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5話 笑いがとまんねぇ~!

 「くっそッ!?何が、最低ッ!!だよッ!?たくっ、思いっきりひっぱたきやがってあの女ッ!そういうことは、金返してからしろってんだッ!!」


 全寮制の魔剣士学園では、放課後にあたる17時~22時までの間の5時間は、学園外での自由行動が許されており、アインは、未だじんじんと痛む左の頬を擦り、ブツブツと1人で毒を吐きながら、王都の散策をしていた。


 「はぁ~、どうしたもんかな~。まだ冒険者として活動とかしたくないしなぁ~。」


 何故、冒険者として活動したくないのか、それは、冒険者として派手に稼げば、アインの父、ジルクニアス・クロスフォードから告げられた、"輝かしい結果"を挙げてしまうかも知れなかったからだ。


 (まだ、父上は俺をクロスフォード家に繋ぎ止めたいのか、切り離したいのか、その真意がわからないしな。俺に、クロスフォード家への忠誠心が無いこと位、父上は気付いているはず。なのに、学園へは送り出した。)


 「・・・、そこは最低限、家名を背負わせるに足る実力があると判断したのだろうが、ならば何故、発破をかける様な条件を出したのか・・・?婚約はまぁ、理解出来るが、やはり、"輝かしい結果"というのがわからん。何故そんな微妙な言い回しなんだ?父上らしくないというか・・・」


 眉間にシワを寄せ、ブツブツと独り言を発しながら、特に目的もなく、歩き続けていたアインだが、ふと目に入った看板を前に、ピタリと足を止め、ゴクリと唾を飲む。


 その時、つい先刻のミーナとの会話が脳裏を過る。


 "お馬鹿なあなたに良いことを教えてあげるわっ!お金って言うのわね、増やすために使うものなのよ??良かったわね!あなたもこれで少し賢くなれたじゃない。"


 そして、アインの瞳に映る看板の文字、それは、ネオンカラーで目映い光を放つ、カジノの3文字。


 "お金って言うのわね、増やすために使うものなのよ??"


 アインは、目を閉じ思考を巡らせ、今現在、自分の置かれている状況を充分吟味した上で、カッ目を見開き、結論を出す。





 「・・・成る程、つまり、こういうことかッ!!」




 アインは、勢い良く扉を開き、カジノへと乗り込んだのであった。


 ※因みに、この世界では、14歳からカジノ等の娯楽が合法となっています。


 理由としては、学園に多くの貴族のボンボン共が来るため、適度に楽しませ、適度に儲け、経済を発展させる一助とするためですね。


 また、酒や煙草は15歳から解禁となります。


 こちらは、成人が15歳であることに起因しています。





~~ そして、1時間後 ~~






「ヒャッハァァァァアッーーーー!!!」





 山積みとなったカジノチップの前で、アインは、天高く両の腕を掲げ、テーブルに脚を掛け、腹の底から声を捻り出し、歓喜を全身で表現していた。


 「兄ちゃんすげぇなっ!」

 「マジかよっ!?これは殿堂入りくるかっ!?」

 「チップの量やべぇなっ!」

 「今の時点で、換金したらいくらになるんだ!?」


 (ハッハーッ!ヤッベぇ!カジノ糞チョロ~♪クロスフォード家で磨き抜かれた、俺の動体視力と、超スパルタ式英才教育によるこの頭脳が有れば、トランプなんて只の倍々ゲームッ!!マジ、笑いがとまんねぇ~!)


 「フハハハッ!!フハハハッ!!フハハハハハハッ!!」


 (10ゲームから30ゲームのうちに、トランプを不正防止の為に新品と交換。その際に、全てのカードが一度オープンされる。その時に、全部のカードの配置を把握、シャッフルしようが、俺の動体視力と記憶力を持ってすれば、容易に全てカードを追跡できる。結果、確実に勝てる時には思いっきり吹っ掛けて、五分五分の時にはそこそこ掛ける。たったそれだけであれよあれよとこの様よッ!!)


 不正やイカサマを用いている訳ではない為に、いや、それ故にディーラーは、今にも泡を吹き出して倒れてしまいそうな程、ゲンナリとしていた。


 「ぷ、ぷれいすゆあべっ、べっと。」


 「じゃあ、わしはこんなもんで。」


 「私は、パスね。」


 他の同席の者たちがベットし終え、アインの順番が回ってくる。


 (えぇっと、次に配られるカードは確か・・・、ハハッ!!キタコレッ!!フハハハハハハッ!!)


