合同野外訓練初日
――ですよねー。
空を見上げた瞬間、理解した。
これはもう、そういう日だ。
雷が、ばちばちに光っている。
雲は低く、重く、遠慮なく迫ってくる。
次の瞬間。
ざああああああああ!!
容赦のない豪雨。
横殴り。
叩きつけ。
もはや攻撃。
「今年もかぁ……」
誰かが呟いたのが、雨音に消えた。
地味に、痛い。
本当に、地味に。
でも。
今年の変成科は、違う。
「撥水、問題なし!」
「視界良好!」
「足元、いける!」
そう。
撥水加工は完璧だ。
去年と同じ轍は、踏まない。
外套も、ブーツも、装備も。
すべて、変成科による事前加工済み。
雨は弾く。
泥は滑らない。
冷えは遮断。
「変成科、優秀……」
「自分たちで言うのもなんだけど」
騎士科や治癒魔術科が、半ば本気で感心しているのがわかる。
――支える準備は、整っている。
拠点に到着した瞬間。
「展開、開始!」
号令と同時に、変成科が一斉に動いた。
迷いがない。
相談も、確認も、最小限。
雨を避ける導線。
水を流す溝。
地盤の安定化。
それぞれが、役割を理解して動いている。
騎士科が武器を下ろす前に、
治癒魔術科が陣を張る前に。
拠点の骨格が、形になっていく。
「早っ……」
「去年の倍速じゃない?」
魔術科の誰かが、呆然と呟いた。
それもそのはずだ。
これは、
ソロ訓練で叩き上げられ、
合同訓練で叩き潰され、
図書館で叩き直された変成科だ。
支えるために。
生き残るために。
持てるすべてを、全力で使う。
初日だから、様子見?
――そんな甘さ、もうない。
「地盤、もう一段強化する!」
「了解! 排水ライン延長!」
「屋根、先に張る!」
声が飛ぶ。
魔術が走る。
雨の中で、拠点が完成していく。
雷が落ちるたび、
光の中に、動く人影。
その中心で、私は拳を握った。
「……よし」
そして、叫ぶ。
「唸れ! 遺伝子!!!」
気合いは、必要だ。
士気も、大事だ。
次の瞬間。
「族長ー!!!!!」
――やめて。
本当に、その呼び名やめてほしい。
思わず顔を覆いながらも、
口元が、勝手に笑ってしまう。
でも。
こうして、
すべての科を支える位置に、
自然と変成科が立っている。
それは、誇らしかった。
雨は、まだ止まない。
雷も、遠慮なく光っている。
でも。
今年の野外訓練は、
去年とは、まったく違う。
初日から、
私たちは――ぶっ飛ばしていく。




