ブラックバスさ
釣れた記憶がない(汗)
日ものぼらないうちから朝釣りに出かけたって
でっかいクーラーボックスには
行きより 少しとけかかった氷だけの帰り道
そんな僕だけど きょうはなんか神懸かってた
でっかいのを何匹も釣りあげて
肩にずっしりくいこむクーラーボックスのベルトを
ずり落ちないように反対側の手で
ひっつかんで よたよた歩いてたんだ
そして 帰り道には
いつも釣果のないぼくを からかう声がかかる
悪いね きょうは大漁なんだと返すと
疑わしい目をむけてきて
いったい どんな魚が釣れたのかって
クーラーボックスをのぞきこもうとしてきたきみに
「ブラックバスさ」
胸をはって答えてやりたい
答えてやりたいけど きみはきっと
期待して損したと がっかりの表情に沈むか
悪けりゃ鼻で笑い飛ばすことだろう
「鯖っす」
見栄をはって すぐにばれる嘘を
ならべてやることもできたけど それじゃあ
せっかく釣られてくれた ブラックバスに
なんか悪い気がするから それもできない
だからぼくは あいまいにわらって
なんとも返事をせずに そそくさと家路を急ぐんだ
すまんね ブラックバス
おまえはなにひとつ悪くない
だれかに自慢するには
ちょっと気がひける釣果だけど
ブラックバスはちゃんと食べられる魚で
ぼくのきょうの晩めしになることは
もう決めてある 焼こうか 煮ようか
臭みがあるかもとはきいたけど
ちゃんとおいしく食べてやりたい
そして もしほんとに
ブラックバスをおいしく食べてやることができたなら
つぎに釣りあげたときは
もう 遠慮することもないよね またきみに
どんな魚が釣れたのか 尋ねられたら
胸をはって答えてやればいいや
恥ずかしそうに視線をそらしなんかせず
背すじをのばして 目をあわせて
得意顔さえ浮かべながら
知らないのか? あんなにうまい魚なのにって
むしろそっちの無知を気の毒がりながら
臆面もなく告げてやるぞ
「ブラックバスさ」
釣り針につける蟲、苦手なんですよ。