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妄想で作り上げていた完璧な脳内彼女が転校してきたので妄想通りにアプローチを仕掛けて行く事にする。


「脳内彼女」この言葉を聞いた事がある人は少なくないのではなかろうか。

 まぁ簡単に言えば「頭の中にしか存在しない理想の彼女」だな。


 誰でも一度は寝る前にそんな想像――彼女や彼氏の居ない俺に似たヤツらならした事があるだろう。そして、これを理解出来るなら必ず次の文章に頷くだろうな。


「あぁ、これが現実だったら良いのに……」


 一種の現実逃避なんだろう、きっと。だがあまりにも完璧な脳内彼女とそれを生み出してしまう己の想像力に、逃げたくもなる物だ。

 

 ――とまぁ、このくらいで俺がいかにモテず、そして学生時代の青春を謳歌していないという事が十分に伝わっただろうから、早速始めていこう。

 

 今から綴るのはそんな俺、杉崎 海斗(すぎさき かいと)の脳内彼女が我が学園の同クラスに転校して来た――そしてその出来事により俺の人生がどれだけ変化したのか、これを簡単にまとめた物語だ。



 4月26日。それは電撃が俺に落ちる日であった。高校二年生――高校という厨房の頃は「恋愛し放題フロンティア」だと思っていた場所での生活も慣れてきていた時――いきなりガラリと教室の扉が開いた。


「転校生を紹介する。」


 担任の口から何度アニメで聞いたのか分からないセリフが飛び出した。


瀬戸川 美里(せとがわ みさと)です。是非仲良くして下さい。」


 女の子らしい丸い文字で黒板に名前が書かれる。そうして転校してきたみさとは冒頭で話した通り、俺がこのくーだらない学生時代に色を付ける為授業中や睡眠前の時間を利用して作り上げた理想の彼女と瓜二つだったのだ。


 まず髪型。俺はロングが好きである。髪色は黒。理由を聞くか?黒こそ清楚だろ!!異論は認めん!!

 そしてスカートはミニ!超ミニ!清楚なのに超ミニ!!(俺歓喜)ラストにデニール強めのタイツだ!!――と、まぁ以上が俺の完璧無敵最強の(脳内)彼女な訳だが。


 これが転校してきた訳だな。

 もちろん俺やばいよ。当たり前だよな。というか、正直周りのクラスメイトたちも彼女があまりにも完璧過ぎて逆に近寄り難いって感じだった。

 あるじゃん?高嶺の花ってやつだよ。


「席は――杉崎の隣で良いか?あそこだ。」

「あ、はい。分かりました。」

「……ッ!?!?」


 はい、そして来ました本日のMVP「担任」

 俺指さされるの嫌いだったけど、担任が座る席を告げる時に目印として俺を指さした時だけは嬉しくてたまんなかったぜ。


 まーそうして俺の席の隣が我が脳内彼女(に瓜二つ)になった訳だな。


 ここで俺、思っちまったんだ、(攻めないと)もったいねぇって。

 だってよ?これ以上は無いってくらいに考えに考え抜いた正に理想の彼女が真横に座ってるんだぜ?これを攻めなくていつ攻めるってんだ!!


 だが、そこで同時にある問題発生。

(あ、俺恋愛とかした事ないわ)


 そう、俺は脳内とゲームを除いて恋愛という物を経験した事が無かったのだ。

 恋はある、だがそれもアタック出来ずにそのまま自然消滅的なあれだよ。


 だから、アプローチしたくても、やり方が分からん……

 でも、スマホで調べても「いや、それは恋愛経験者だから出来る技なんだよ」みたいな、一般人がモンスターを倒すにはの質問に対して「か〇はめ波を放ちましょう」並の無茶言ってくるじゃん?だからその方法は諦めるとして……


 (はっ!!そうだ!!)


 と、ここで閃きました海斗選手。

 そう、じゃあもう脳内でイチャつく時に使用していたセリフや行動をまんまやったればええんちゃいますのってな。


 いや、我ながら天才じゃねぇか?だってよ、今真横で勉強している彼女と瓜二つの脳内彼女はそれで俺にメロメロになって脳内で付き合えたんだから!!


 さぁ、ここからが始まりだぜみんな……!!こうして思い立った俺がどうなったのか、見届けてくれ……!



