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6話 ルームメイト

 カジノで大儲けし、鼻歌交じりの軽やかなステップで、割り振られた自室へと来たアインは、愕然としていた。


 「おっ!?やっと来たか~!相部屋の奴がいつまでも来ねえから、変に緊張しちまってたんだぜ?俺はヤス・ジャグノーってんだ!一応、男爵の家柄になる。これから1年間宜しくなっ!!」


 「おっ、おぉ。宜しくな!」


 (相部屋かよ~~ッ!?)


 基本、貴族の子爵家以上の爵位の生徒には、1人部屋が割り当てられる。


 故に、アインもてっきり1人部屋なものだと思っていたのだ。


 「俺はアイン。アイン・クロスフォードだ。」


 ヤスの差し出した手をとり、両者は握手を交わす。


 「へぇ、って!?ええっ!?伯爵家じゃねえかっ!!部屋間違えてねえっ!?じゃない、部屋間違えてませんかっ!?」


 ヤス・ジャグノーは、緑色の短く整えられた頭髪で、178センチとアインよりもやや背がたかく、褐色の肌をしており、纏う雰囲気から親しみを持たれやすい。


 「あぁ、俺も間違えたかと思ったが、よく考えてみたら、これが俺の扱いとしてはデフォルトだったわ。あと、敬語とか気にしなくていいぜ?俺は、どうせ勘当される予定だしな!(笑)」


 「そっか!そりゃ助かる・・・って、んんっ!?ちょっと待て、勘当とか穏やかじゃねぇな!?」


 「まぁ、俺は幼い頃から体が弱くてな。魔剣士としての資質は最低限あるが、才能も無くてな。お陰で、社交界にも顔を出したことの無い箱入りで、クロスフォード家では、そんな無能は要らねえってさ。まぁ、学園卒業までに、子爵家以上の令嬢と婚約するか、輝かしい結果とやらを示せば、以降も勘当しないでやるって言われたけど、どうも現実味が無くてな(笑)」


 アインは、やれやれと言った風に軽い口調で話しているにも関わらず、ヤスは、「成る程な。」と真剣に話を聞いていた。


 「ってちょっと待てよ!?それって俺が聞いてもいい話なのか!?結構重要な話なんじゃねっ!?」


 その反応に対して、アインは、興味無さげに「あぁ、大丈夫、大丈夫。」と、片手で軽く洗う。


 「そんな事言い出すなら、相部屋にすんなって話だろ?それくらい俺の実家は、俺の事なんてどうでもいいんだよ。」


 そうきかされヤスは、「そっかぁ。」と、顔をしかめる。


 「名家は名家で大変だな。まぁ、そのよ?俺なんかがアインの力になれることなんて、本当に少ないだろうけどさ。それでも、困った事があったらいつでも声を掛けてくれよ!力になるぜ!」


 「あぁ、今は、その気持ちだけ受け取っておくよ。ところで・・・」


 その後、2人は家具や互いの荷物を何処に置くかや、掃除の当番、共同生活においての決まりごとなんかを打ち合わせ、眠りについた。



ーー 翌日 ーー



 ヤスは、シャワーの音に気が付き目を覚ました。


 「ん、、んん??」


 「すまない。起こしてしまった様だな。」


 シャワーから上がり、体をタオルで拭きながら、半裸のアインがヤスへ声を掛けた。


 「別にこのぐらい構わねぇさ。むしろ、いい目覚まし代わりになるってもんだ。」


 とは、軽口を叩きつつも、ヤスの声はまだ寝ぼけていた。


 その後、話の流れで朝食もヤスと済まし、2人は教室へと共に向かった。


 ヤスは、終始アインへ積極的に話し掛けてきた。


 アインが昨日、自身の現状を語った故か、はたまた本人の気質なのかわからないが、話題はジャグノー男爵家の事がメインで、元は商人だったとか、実家では、商人見習いとして、家業の手伝いをしてたとか、そういった話をしていた。


 だからか、ヤスの話し方は、聞きやすく、分かりやすいものであり、冗談をジャブの様に混ぜて会話を盛り上げてくれるため、アインは終始、聞き飽きたりしなかった。


 「・・・とまぁ、ぶっちゃけ俺は、記念受験のつもりだったのが受かっちまって、商魂逞しい親父に、他の貴族様方とコネを作ってこい、あわよくば、婚約者も捕まえてこいってな感じなわけっ!(笑)まぁ、アインと違って俺の方は、あわよくばってのが強いからな。気楽なもんだぜ(笑)」


 「へぇ~。確かに、気楽そうな顔をしてるな。」


 「おっと!?これは挑発か~?挑発なのか~!?」


 「いや、朝からうっせぇわ(笑)」


 「悪いっ!(笑)あっ、俺はDクラスだからこっちだわ!それじゃ、また後でなっ!!」


 ヤスは、そう言って自身の教室へと向かい、アインも「おぉ!」と返して自身の教室へと向かった。


 

ーー 時は過ぎ 昼休憩 ーー



 午前中の座学を惰眠で消費したアインは、昼休憩の鐘が鳴っても、暫くダラダラと、椅子と同化していた。


 しかしーーー


 「アイン・クロスフォードは居るかっ!?」


 という、大きな怒鳴り声に反応して、顔に乗せていた教科書を手に取り、「居ますよー。」と力無く、教科書を持ったのとは反対の手を振る。


 すると、怒鳴り声の主は、速足でアインの側までやって来た。


 (なんだよ、うっせぇな~。こっちは寝起きだぞ??)


 「貴様に、決闘を申し込むッ!!」


 「・・・はっ?」

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