいはいちょっと失礼ねー」と言わんばかりに滑り込み、

容赦ない治癒ビンタが響く。


「回避しなさいって言ったでしょ!!」


魔術科の詠唱が重なり、

戦闘魔術科の一撃が空気を裂く。


……ほんと、威力がバカみたいだ。


遠目で見ていてもわかる。

あれは、同じ学年の火力じゃない。


「……あれ、毎回思うけど」


隣でA班の誰かがぽつりと言った。


「戦闘魔術科、やばくない?」


「うん。やばい」


即答。


私は軽く肩を回して、息を整える。


休憩の合図が鳴り、

それぞれが腰を下ろし始めた、その時だった。


訓練所の空気が、ざわ、と変わる。


視線が集まる。

囁きが広がる。


戦闘魔術科首席が、こちらに向かって歩いてきていた。


淡い金の髪。

澄んだ翠の瞳。

鍛え抜かれた体躯。


歩くだけで、存在感が違う。


色めき立つ女子たち。

憧れの視線を送る男子たち。


――そして。


彼は、一切迷わず、一直線に来た。


向かう先は。


銀色の髪を揺らしながら、水筒に口をつけていた私。


次の瞬間。


ぎゅっ、と。


背後から、強く抱き締められた。


「わぁ!?」


思わず声が出る。


「びっくりした!」


首筋に、顔を埋められる。


深呼吸。

一回。

二回。

三回。


「……生き返る」


低く、心底安堵した声。


「まって! 今ここ訓練所!!」


言ったけれど、腕は緩まない。


むしろ、力が増す。


「ちょ、腕! く、くるしっ……内臓飛び出る!」


さすがに気づいたのか、少しだけ力が緩んだ。


振り向いた、その瞬間。


額に、

頬に、

そして、唇に。


軽く、迷いのない口付けが落ちた。


「~~~~~っ!」


言葉にならない声が喉から漏れる。


「俺には、セナ以外、見えてない」


真顔。

一切の照れなし。


そのまま、頬擦り。


……完全に、甘えきっている。


周囲から、ため息交じりの声が上がる。


「はー……また始まった」


「はいはい、通常運転」


「見慣れた光景ですね」


誰も止めない。

誰も驚かない。


もはや、これが日常。


私は、深く息を吐いた。


「……ラウル」


名前を呼ぶと、少しだけ力が緩む。


「生きてる?」


「生きてる」


即答。


「ちゃんと?」


「ちゃんと」


よし。


確認できたので、良しとする。


頭を軽く叩いて、離れるよう促す。


「休憩終わるから」


「……もうちょっと」


「だめ」


しぶしぶ、腕が離れる。


その瞬間、周囲の空気が元に戻る。


「族長ーー!!」


「オカーーーン!!」


呼ばれて、振り返る。


ああ、そうだった。


私は今、

族長で、

オカンで、

変成科の要だ。


懐かれ過ぎてるのは……まあ、

今さら、か。


地味だけど。

目立たないけど。


それでも。


私たちは、今日も全力で、

“いないと詰む”役割を、こなしている。


――そして、その中心で。


彼は、今日も私から離れない。


これもまた、

平和な日常の一部だった。



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