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10話 お陰様でぇ~!こんなに強くなれましたーッ!!(2)

 「ほぉ~!モードも使わずに、あそこまで動けるか。ジークよ。さすがは、主の弟じゃな。」


 決闘場に設けてある、VIP用の観戦席は、観客と選手から、誰が観戦しているのか視認出来ないように設計してある。


 その4つある内の1つにて、決闘を観戦するアインの兄、ジークと黒く短い髪に紫色のメッシュの入った珍しい髪色が特徴的な、背の低い2年生の女性生徒が、試合を分析していた。


 「ふん。奴は、あれしか能がないのだ。それに、まだ構えにすら入っていない。恐らくは、#極真流__きょくしんりゅう__#の略式といったところだ。」


 「その、極真流?とやらはなんじゃ??先程から、刹那に見える魔力兆候に、関連がありそうじゃが??」


 「極真流は、両腕両足に加え、上半身を左右に分けた都合6箇所を、基礎単一、加速の術式と、基礎単一、硬化の術式を用いて、それらを1秒以下の僅かな時間で、断続的に、更に同時多発的に発動させる事で、瞬間的にスピードとパワーを跳ね上げるこの出来る魔剣術だ。」


 「ふむ、もうちっと分かりやすく説明せい。」


 「モード術式が常時、身体能力×2の状態だとするならば、極真流は、身体能力×1.1を積み重ねることで、瞬間的になら×2以上の身体能力をも、再現出来る戦闘方法と言えば分かるか?」


 「・・・おぉ、成る程のぉ。相変わらず固い表現じゃが、まぁ、大体理解したわ。」


 (ったく、簡単げに言いおるのぉ。つまり、魔力の消費量が極端に少ない代わりに、一動作するためにすら、何十もの魔法を発動させねばならんということじゃろうが。オマケに、力の流れを阻害せず、思考加速の補助もなく、その全てを1秒以下の僅かな時間で処理するともなれば、一体、どれだけ途方もない研鑽が必要となることか・・・。)


 「おっ!?バルザックが退いたの!」


 「ふん。精々、役に立ってくれると良いがな。」




ーー 決闘場中心 ーー




 「チィィイッ!!」


 バルザックは、素早く狙いを定め魔力を込め、剣に纏わせた炎を、アインへと向けて撃ち込む。


 これは、モード術式の長所の1つであり、纒っている属性の攻撃魔法を中級以下で有れば、無詠唱にて発動できるというものだ。


 バルザックの発動させた魔法は、中級のファイアランスであり、速度、威力ともに申し分ないものであったが、アインは、これを薄皮1枚切らす程スレスレで、つまりは、最低限の極僅かな体捌きによって回避する。


 (・・・やはりだッ!!アイツの身体は、#急に__・__#加速したッ!!先程の打ち合いでも、私の剣をあの急な加速によって弾いていたのかッ!?)


 バルザックは、更に複数のファイアランスを撃ち込み、アインの動きを注視する。


 「・・・#瞬閃__しゅんせん__#。」


 しかし、ファイアランスの着弾した先に、アインの姿はなく、バルザックは、完全にアインを見失い、急いで周囲を見渡す。


 「全く、この程度の実力で、次期当主候補だなんて、羨ましい限りだぜ。」


 その声が、バルザックの直ぐ真後ろから聞こえ、ゾクッとした恐怖を感じつつ、剣を振りながら、勢い良く振り返る。


 「クッ!?」


 バルザックの一撃を避けるため、アインは大きく後方へと飛んで退く。


 「貴様ッ!!一体、どんなペテンを使ったッ!?先程からの身体の不自然な加速は、何らかの使用禁止のアーティファクトによるペテンだろうッ!?でなければ、貴様ごときがッ!私と互角に渡り合える筈など無いのだからなぁッ!?」


 そう言って、真剣に睨み付けて来るバルザックに対して、アインは思わず吹き出して笑ってしまう。


 「プッ、フハハハハハッ!!さぞかし、甘やかされて育ったんだろうなぁ?だから、誇りだのプライドなどと、どーでも良いことに、こだわりが持てるんだ。そりゃあ気分が良いだろうぜ!ちょっと努力すれば、周りから凄いだの天才だのと、言われて来たんだろ??そんな天才の自分に、何の取り柄もない俺が敵う筈がないって!?だからペテンに違いないって!?フハハハハハッ!!こりゃっ!傑作だっ!ハハハハッ!!」


 「・・・言わせて置けばぁぁあッ!!」


 アインは、顔を真っ赤にして激昂するバルザックを尻目に、一通り笑うと、剣を右手で持ち、真っ直ぐ上方へと持ち上げると、体の側面側へ半円を描くように振り下ろす。


 その際、観客まで含めたその場にいる全ての人間に、アインが何をしているのか分かるように、加速の魔方陣も普段より大きめにして、かつゆっくりと展開した。


 「今観ての通りさ。俺のしていることは、ただこれだけ。力の流れを阻害せず、全身を同時多発的に加速させてるだけ。後は、たまに硬化魔法も使って、加速の勢いで、肉体が傷付かないようにしてるくらいかな。」


 「ペテンではない、とでも強弁するつもりか?」


 「実際に見せた方が早いか。まぁ、準備運動はもう十分だろう?そろそろ、真面目に相手してやるとしよう。」


 そう言ってアインは、バルザックに向けて一直線になるよう、腰を深く落として、剣を大上段に構える。


 「・・・極真流伍式、瞬閃ッ!!」


 その動きは独特の緩急により、まるでストロボを当てた時と同様に、アインの動きを小間切れに映し、動作の節目節目で、虚像を置き去りにしているかの様であった。


 バルザックは、辛うじてこの一撃に対応し、防ぐも、これまでのアインの攻撃とは段違いの威力に、踏ん張りつつも、1メートル程後退を余儀なくされる。


 「・・・瞬閃ッ!!」


 声に反応したバルザックは、未だビリビリと痺れた手に力を入れて、再び防ぐ。


 「・・・瞬閃ッ!!」


 更に、防ぐッ!!


 「クッ!?」


 防ぐ度に、右へ左へと踏ん張りつつも体が滑り、思わず、体勢を崩してしまう。


 「なんだ?もう膝を折るのか?フハハハハハッ!!」


 アインは、攻撃を途中で止め、片膝をつくバルザックを目前に、見下しながら嘲笑う。


 「・・・チィィイッ!!どんなペテンを使っているのかは知らんがっ!貴様ごときに、奥の手まで使わねばならんとはなッ!!」


 そう言うと、バルザックは剣を構え、体勢を整え、大声で呼ぶ。


 「モードッ!!#爆炎雷__ばくえんらい__#ッ!!」


 その瞬間より、バルザックの纏っていた炎と雷の勢いが跳ね上がる。


 「貴様ごときがッ!ペテンを使おうともッ!!私はその上を行くッ!!刮目せよッ!!これが私の全力だぁぁぁあッ!!」

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