戦闘魔術科1位決定戦
勝った。
というより、終わった。
砂塵が落ちる音の中で、相手は膝をついていた。
息は荒く、魔力は底をついている。
こちらは――まだ、余っていた。
「……終わりだ」
自分の声が、ひどく平坦に聞こえた。
教官席の方から、低い声が落ちてくる。
「化け物だな」
褒め言葉だと理解するまで、一拍かかった。
周囲がざわつく。
一年生の首位。
独走。
決定。
それでも胸は、何も動かなかった。
拍手の音も、歓声も、膜越しだ。
勝った実感がない。
ただ、身体が覚えている動きをなぞっただけ。
――帰り道、食堂。
列に並ぶ気はなく、壁際を歩いた。
視線だけで、全体を把握する。
……いた。
銀色が、視界の端を掠める。
ほんの一瞬。
彼女は誰かと話していて、こちらを見てはいない。
それでいい。
それだけで、足は止まらなかった。
首位になったと知ってからだ。
女が、寄ってくるようになった。
声をかけられる。
距離を詰められる。
触れようとされる。
断るのも、面倒になった。
――声が、似ている子を選んだ。
それだけだ。
夜。
部屋は静かで、灯りは落としてある。
背中に重みがあった。
腕を回され、吐息が近い。
名前を呼ばれた気がして、目を閉じる。
違う。
声の高さは、似ている。
触れ方も、たぶん、悪くない。
でも――
(……違う)
身体は反応する。
それだけだ。
彼女には、しなかった先の行為も、淡々と進めた。
思考は、別の場所にあった。
目を閉じて、探す。
銀色。
香り。
あの、何も考えていない声。
名前を呼ばれたくて、
呼ばせたくて。
……終わった。
余韻は、ない。
残ったのは、空白だけだった。
腕の中の体温が、邪魔だ。
静かにほどく。
背中を向けて、距離を取る。
「……帰っていい」
驚いた声がしたが、振り返らない。
違う。
これじゃなかった。
こんなことで、埋まるはずがない。
セナは、ここにいない。
それだけが、事実だった。
首位になっても、
強くなっても、
誰を抱いても。
満たされる場所は、ひとつしかない。
それを理解してしまった自分を、
まだ、止める気はなかった。
ラウル・アインハルト




