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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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赤子部屋完成

あれから、私は毎日がむしゃらに動いた。


朝起きて、図面を引いて、素材を選んで、魔術式を組み直す。

昼は両親に止められるまで作業して、夜は修正点を洗い出す。


ラウルにも、当然のように手伝ってもらった。


黙って重たい資材を運び、指示を出せば即座に動く。

余計なことは言わないけれど、必要な時は必ず横にいる。


「唸れ! 遺伝子!!!」


気合いは大事だ。

理論も構造も完璧でも、最後に必要なのは勢いである。


その結果。


――我が家の敷地内に、新居が建ってしまった。


……うん?


誰か、思っただろうか。

実家を改造するのでは、と。


甘い。


リセットの残酷さを知る身としては、

壊すという選択肢は最初から存在しない。


思い出が染みついた家に、

「便利だから」という理由で手を入れるなど、もってのほかだ。


だから答えはひとつ。


新しく建てる。


完成した新居は、平屋。

段差ゼロの、完全バリアフリー設計。


四季対応の温度調整。

雨風を防ぐ外壁構造。

湿気を逃がす床下設計と、清掃しやすい素材選び。


赤子部屋は特に力を入れた。


壁と床には弾力を持たせ、

家具はすべて転倒防止。

角という角を丸め、

「万が一」に備えた逃げ道まで用意した。


前世の知識。

変成科で培った理論。

そして――ラウルが何度も“死にかけた”経験。


すべてを詰め込んだ、

危機回避特化型・赤子育成拠点の完成である。


両親は、新居を一周して、顔を見合わせた。


「……さすがセナ」

「私たちの子は、天才だな」


胸を張る私。


「どーやー!!!」


完全勝利である。


その横で。


「……ぷはっ」


堪えきれなかったように、ラウルが吹き出した。

肩を揺らして笑うその姿に、私もつられて笑ってしまう。


夏季休暇で帰宅して、

新居づくりに没頭していると――不思議なことが起きた。


悩み事が、後回しになる。


考えなくてはいけないこと。

向き合わなければならない違和感。


全部、作業の向こうに追いやられていく。


相変わらず、抱き枕は復活していて。

夜になると、当然のようにラウルの腕が回ってくる。


最近は、その腕が強くて。

冗談抜きで、潰されそうだ。


でも。


目が合えば、笑い合える。

一緒に笑って、同じものを見て。


――ああ、私たちって、こうだったな。


少し前まで当たり前だった距離が、

静かに、戻ってきている気がした。


その時。


「すみませーん!」


敷地の外から、聞き慣れない声が響いた。


振り向いた瞬間、

ラウルの空気が、ぴたりと変わる。


玄関の向こう。


そこに立っていたのは――

ラウルの彼女だった。


……ああ。


平穏って、

こうやって終わるものなのかもしれない。


私は、まだ知らなかった。


この来訪が、

“戻りかけた私たち”を、

もう一度、大きく揺らすことになるなんて。



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