表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/193

久しぶりの実家

玄関の扉を開けた瞬間、

懐かしい匂いが、胸いっぱいに広がった。


「ただいまー!!」


声が、自然と弾む。


間髪入れずに返ってきた声。


「おかえりなさい!!」


重なる足音。

変わらない家。

変わらない温度。


――帰ってきた。


隣で、少しだけ姿勢を正した気配。


「お世話になります」


丁寧すぎる声に、両親が顔を見合わせて、くすっと笑う。


「そこは、ただいまでしょう? ラウル」


母の声は柔らかく、当然のようで。


「……ただいまです」


一拍遅れてそう答えた幼馴染の横顔を見て、

胸の奥が、じんわりと温かくなる。


迎え入れられる、ということ。

それがどれほど救いになるのかを、私は知っている。


居間に通されて、腰を下ろした瞬間、

一気に力が抜けた。


「ああ……」


思わず、息が漏れる。


すごく、長く離れていた気がする。

学園。

野外訓練。

変成科村。

濃すぎた時間。


それでも、ここは、何も変わっていない。


懐かしさが、じわじわと込み上げてきて、

喉の奥が少しだけ熱くなった。


そんな空気を切り替えるように、

母が、ぱんっと手を叩いた。


「実はねー! 報告があります!」


その声に、父が軽く咳払いをする。


嫌な予感と、妙な期待が、同時に胸をよぎる。


「……なに?」


母は、にこにこしながら、胸に手を当てた。


「あなたに、きょうだいができるわよ!」


一瞬、世界が止まった。


「えーーーー!!!!!」


声が裏返る。


仲が良いのは知っていた。

知っていたけど。


「……いや、仲が良いとは思ってたけど……」


両親は、顔を見合わせて、当たり前みたいに笑っている。


「だって、あなたたちが家を出たでしょ?」


「静かになったからな」


さらっと言う父に、思わず目を見開く。


「嬉しい!! いつ産まれるのかな!!」


その瞬間。


――はっ。


頭の中で、何かが弾けた。


赤子。

百年。

妊娠期間。


前世の知識が、勢いよく引っ張り出される。


「……今、何か月?」


喉が、乾く。


母は指を折って、軽く考える仕草。


「今、三か月だから……そうねぇ……」


ごくり。


「十か月先かしらね」


……前世と同じ。


ぞわっと、背中に冷たいものが走った。


ちょっと待って。


この両親のもとで、

ラウルが、何度“不運死”しかけたと思ってるの!?


階段から転げ落ちかけた回数。

棚が倒れてきた事件。

意味不明な転倒。


全部、鮮明に思い出せる。


「……危ない」


ぽつりと呟いたつもりが、

次の瞬間には、立ち上がっていた。


「私のきょうだいが危ない!!」


拳を、ぎゅっと握る。


「今こそ! 変成科の力の見せ所じゃない!?」


両親がきょとんとする中、

私は、びしっと宣言した。


「安心! 安全!

赤子専用の部屋を、変成魔術で作り上げてみせる!!」


勢いだけは、完璧だった。


一瞬の沈黙。


その横で。


くす、と小さな音。


視線を向けると、

幼馴染が、少しだけ目を細めて笑っていた。


――ああ。


変わらない。


無鉄砲で、先走って、

大事なものを守ると決めたら、一直線。


その姿を見て、

ラウルは、静かに思った。


やっぱり、セナは――

何一つ、変わっていない。


その笑みは、どこか、ほっとしたようで。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