 「・・・、オールインだっ!」


 「ほっ、ほんとにっ、よろしいので!?」


 「あぁ、2度も言わせるな。」


 「か、かしこまりました。」


 そうして、アインの前に積み上げられたカジノチップが、ベッティングエリアへと移された瞬間、周囲の熱は最高点に到達する。


 「フゥーーーーッ!!!!」

 「すげぇぇぇッ!!」

 「俺も言ってみてぇぇぇ!!!」


 等と、この時点で既に歓声が飛び交う。


 「の、のーもあべっと。それでは、か、カードを配ります。」


 同席の者たちへとカードが配られ、最後にアインへとカードが2枚オープンされた状態でやってくる。


 「そ、そんな・・・!?く、クローバーの1とダイヤのき、キングッ!?」


 「「「「「ブラックジャックッ!!」」」」」


 ディーラーは、震えながら自身のカードをめくるも、スペードの2とハートの5。


 「ヒャーーーーッハァァァァアーーーーッ!!!!!」


 再び、椅子へと上り、テーブルに足を掛け、喜びのあまり、奇声を挙げるアイン。


 すると、周囲の野次馬達も真似して、「ヒャーーーーッハァァァァアーーーーッ!!!!!」と叫び出す始末。


 そして、同席の他の者達との勝負を終えたディーラーは、静かに泡を吹き出して、卒倒した。


 「おめでとうございます!!」


 手を叩きながら、そう言って支配人と書かれたネームバッチを着けた白髪の男がアインへと近付いて来た。


 「#私__わたくし__#、当カジノの支配人をしております。サーチェと申します。」


 サーチェはそう言って、貴族さながらの綺麗な一礼をした。


 「アインだ。家名は伏せても?」


 対してアインは、椅子からはおりはすれど、それだけで、横柄な態度を一貫する。


 「勿論、構いません。」


 サーチェは、そんなアインに対して、嫌な素振り一つみせず、丁寧な対応を進める。


 そして、サーチェが"パチン"と、指を鳴らすと、バニーガールが台をガラガラと押しながら表れる。


 「それでは、アイン様。現時刻を持って、殿堂入りをされたこと、今一度祝福させて頂きます。僭越ながら、今勝たれたカジノチップ分も合わせた金額、しめて、白金貨10枚、金貨2枚、大銀貨3枚、銀貨6枚を御用意させて頂きました。並びに、当カジノから、殿堂入り記念メダルとグラスを進呈させて頂きます。」


 「どうぞ!」


 そう言われて、バニーガールから手渡されるがままに、アインは殿堂入り記念メダルとグラスを受け取る。


 すると、サーチェが"写っちゃうんです。"という手の平大の四角い箱形魔道具を取り出し、受け渡しの瞬間をパシャリ。


 「こちらの写真を現像した物は、当カジノにてあちらの方々同様に飾らさせて頂いても宜しいでしょうか?」


 そう言って、サーチェは、カジノ壁に堂々と飾られた、過去の殿堂入り達成者達の写真の方向を指す。


 「あぁ、別に構わない。」


 「有り難う御座います。それで、この後なのですが・・・」


 サーチェがこの後と言った時、アインは、寮の門限を思い出し、カジノの壁に掛けられた時計へと目をやる。


 (もう21時。そろそろ引き上げるか。今から朝まで、綺麗なお姉さん達が営むお店で豪遊したい気もするが、俺はまだ、酒や煙草が駄目だしな。せっかくなら、それは、もう少しお楽しみとして取っておきたい。)


 「あぁ、今日は、もう帰るつもりだが?」


 「左様で御座いますか!でしたら、#私__わたくし__#共総出で、御見送りさせて頂きます。」


 そしてアインは、気分良く帰路へと着いた。


 カジノの従業員総出での御見送りは、ただ人が大勢集まって、「御来店有り難う御座いました!」と頭を下げているだけなのに、なかなかどうして、圧巻であった。




ーー ちなみに ーー


 魔道具 写っちゃうんです。


 これは、異世界版カメラです。


 電動か魔動かが違う位で、見た目もまんまカメラです。 



 また、魔剣士学園はセキュリティとして、17時から22時以外の時間、魔術結界によって、内側からも外側出入り出来ない仕様となっています。


 また、17時から22時の間でも、校章を着けていないものは出入り出来ません。


 それ以外の特例で出入りする際は、かなり面倒な手続きが必要になります。


 なので、生徒は罰則がなくとも、自然に門限を守るのだとか。


 

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