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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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我が家の強化

朝、目を開けた瞬間に思った。


――潰れてたら、洒落にならない。


雪だ。

一晩で積もる量じゃない。

屋根が軋む音が、ちゃんと聞こえるレベル。


私は布団から跳ね起きて、窓を開けた。


白。


とにかく白。


庭も、塀も、昨日まで見えていた新居の屋根も、全部が雪に沈んでいる。


「……よし」


リセットは、しない。

絶対に。


壊して作り直すなんて、論外だ。

ここは“帰る場所”で、積み重ねた時間がある。


だからやるのは、ひとつ。


強化。


朝食の席でその話をすると、父が湯気の立つカップを置きながら言った。


「そういえばな。学園の魔術科の先生から聞いたぞ」

「お前の野外訓練の話」


……嫌な予感。


「“リーヴェルの血は相変わらず無茶をする”ってな」


母が、くすっと笑った。


「懐かしいわねぇ。あの頃」


その瞬間。


始まった。


武・勇・伝。


「いや、あれは不可抗力だった」

「不可抗力で爆破結界張る人いる?」

「張ったんじゃない、暴発したんだ」

「それを不良って言うのよエリオス」


……あっ。


察した。


これ、武勇伝じゃない。

完全に、ヤンチャ期という名の黒歴史だ。


「……なるほど」


私が静かに頷くと、母が肩をすくめた。


「セナ、あんたも似てるわよ」

「方向性が“安全第一”なだけで」


遺伝子、仕事しすぎである。


朝食を終えると、私はすぐに外へ出た。


まずは、実家本体。


基礎の強化。

柱の耐圧調整。

屋根裏の雪荷重分散。


一つひとつ、魔術式を重ねていく。


壊れないための魔術。

派手さはないけど、確実に命を守るやつ。


昼前には、新居の方へ。


赤子部屋は最優先。

温度管理、湿度、換気、落雪対策。


壁に手を当てて、深く息を吸う。


「……唸れ」


指先に魔力が集まる。


「遺伝子!!!」


魔術式が走る。

構造が、応える。

家が“強くなる”感覚が、はっきりと伝わってくる。


午後は保存食。


乾燥肉。

穀物。

非常時用の高栄養スープ。


食料倉庫を地下に拡張して、雪で閉じ込められても数ヶ月は余裕の構成。


さらに、その奥。


――地下格納庫。


「……いるよね?」

「いるわね」


両親が当然のように頷く。


災害時用の資材。

修復用の素材。

予備の魔力結晶。


変成魔術で空間を安定させながら、必要なものを整えていく。


途中で、ふと我に返った。


……これ、もう。


家というより、要塞では?


でもいい。


生きていれば、勝ちだ。


夕方、すべてを終えて、息を吐く。


指先が少し痺れている。

でも、嫌じゃない。


むしろ、満足感がすごい。


「……変成科って」


ぽつりと呟く。


「神だと思う」


横で聞いていた母が、笑った。


「自覚した?」

「うん」


胸を張る。


「私、良い科選んだ」


雪に覆われた我が家は、もう揺るがない。


壊れない。

潰れない。

守れる。


私は、満足して家を見上げた。


「よし」


明日は、何を強化しようか。


そんなことを考えながら、

私はまた、魔術式を描く準備を始めた。



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