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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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野外訓練四日目

四日目。


気が付けば、もう四日目だった。


朝靄の残る森の中、焚き火の煙が細く立ち上る。

寝不足のはずなのに、身体は意外と動く。


――あっという間だった。


初日は地獄。

二日目は混乱。

三日目は必死。


そして、四日目。


「……なんか、私たち、ちゃんとやれてない?」


ぽつりと零した誰かの言葉に、

周囲が一瞬だけ静かになる。


否定は、出なかった。


変成科の仕事は、派手じゃない。

前に出ることも少ない。

剣も振らないし、魔物を直接屠るわけでもない。


でも。


地形を整え、

視界を遮り、

足場を確保し、

退路を作る。


それを、当たり前のように回し続ける。


気付けば、

「変成科がいないと詰む」

そんな空気が、現場に出来上がっていた。


「セナ、次どうする?」


「ここ、もう少し硬化できる?」


「霧、薄くなってきてる!」


飛んでくる声。

迷いなく返す指示。


あれだけ混乱していた初日が、嘘みたいだ。


作業の合間、

少し離れた場所から視線を感じた。


顔を上げると、

上級生の魔術科の教官が、こちらを見ていた。


年季の入ったローブ。

穏やかな目。


「……リーヴェル家?」


声をかけられて、思わず瞬きする。


「はい?」


近づいてきた教官は、

私の肩に、ぽん、と軽く手を置いた。


「ああ、やっぱり」

「あの家の子か」


「……?」


「君の両親、よく知ってるよ」

「昔、この辺りで無茶やってた」


え。

無茶。


「いやあ、あの夫妻はなぁ……」


懐かしそうに笑う顔に、

嫌な予感しかしない。


「理論より先に現場を作る」

「危険だからやめろと言っても、先に完成させる」


……あれ?

デジャヴ。


「血、濃いな」


ぽつりと、結論。


「遺伝子、強いわ」


否定できない。


「今の変成科、よくやってる」

「特に君たちA班は、判断が早い」


肩を叩かれて、教官はそのまま去っていった。


残された私。


「……私の遺伝子、そんなに強かったんだな」


呟いたら、

近くにいたシアンが噴き出した。


「今さら!?」


「気付いてなかったの!?」


レックも笑う。


「むしろ、薄い要素どこだよ」


ひどい。


でも、悪い気はしなかった。


認められた。

評価された。


それも、ちゃんと現場で。


――だからといって。


休めるわけがない。


「セナ、次!」

「資材足りない!」

「魔力配分、調整して!」


はいはいはい。


気分はもう、

完全にオカンだった。


「はい、これ持って!」

「水飲んだ!?」

「無理するなって言ったでしょ!」


自分でも驚くくらい、

自然に世話を焼いている。


「……なあ」


レックが、少し苦笑いで言う。


「セナさ」

「完全に、飯食わせる側だよな」


「仕方ないでしょ」


焚き火の横で、鍋をかき混ぜながら答える。


「食べないと、動けない」

「動けないと、死ぬ」


実にシンプル。


鍋から立ち上る、いい匂い。

干し肉と野菜の煮込み。


「さぁ!」

「美味しいご飯を食べて!」


「「「はーい!!」」」


返事が、元気良すぎる。


……なんでだろう。


数日前まで、

こんな余裕、なかったはずなのに。


怖かった。

必死だった。

生き延びるだけで精一杯だった。


でも今は。


同じ状況なのに、

胸の奥に、変な手応えがある。


――私たち、ちゃんと役に立ってる。


変成科は後ろ。

支える科。


でも、

支えがなければ、前は崩れる。


それを、

自分たち自身が理解できた四日目だった。


「よし」

「食べたら、次いくよ」


誰に言うでもなく、宣言する。


疲れてる。

間違いなく、限界も近い。


それでも。


「頑張れ、お前たち」


心の中で、そう呟いた。


今日も。

明日も。


この現場を、無事に終わらせるために。


気分は完全にオカン。


でも、それでいい。


だって――

生きて帰らせるのが、私たちの仕事だから。


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