 まず、ひとつ目。これは次の日から直ぐにし始めた事だ。


「おはよう美里、今日も相変わらず素敵な瞳だな」


 朝一番に登校していた美里。彼女以外誰もいない教室で俺はそう言った。

 どう?良くないこのセリフ!!


 俺、頭の中ではいつもこのセリフから始めるのが日課だったんだよな〜


「あ、あはは……ありがとう、」


 はい非常に喜ばれました(白目)

 とまぁ……ここで俺は気付く。やはり相手の回答までもが脳内通りでは無いと。


 いや、分かってはいたんだがな。それでも正直、この時点で「キツイかも」って思ったぜ。

 ちなみに、さっき言った恋愛経験無しという情報からも十分に分かると思うが俺は特段イケメンだと言う訳でもなければ声が言い訳でもなく身長が高い訳でもない。


 普通を極めた様な人間だ。だから、俺の脳内みたいに思い通りに行かない時点で彼女の様な完璧な美少女と付き合える事自体が天文学に出てきそうな確率になってくる。


 でも、だからって引けなかった。もうこのセリフを吐いた時点で始まっているのだ。後戻りなど出来るはずが無い。それなら見てみようじゃないか、これまで脳内で培ってきたスキルがどれだけ通用するのかを。


 それからの日々は俺の中で最も濃い物となった。


「俺の隣、空いてるぜ?」


 昼休み、ご飯を食べる時は必ずこう言い彼女と共に食べる。


「夕日って綺麗だよな、あ、でも美里の方が綺麗だぜ?」


 一緒に帰る時は沈んで行く夕日をバックにそう言う。


「俺さ、この学生生活の中で恋愛なんてしなくても良いなって、そう思ってたんだよな。お前と出会うまでは。」


 文化祭の準備で帰りが遅くなった日は2人きり、誰もいない帰りの坂道でそんな事を不意に言った事もあった。



 今のこれを見て「よくやるな」「馬鹿だわこいつ」と思ったそこの君――正解だ。俺だってこんなセリフ吐くやつ街中で見かけたら脳内サンドバッグにするだろう。


 だが、考えてみてくれ。一緒にご飯食べれてるよな、一緒に帰れてるよな。


 そう、実は転校初日からみんな中々美里に話しかける事が出来ておらず、対して俺はこれだけ絡みに行っていたという事もあって彼女の一番の親友は気が付けば俺になっていたのだ。


 人間、振り切れば案外どんな事だって出来ると言うがこれは本当かもしれないぞ?


 そして、肝心なその俺のセリフに対して美里の反応はというとだな……


「あ、じゃあ一緒にた、食べる……?」

「あ、ありがと、」

「そ、そうなんだ。まぁ君は相変わらず私の事大好きだからなぁ」


 と、なんと最初は思いっきり引かれていた俺も、文化祭の時期となる十月にはもう美里からしてもこのセリフが当たり前になって来ていたのか、笑いながら聞き流す位にはなっていた!!


 いきなりめちゃくちゃ月日が飛んだじゃないかとツッコミを入れる人間が現れそうだが(そこの出来事はまた時間がある時に話すとして)


 凄くない!?いや、凄いよな?実際周りのクラスメイトが何故俺が美里に嫌われてないのかで一番驚いてたぜ。


 そして、こうなると更に勢いづくのが人間という生き物である。ここからの俺は更に凄かった。


「今日のMVPはどのクラスでも無い、俺たちだよな」


 文化祭帰りにはそんなセリフを吐き、


「特別なんて求めない。というか、お前と居れる事自体が俺にとっちゃ十分特別だ。」


 その頃はそんなセリフを吐くのが日常になって行き、


「今日ハロウィンだけど、美里ってなんで常時女神のコスプレしてんだよ。可愛すぎてお菓子あげるわ」


 ハロウィンの時にはそんな事も言ったっけ。



 そうして気が付けば十二月。あっとゆう間に俺の脳内彼女と瓜二つの美里に出会った一年が終わろうとしていた。


 ここで俺は覚悟を決める。そう、「クリスマスに告白しよう」とな。

 お気づきの方も居るだろうが、俺はこれまでに好意は伝えていても実際に「付き合ってくれ」とは一言も言っていなかったのだ。


「なぁ、クリスマスの夜空いてるか?」

「ん?デートしたいの?」

「あぁ、頼む」

「分かった、良いよっ」


 正直、確定演出だと思ったね。だってよ、考えて見てくれみんな。

 クリスマスにデートってもう……そういう事じゃん?それをOKしたんだぜ?


