二年生
新学期は、驚くほどあっという間に始まった。
門をくぐった瞬間、聞こえてくる声が一気に増える。
冬季休暇の間に溜め込んだ話題が、あちこちで弾けていた。
「久しぶりー!!」
「その外套、似合ってる!」
「それ、お土産?」
紙袋が行き交い、甘い匂いと異国の香辛料の匂いが混じる。
学園が、ちゃんと“日常”に戻ってきた感じがした。
「これ、雪国の保存菓子」
「こっちは港町の干し果物!」
笑いながら近況報告をしていると、胸の奥に、少しだけ温かいものが広がる。
帰る場所があって、戻ってくる場所もある。
それだけで、十分だ。
「二年生かぁ」
ぽつりと呟くと、隣で肩が揺れた。
「早すぎるよな」
いつもの調子。
軽い声。
でも、どこか落ち着きが増している。
「野外訓練、去年は濃すぎたからね」
「族長からオカンになるとは思わなかった」
「やめて」
即座に返すと、向こうで笑い声が上がった。
明るい声。
低い相槌。
無駄のない一言。
振り向けば、見慣れた顔が揃っている。
――みんな、いる。
その当たり前が、少しだけ嬉しい。
教室に入ると、空気が変わった。
ざわついていた声が、自然と静まっていく。
教壇に立った先生が、腕を組んでこちらを見回す。
「はい! 明けましておめでとう!」
軽い調子だけど、目は真剣だった。
「今年から、二年生だな」
「そして、ここからが本番だ」
一拍置いて、続く言葉。
「今年の合同訓練は――」
「騎士科、治癒魔術科、魔術科と一緒だ」
教室が、ざわっと揺れた。
「……マジで?」
「え、戦闘魔術科も?」
先生は、にやりと笑う。
「下手したら、巻き込まれて死滅するからな」
「自分の立ち位置、役割、よく考えて動け」
……言い方。
でも、冗談じゃないのは、全員が分かっている。
「じゃあ、覚悟はいいな?」
返事を待たずに、手を叩く。
「では、授業をはじめる!」
空気が、引き締まった。
視線を前に戻す。
背筋を伸ばす。
ふと、横を見る。
変わらない顔ぶれ。
それぞれ、少しずつ成長した表情。
一年前とは違う。
でも、繋がりはそのままだ。
「……頑張らなきゃね」
小さく言うと、頷きが返ってくる。
二年生。
新しい訓練。
新しい危険。
新しい役割。
それでも。
私たちは、もう一度、前に進む。
同じ教室で、
同じ時間を重ねながら。
――気持ち新たに。




