聖誕祭のお知らせ
「来週は、通常授業を一部短縮する。
三日後に聖誕祭、その後は冬季休暇に入るからな」
教壇の前で、先生が淡々と告げた。
ざわり、と教室の空気が揺れる。
休み、という言葉に反応する声。
予定を確認し合う囁き。
楽しげな笑い。
――あっという間だ。
学園に戻ってからの日々は、
忙しさに押されるように過ぎ去っていった。
秋季野外訓練。
ぎこちない距離。
戻らないものと、戻りかけたもの。
気づけば、もう聖誕祭。
学園で迎える、初めての聖誕祭が、三日後に迫っていた。
廊下に出ると、自然と話題はそればかりになる。
飾り付けの噂。
夜の催し。
誰と過ごすか、という話。
その流れで、隣を歩いていたレックが、少しだけ声を落とした。
「……聖誕祭、さ」
足を止めずに、前を向いたまま。
「一緒に過ごさないか?」
胸の奥が、きゅっと縮む。
――それは。
ただの友達、じゃない。
A班の仲間、でもない。
はっきりとした、男女の意味。
わかっている。
わかっているから、息が詰まる。
今の私は、
その問いに、ちゃんと答えなきゃいけない。
終わらせるなら、終わらせる。
続けるなら、覚悟を持つ。
……なのに。
言葉が、出てこない。
「……考えとくね」
自分でも、驚くほど曖昧な声だった。
レックは、一瞬だけこちらを見て、
それ以上は何も言わなかった。
優しい沈黙が、余計に刺さる。
食堂に入ると、いつもの喧騒。
その中で、無意識に視線が動く。
――いた。
淡い金色の髪。
澄んだ翠の瞳。
相変わらず、首位独走。
戦闘魔術科の中心。
周囲には、女の子たち。
笑顔で話しかけ、距離を詰め、必死にアピールしている。
……当然だ。
強くて、整っていて、近寄りがたいほど静かな存在感。
その輪の少し外側。
見覚えのある茶色の髪。
リーネ。
彼女も、ラウルを見つめていた。
距離を置いても、
想いが消えるわけじゃない。
本気で好きになった相手を、
簡単に諦められないことくらい――わかる。
私も、今、同じだから。
視線を戻そうとした、その瞬間。
――ぐらり。
近くを歩いていた女生徒が、足を滑らせた。
「あっ」
短い声。
次の瞬間、
ラウルの腕が伸びて、
その子の身体を、自然に支えた。
ただの事故。
反射的な動き。
それだけのはずなのに。
――見てしまった。
私以外を、
腕の中に抱きとめる、その瞬間を。
胸の奥が、ずきりと痛む。
何度も。
何度も、同じ場面を見てきたはずなのに。
もう、誤魔化せない。
逃げられない。
私は――
ラウルを、
誰にも、奪われたくない。
それが恋だと、
はっきり自覚してしまった瞬間だった。




