第7話
ボクはシスターに事情を話して、家に来てもらった。
幸い両親はまだ家に帰ってきていない。
部屋のドアの前で、彼女にいった。
「悪魔はここにいます。準備はいいですか?」
彼女はうなづく。
「開けますよ…」
ボクはドアを開けて、部屋の中に入った。
「おい、悪魔! おまえの命もこれで終りだ!」
部屋の中で、横に寝ながらテレビを見て、スナックを食べていた女悪魔は、ボクを見るなりいった。
「オイ! ワシのことは悪魔様と呼べて、いうてるやろッ!」
女悪魔は、ボクの後ろにいる彼女を見つける。
「何や? その女?」
じっとその姿を見ると、
「ほお… 神の使いか…」
彼女が叫んだ。
「悪魔め! ここから立ち去りなさい!」
事情を察した女悪魔は、ボクに向かって微笑んでいった。
「オマエには、後で話があるからな…」
しかしボクは毅然としていった。
「話なんか無いよッ!」
女悪魔がイライラしながら叫んだ。
「オマエに無うても、ワシにあるんじゃいッ!!」
シスターがいった。
「彼を解き放ちなさい!」
彼女は、女悪魔に聖水をかける。
「うわっ!」
女悪魔は、かろうじて避けた。
「何するんじゃいッ?!」
「おまえを退散させるのです!」
シスターは、また聖水をかける。
「わっ!」
女悪魔は、避ける。
「あきらめなさい!」
シスター、聖水をかける。
「やめえッ!」
女悪魔、また避ける。
ボクは思った。
うわあ… ボクの部屋、水びたしだよ…
女悪魔は、床の聖水に足が触れそうになる。
その足から煙が上がった。
「!」
イラついた顔の女悪魔は、クルクルと指を回すと、その先が光り出した。
「ええかげんにせんかいッ!」
シスターに向けて手を差しだすと、指先の光が彼女に向かって飛んだ。
「危ないッ!」
ボクは、シスターを守ろうとして、その体を押し倒した。
すると、彼女の立っていた後ろの壁に大穴が開いている。
ボクは思った。
うわあ… この穴、親に何ていうんだよ…
それでも、ボクは女悪魔に叫んだ。
「死んじゃうだろ!」
「あたりまえやッ! 殺そうとしたんやからなッ!」
これ以上、放っておけない…
ボクの部屋を守るためにも…
ボクは、女悪魔に土下座していった。
「悪魔様! どうか、すぐに人を殺そうとしないで下さいッ!」
女悪魔は思い出したように、イライラした様子で腕を組んでいった。
「ジャマくさいのォ… 人間はッ!!」
ボクは続けた。
「お願いだから、もう帰ってください。終わったんですよ、悪魔様のお役目は!」
女悪魔がいった。
「何やねん! 帰って、ちゃうやろが! オマエなあ、イジメられてワシ頼って、アカンかったら、次はコイツに頼るんか?」
女悪魔は、シスターを指差した。
ボクは何もいえなかった。
「誰かを頼ってばっかりで、何とかしてくれんの待つだけやったら、アカンやろッ! おのれ自身が変わらんかったら、何も変わらんやろがッ!」
ボクは打ちのめされた。
「意外とマトモな事もいえるんですね… 悪魔様…」
「やかましいわッ!」
女悪魔は、しっかりツッコんだ。
ボクは座り直していった。
「わかりました! ボク、変わります! 絶対変わるって、誓いますッ!」
そして頭を下げた。
女悪魔が、うなづいた。
シスターも、微笑んでいる。
ボクは顔を上げて、チラと上目遣いに、女悪魔を見ていった。
「…だから、帰って」
「結局、それかいッ!」
ボクは重ねて頭を下げ、いった。
「お願いですッ! 帰ってくださいッ!!」
女悪魔はイライラとしながらいった。
「ワシのこと、どんだけキライやねん! オマエ、ホンマ失礼やぞ! 宣言したるけどな! ワシ! 絶対帰らんからなッ!」
そして、いった。
「あと、夕食の名店弁当は、ちゃんと買おて来たんやろなッ!!」
その後、ボクは、百貨店に弁当を買いに行った。