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第8話

休日。

あいかわらず、女悪魔はまだボクの部屋にいた。

横になりながら、テレビを見ていた。


まったく何をしに、こっちの世界に来たのか?


「酒、飲みたいのォ~!」


ボクはいった。


「ボクは酒を買えませんよ。未成年なんだから」


またイライラしながら、女悪魔はいった。


「ジャマくさいのォ~! 人間ッ!」


女悪魔はしぶしぶ立ち上がるといった。


「しゃあないのう… 買いに行くか…」


ボクはじっとしていた。

本人が買いに行くのなら、それは好きにすればいい。

すると、女悪魔がイライラしながらいった。


「何しとんねん! 付いてこんかい!」

「は?」

「ワシに重い荷物、持たす気か?」


めんどくさいな。

何でボクが付いて行かなきゃ、いけないんだよ。

そもそも、どれだけ買うつもりなんだよ!


「お金はどうするんですか?」

「持っとるわいッ!」


銀行から奪った金だろうな、とは思ったが、何もいわなかった。

足がつかなきゃいいけど、と思いながら。


家を出てしばらく歩くと、後ろから声がした。


「お! 小松じゃねーか!」


小松はボクの名前だ。

聞きなれた声に、ボクは振り向いた。


そうでなくて欲しい…


と思いながら。

でも希望は儚く崩れた。


イヤなヤツに会ってしまった。

宮本だ…


宮本は、女悪魔を見ると、ボクにいった。


「誰? この人?」

「…知り合いだよ」


適当に答えた。

女悪魔は、宮本に全く興味が無いようだった。

すると、宮本が女悪魔にいった。


「美人ですね」


怪訝な顔で女悪魔がボクにいう。


「何や、コイツ?」


そして、宮本にいう。


「ワシのことは、悪魔様と…」


ボクはあわてて、女悪魔を止めた。


「ちょっ!」


宮本が不思議そうな顔をしていった。


「悪魔?」


そこで初めて、女悪魔は気づいた。


「あ… そうか… バレてまうな…」


そうだよッ!

でも、それいっちゃダメなんだよッ!

バカなの、悪魔って?


取り繕うように、ボクは宮本にいった。


「クマさんっていう名前なんだ」

「クマぁ?」


女悪魔は不服そうにいったが、ボクが睨むと、それ以上はいわなかった。

宮本が女悪魔にいう。


「めずらしい名前ですね~」


ボクは、宮本に聞こえないように女悪魔にいった。


「ボクをイジメてる宮本ってヤツです」


女悪魔が、小声でボクにいった。


「あぁ… ほな、ここで殺す?」


本当にバカなの、悪魔って?


ボクは即座に女悪魔にいった。


「やめてくださいよッ!」


宮本は何も知らずに、女悪魔にいった。


「クマさん、今日ヒマですか?」


ボクが見たこともない、宮本のにこやかな表情だった。


ん? あれ?

これって、ナンパ?


ボクは信じられなかった。


宮本、こんなの好みなの?

変わってるぅ!!


女悪魔が答えた。


「これから酒飲むから、いそがしいな…」


もうちょっと気を使う、とかさぁ…

本当バカなの? 悪魔って!


とはいえ、これはチャンスかも。

自分の好きな人の知り合いとわかれば、ボクはイジメられなくなるかも!

頑張れ、ボク!


そう思って、ボクは悪魔に聞いた。


「あ…クマ様は、イジメする人って好きですか?」

「…どうでもええわー」


話し合わせろよッ!

おまえ、何のために召喚されたんだよッ!


宮本が女悪魔に聞く。


「クマさん、オレとこれからどっか行きませんか?」


すると女悪魔は、


「チッ!」


と舌打ちすると、宮本にいった。


「うっとおしいな! オマエ!」


本当バカだよね、悪魔って!

気を使えってのッ!


そして、これ以上の会話はムダとばかりに、女悪魔は酒屋に向かって歩き出してボクにいった。


「行くぞッ!」


宮本はギロリと睨んで、女悪魔に聞こえないようにボクにいった。


「テメエ、調子こいてんじゃねえぞッ!」


いやいや、ボク、関係ないよねッ!

悪魔がバカなだけで!


女悪魔がボクにいう。


「オイ! はよ来いや!」


ボクは、女悪魔の後に走って行った。

宮本を置き去りにして…


これ、絶対、後でイジメられるやつだ!


と思いながら。


酒屋で酒とおつまみを買って、家に帰ると、女悪魔はさっそく飲み出した。

ほろ酔い気分になると、ボクを見ていった。


「何や、オマエ、暗い顔して。酒がマズなるやろが」


ボクは明日の学校のことを考えると、悪い予感しかしなかった。

なので、女悪魔に強い口調でいった。


「…悪魔様のせいですよ!」

「は? ワシが何したんや?」


女悪魔は、何も分かっていないようだった


「さっき、宮本に、あのボクをイジメてるヤツに、素っ気ない態度をしたでしょ」

「あぁ… あれか… アイツ、うっとおしかったからな…」

「あれのせいで、ボクは明日学校に行ったら、もっとヒドいイジメを受けるでしょうね」


ようやく女悪魔も、気づいたようだった。


「あ… ああ… そうか… そういや… そうか…」


酒を飲みながら、ふといった。


「そら… 悪かったな…」


女悪魔は、少し考えるといった。


「…まあええか、アイツ、ワシに興味あるみたいやったしな…」


そして立ち上がると、ボクにいった。


「ワシ、アイツとヤッて来たるわ!」

「え?」

「アイツとヤッて来たるッ!」


アイツを、じゃなくて、アイツと?


「殺さないでくださいよ」

「死んでまうかもな… 別の意味で…」


そういうと、含み笑いをした。


意味がわからない。

でも女悪魔は本気のようだ。


「酒も入って、気分もええしな…」

「あの… 殺すのだけは…」

「わかっとるッ! お子ちゃまは黙っとれッ!!」


そういって、窓を開けると、羽ばたいて行った。


心配して待っていると、女悪魔は2時間ぐらいで帰って来た。

そしてボクを見て、ニヤリと笑っていった。


「良かったの。これでイジメも終わりや」


ボクには、どういう意味かわからなかった。


「殺したんじゃないですよね?」

「いや、天国に行かせたった」


えっ? やっぱり殺したの?


「殺しちゃったんですか?」

「ちゃうて、いうとるやろッ!」


やっぱりよくわからない。


次の日、学校に行くと、宮本は生きていた。


ボクは、ほっとした。

さらに不思議なことに、宮本はとても親切になっていた。

同一人物かと思うくらいだった。

イジメ仲間の脇田も、首を傾げるほどだ。


こうして、イジメは解決した…



…ただ問題は、女悪魔がいまだにボクの家にいることだ。

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