1話 勘当?ラッキーッ!!
ライグザント王国の王都、そこには王国内唯一の魔剣士学園がある。
魔剣士学園では、実力が全てであり、貴族も平民も分け隔てなく受け入れられ、生徒達は互いに切磋琢磨し合い、各々の腕を磨く事が出来るとされている。
・・・表向きは。
しかし、現実的な話、平民はそもそも、戦闘に必要なだけの魔力を有していること自体が希であり、学力と剣術、更に魔力の扱いにも長ける者などは、本当に極少数しか居ない。
故に、魔剣士学園の実状としては、魔剣士としての才能を有する貴族の者達が集い、貴族同士の交流や出会いの為の場と成り果てていた。
そんな魔剣士学園へと入学することになっているアイン・クロスフォードは、入学式前夜、父のジルクニアス・クロスフォードから、重大な話を持ち掛けられていた。
「明日からの学園生活で、子爵家以上の家柄の相手と婚約しなさい。もしくは、輝かしい結果を残し、魔剣士の名家クロスフォード家の名声を広めるか。そのいずれかが出来なければ、貴様の様な無能に、以後クロスフォード家の名を名乗らせる訳にはいかない。話は以上だ、アイン。」
父が俺に、重々しい口調でそう告げた。
「分かりました父上。クロスフォード家三男として認めて頂けるように励んで参ります。」
俺は、あたかも覚悟を決めたといった雰囲気を醸し出して、父の言葉への返答を返した。
・・・が。
(ヤッホォォォオッ!!!これってつまり、魔剣士学園での3年間で、婚約者が出来ない上、魔剣士としても活躍出来なければ勘当するぞって事だよなっ!!ラッキーッ!!勘当ばんざーい!!!下手に貴族の三男で居るよりも、自由で気ままな冒険者になった方が100億倍マシだバーカッ!!!)
アイン・クロスフォード、14歳。
彼は、父から、勘当予定を告げられ、歓喜に満ち溢れていた。
「学園では、そこそこな悪評を広めて、勘当を確実なものにし、クロスフォード家の三男なんて辞めてやるっ!!フハハハハハッ!!!」
自室のバルコニーから月に向けて、明日からの意気込みを語り、高笑うのであった。
伯爵家とは言え三男では、長男と次男の両方が死ぬ、あるいは意識不明の重体とならなければ家督を継ぐ事などまず有り得ない。
更に、仮に魔剣士学園でジルクニアスの言う輝かしい活躍をして、王国へ貢献したとしても、その手柄は全て家の功績とされ、アインには、「良くやった!」と一言で済まされるのだ。
また、子爵家以上の家柄の女性と婚約したとして、待っているのは、媚びへつらうだけの日々。
実家同士の繋がりを強めるための婚約、そして、結婚ともなれば、相手方の機嫌を取るために、稼いだ金のほぼ全てを貢ぎ、妻は贅沢三昧、アインは馬車馬の如く働く様になるのが、この世界での常識。
とは言え、貴族の一員としてそれなりに裕福な生活は約束されるのだが、アインにとっては、その両者共、論外と言わざるを得なかった。
そもそも、アインはクロスフォード家の三男ではあれど、ジルクニアスの正妻との間の子ではない。
所謂、妾の子である。
アインが5歳の頃に魔力を発現させた事により、クロスフォード家へと引き取られ、貴族の三男として充分な教育を受け始めたのだ。
しかし、7歳の頃に魔剣士としては最低限程度の魔力しか有して居ないことが判ると、教育の質は低下。
また、クロスフォード家内での扱いもぞんざいなものとなっていった。
故に、アイン・クロスフォードには、クロスフォード家に対して何の負い目はなく、むしろ、復讐を考えないだけ有難いと思って欲しいと言う感情すらあり、忠誠心等、皆無であった。




