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不運死する幼馴染を救ったら懐かれた  作者: ChaCha


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ドキドキして眠れない

ベッドの中は、いつも通りだった。


柔らかいシーツ。

馴染んだ枕。

背中から回される、慣れた腕。


それなのに――

心臓だけが、やけに騒がしい。


「……初デート……」


ぽつりと零れた声は、

暗がりに吸い込まれて消えた。


まさか、自分が。

この年になって。

こんな言葉を、頭の中で反芻する日が来るなんて。


自然に、始まってしまった。


あまりにも真っ直ぐで。

あまりにも迷いがなくて。

積み上げてきた時間と、信頼と、安心感の上に、

気づいたら――“それ”が置かれていた。


お試し、って言葉を使ったのは、

たぶん私の防御本能だ。


正直に言えば、

枯れていた自覚は、ある。


前世を含めて、

百年単位で生きてきて。

恋だの、愛だの、

一通りの熱を、もう知ってしまったあと。


思考回路は、ほぼおばあちゃん。


刺激よりも安定。

ときめきよりも日常。

そんな風に、自分を納得させてきた。


――それが。


恋愛が、空から急に降ってきた。


予兆もなく。

準備もなく。

避ける暇すらなく。


「……どうしよう……」


内心で、ひとり慌てる。


きゃー、とか。

そんな声、久しぶりすぎて、

どこから出せばいいのかわからない。


もう忘れてた感覚だ。

胸の奥が、ふわっと浮く感じ。

期待と不安が、同時にやってくる、この感じ。


――ぎゅっ。


突然、腕に力がこもった。


背中に、確かな圧が伝わる。


「あ……」


無意識に、息を止める。


……うるさかったかな。

独り言、聞こえた?


私は、抱き枕。

そう、抱き枕係。


いつも通り。

役割は変わっていない。


だから、変に意識する必要はない。


……はずなのに。


背中から伝わる体温が、

今日はやけに、はっきりしている。


呼吸のリズム。

胸板の硬さ。

腕の重み。


あったかい。


それが、じわじわと染みてきて――

さっきまで騒がしかった心臓が、

少しずつ、落ち着いていく。


「……」


何も言わずに、

ただ、抱きしめられているだけ。


それが、どれだけ特別なことか。

今は、考えない。


考えたら、

たぶん、眠れなくなる。


瞼が、重くなる。


思考が、ほどけていく。


明日のこと。

初デートのこと。

どう振る舞えばいいか、とか。

どんな服がいいか、とか。


全部、

朝の自分に丸投げだ。


今は――


この腕の中が、あったかくて。

安心で。


「……おやすみ……」


声に出したかどうかも、わからないまま。


私は、そのまま、

静かに眠りに落ちていった。


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