 そして当日、運命の日。


 イルミネーションの中を俺と美里は歩いていた。


「俺さ、昼より夜が好きなんだよな。」

「なんで?」

「だって、夜の方が暗いから周りに気をつけなきゃだろ?だから自然と美里との距離が近くなるじゃん」

「あーなるほどね」


 その時にはもう俺の脳内から捻り出したギャルゲーセリフもスルーされるくらいにはなっていた。


「――なぁ、美里。」

「ん?」

「ちょっと良いか?」


 俺は覚悟を決める。


「ひとつ、お願いがあるんだ。」

「良いよ、言ってみて。」


「一緒に、夢の先を見に行こう。」

「夢の……先?」

「あぁ。きっと俺たちの出会いは運命なんだ。これ以上なんてありえない。だからさ、この運命が俺たちの人生の中でどれだけの物を見せてくれるのか、それを美里と一緒に見に行きたいんだ。だからさ――」


「俺と、付き合ってくれ。」

「……う〜ん、」


 煌びやかに光る聖夜の街から音が消えた気がした。告白の返事で頭文字が「う〜ん」だった場合に上手くいくパターンがあっただろうか。

 否、少なくとも俺は見た事が無かった。


 膝から崩れ落ちそうになる。だが、その答えを全て聞くまではまだ分からないじゃないか。気を失いそうになる中、必死に耐えた。


 すると、そこで美里は意地悪っぽくこう返してきたのだ。


「なんかさ、その変にセリフ臭いのは無しがいいな。だからこれまで誰とも付き合ってないんだよ、君〜」

「……ぁあ、」


 ダメだ、はい終了。バカにされて終――


「――だから、さ。私の方からちゃんと言わせて欲しいな。」

「……へ?」


 再び街に色が戻る。

 諦めていた顔を上げてみればそこにいた美里の頬が赤らめて見えるのはきっとこの寒さだからだけでは無いだろう。


「私はさ、最初正直君を気持ち悪いって思ってた。変な事ばっかり言うんだもん。」

「す、すいません」

「でもさ、途中から本気で私を大好きなんだ、想ってくれてるんだって気づいたの。これまで私に寄ってきた男たちはみんな薄っぺらかったけど、君は違うかった。」

「……ッ!!」


「だからさ――こんなに君が好きで好きでたまらない理想の彼女だけど、それでも良かったら私と付き合って下さい。」


 これまで、歴史上にここまで自信に満ち溢れた告白があっただろうか。

 でも、そんなのもうどうだって良かった。


「俺が……俺が絶対!!美里を夢の先に――じゃなくて、幸せにしてみせるな……ッ!!」

「……ッ!、うん……!」


 こうして俺は無事美里と結ばれる事が出来た。

 でも、ただ自慢話を聞かせたかった訳じゃない。


 せっかくこうして話を最後まで聞いてくれたみんなにひとつ、これもきっと何かの縁なんだし覚えて帰って欲しい。


 確かに、この世界には難しい事や絶対無理だって言われてる事が沢山――本当に沢山ある。

 それに挑もうとする時、それなりの覚悟は必要だしバカにしてくるやつもいるだろう。


 俺だって、何度周りから「もう諦めろよ」そう言われて来た事か。

 だが、それがなんだ?難しいからなんだよ、絶対無理だと言われてるからなんだよ。


 それを本気で成し遂げたくて、それを本気で掴み取りたくて。その想いがあるのなら難易度や周りの声が諦める理由にはならないよな。


 みんな思わないか?「夢の先を見に行きたい」って。ん?なんだ?その変にセリフ臭いのは無しが良いって?


 分かった分かった、じゃあ、一言だけ。


 夢、願望、目標があるなら叶えろ。自分の満足が行くまでやってみれば良い。俺は応援してるぜ。

今回は思い付きで書いた物語ですのでクオリティは高くは無かったと思いますが、、wまずはここまで読んで頂き本当にありがとうございました!!

ただいま未発表の連載作品を執筆している真っ只中ですので、ぜひそちらも楽しみにして貰えたらと思います!!

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