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第3話

ボクがコンビニで買ってきた弁当を前にしながら、女悪魔はいった。


「キツイこというたかもしれへんけど、最初が肝心やからな…

 あと… いちおう食うけど、ワシは客やねんから、コンビニ弁当はやめろよ」


彼女が食事を終えると、ボクは切り出した。


「それで… あの…」


女悪魔は、ウンとうなづいてみせた。


「願いやろ? わかってるがな… いうてみい!」

「ボク学校でイジメられてて、そいつらに休み時間はパシリをやらされて、しかも金は払わないまま! ヒドいんですよ。しかも、暴力! 殴って、蹴って! このあいだなんて、女の子の前で裸にされて、さらしものに…」


しばらく聞いていた女悪魔は叫んだ。


「どーでもええわッ!!」

「えっ?」

「うるさいねん! 食後のひとときが台無しや!」


女悪魔を怒らせてしまったので、いちおう謝ることにした。


「…すいません」


女悪魔が続ける。


「えーと、つまり、そいつらを殺したら、ええんやな?」

「えっ?」


ボクは驚いた。


「いや、腹立つのやったら、そいつら殺したらええんのやろ?」

「ダ、ダメですよ! 人殺しはダメですッ!」


ボクは焦った。

ヤツらを憎んではいるけど、殺すまではやりすぎだ。


しかし、イラついた様子で女悪魔はいった。


「なんでやねん? 殺したら終りやろが?」

「ダメ! 絶対ダメです! だいたい真っ先に、ボクが警察に疑われますよ! イジメられてるんだから!」


しばらく考えていた女悪魔は、ひらめいたようにいった。


「そしたら! 警察も殺したらええやんッ!」


ボクは即座にいった。


「ダメです! もっとダメ! それでいくと、全人類を殺すハメになっちゃうでしょ!」


ニヤリと笑うと女悪魔はいった。


「それはそれでも、ええやん」

「ダメです!」


途方に暮れたように彼女がいった。


「それやったら、他にどうしたらええのや?」

「いろいろあるでしょ、対策法は!」

「何? 例えば?」


え? それ、ボクが考えるの?

だいぶ頭悪いな、コイツ…


「例えば・・・ ボクにキミみたいな用心棒がついてると見せて、イジメをやめさせるとか」


即座に彼女がいった。


「ジャマくさいわ! そんなん! あとワシのこと、『キミ』っていうな! 『悪魔様』っていえ!」


ジャマくさいって、全然やる気ないな、コイツ…


「ヤツらから、ボクをイジメる心を無くさせるとか…」

「心の操作は、管轄外やなぁ・・・」


役人かよ、コイツ!

使えねえな!


「では、悪魔様は、いったい何が、おできになるんでしょう?」


さすがにボクのイヤミに気付いたらしく、イラついた様子でいった。


「それ以外の事やったら出来るわッ! だいたい!」


やる気がないやつに、何をいっても始まらない。

ボクはいった。


「えっと… 帰ってもらっていいですか?」


すると、彼女は激高した。


「おまえッ! ふざけんなよッ!!」


まさにブチ切れという様子で、彼女は叫んだ。


「どうゆうことやねん! 呼び出しといて、何もせんと帰れッて! ワシまるで、おまえのトコにメシたかりに来たみたいやろがッ!」


ボクもイラついて、言葉を返した。


「ちがうんですか?」

「ちゃうわッ! 全然ちゃうわッ! 今回、上手いこと行けへんのは、全面的におまえのせいやろがッ!」

「えっ?」

「考えなしに悪魔呼び出す、オマエのせいやろがッ!!」


もう意味が分からない。


「おまえはアタシのプライドを著しく傷つけたッ! おまえには絶対に謝罪してもらうからなッ!!」


どうすればよいのか。


「すいません… ホント帰ってください…」

「やかましいわ! ボケ! おまえ、ほんまムカつくな! イジメられて当然じゃ!!」


その一言は、効いた。

何でこんな事を、呼び出した悪魔にいわれなければならないのか…


「うっ・・・うっう・・・」


ボクは思わず泣き出してしまった。


女悪魔も、少々言いすぎたと思ったようだが、逆にムキになって続ける。


「なに泣いとんねんッ! 泣いたら、終りちゃうぞ! ボケ! オマエが、ちゃんと考えへんのが、悪いのやからなッ!」


そして、ボクを睨みつけるといった。


「もう寝るッ!!」


そして彼女は、部屋の隅でフテ寝をはじめた。


悪魔だ… 本物の悪魔だ…


ボクは、そう思った。

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