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【書籍発売中・ESN受賞】虐げられた精霊の愛し子は、隣国で魔石屋を開く事にしました  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第二章 ブレア領

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18、小石の活用方法 中編

 数日後、休憩時間に私は改めて小石のアクセサリーへの転用について考え始めた。だが、漠然としすぎてどんなアクセサリーから手を付ければ良いのか、悩ましいところだ。

 うんうんと唸っていれば、それを見たウルが声をかけてくる。


『主人、そんなに唸ってどうしたんだ?』

「以前小石を利用したアクセサリーを作る話をしましたよね?何のアクセサリーを作ろうか悩んでいるの」

『確かに〜。アクセサリーってい〜っぱいあるもんねぇ〜』


 ディーネがニコニコと私を肯定してくれるが、やっぱりウルは首を捻っている。


『そんなにあくせさりー?は種類が多いのか?』

『多いに決まっているじゃない!――』


 そもそもアクセサリーを知らないらしいウルの首根っ子を押さえて、エアルは延々と話しかけている。

 興味のない事は精霊さんでも知らないのね、と二人の姿を見ていると、グノーが話しかけてきたのだった。


 

『……なら、誰かに渡す事を考えて作ってみたら、いいのでは?』

『グノーに賛成〜!良いと思うよぉ〜』


 グノーの言う通り、誰かに渡す前提なら作りやすいかもしれない、と思った。それに、特定の人に渡したいのだけれど、と言えば、相談に乗ってくれる人がいるかもしれない。


 そう考えて浮かんできたのは、ライさんとリネットさんの二人だった。


 ネルさんやギルド長、エミリーさんのことも考えたが、私が精霊の愛し子だと知っているのは彼らだけであるし、これからもこの件でお世話になるかもしれないと思ったからだ。


「グノー、ありがとうございます。その案、採用しますね」

『……主の為になったのであれば、良かった』


 そう言って笑う彼は、照れているのか耳が赤くなっていた。



 

「うん、良いと思いますよ!」


 リネットさんへ渡す予定のアクセサリーが決まった後、私はライさんへの贈り物を相談する為に、ギルドへ訪れていた。彼女ならもしかしたら良い意見を教えてくれるかもしれない、と思ったからだ。


 ネルさんに「少々お聞きしたい事があるのですが」と話をすれば、後ろにいたエミリーさんが会議室を手配してくれたため、私たちはそこで話すことになった。

 軽く助言してもらえれば、と思って聞いただけだったのだが、思った以上にネルさんはアクセサリー、いや服飾系について詳しかったのだ。

 


 現在共和国の女性の間で人気のアクセサリーは、首飾りと髪留めらしい。それらも装飾が少なく、シンプルなものが好かれているそうだ。

 装飾が多く、大きいアクセサリーは、仕事の邪魔になりやすい上、良い印象を与えないらしい。どちらかというと、貴族がつけている物という印象が強いからだ。


「……そうなのですね。教えていただき、ありがとうございます」

「お役に立てて光栄です!……ちなみに、誰かにアクセサリーを渡す予定なのですか?」

「ええ、お世話になっているライさんとリネットさんに渡そうと思っていまして」


 リネットさんへは髪飾りが良いだろうと思っている。彼女は前衛で剣を振るのだ。首飾りより髪飾りの方が影響は少ないはずだ。そう伝えれば、ネルさんも首を縦に振っていた。


「ですが、ライさんへの贈り物がまだ決まっておりませんの……お恥ずかしながら異性に贈り物など、渡した事がないので」

 

 一応、元婚約者であるハリソンには送っていたのだが、毎年「いらない」と突き返されていたので、参考になどならないのだ。


 ネルさんは「うーん……」と少し考え込んだ後、チラリと私を一瞥しニヤリ、と笑みを湛えた。

 そして今まで見たことのないような満面の笑みで提案してくれたのだ。


「でしたら、腕輪はどうです?最近人気なのが、その都度持ち主の腕の太さに自動で合わせてくれる腕輪だそうですよ!話によると、魔法陣を描き込めばできるそうです」

「……それは良いかもしれませんね」


 手首に合わせた腕輪なら、ずれることもなく邪魔にもならないかもしれない、と思った。小石はそこまで大きい魔石ではないので、幅も取らないだろう。


「ありがとうございます。ライさんは腕輪にしてみようと思います」

「本当ですかっ!良かったです!」

 

 やっと贈り物が決まった私は、その場でただただ喜んでいた。

 だから気づかなかったのだ。彼女がほくそ笑んでいることに。




 その後私はトビーくんの両親が営む鍛冶屋に向かう。


「あ、シアお姉ちゃん!」

「トビー君、こんにちは。今日も店番?」

「そうなの!お母さんが今出かけてて、お父さんは仕事してるから!」

 

 確かに店の奥から、カーン、カーン、という心地の良い音が聞こえてくる。ホリーさんの旦那さんが作っているのだろうか。


「お姉ちゃんはどうしたの?この前買ったやつが壊れたりしたの?」


 そう話しかけられて、私はトビー君に気を戻し、首を振った。


「ううん。今日はアクセサリーを見ようと思って」

「アクセサリー!ならこっちだよ!」



 彼に手を引かれて、私は店の左側に置かれているアクセサリー区画にたどり着く。そこには首飾りだけでなく、指輪、腕輪、髪飾りなどがいくつも置かれていた。


 手前側には繊細な彫りが施されている商品が多く、奥側には宝石が埋まっている商品が所々見られる。

 だが、その宝石は魔石の小石の半分以下の大きさだ。それでも金額は数十倍に跳ね上がる。


 宝石は価値が高いので、仕方がない。それを魔石で代用できれば、もう少し値段が抑えられるはずだ。


 そう思いながら、アクセサリーを見ていると、トビー君の声が聞こえてきた。


「これはね、お母さんが作った作品なの!」

「ホリーさんが?」

「そう。お母さんのお父さん、んー僕のお祖父ちゃんがウェルスの街で鍛冶屋をやってるの!お母さんはそこで個人的にアクセサリーを作っていたんだって」


 トビー君曰く、そんなときこの街で当時弟子だったダドリーさんが、ホリーさんのお父さんを訪ねてきたそうで、そこで仲良くなり結婚まで至ったらしい。



「お母さんはお祖父ちゃんのところにも作品を卸しているの!この前会った時は、お祖父ちゃんのお家から帰るところだったんだ」

「そうなの、トビー君のお母さんすごい人なのね」

「うん!僕もお父さんやお母さんみたいに鍛治師になりたいんだ!」

「ふふふ、その時はトビー君の作った作品を使うわね」

「うん!約束だよっ」



 そう二人で話していると、後ろから「あら」と声をかけられる。振り向くとそこにはホリーさんが立っていた。


「あら、シアさんこんにちは。今日はもしかして、以前購入された商品の修理依頼でしょうか?」

「いえ、アクセサリーを拝見していました」

「アクセサリー、ですか?」

「そうだよ!僕がこのコーナーに案内したんだよ!」

「ええ、実はお世話になっている方に贈り物をしようと思っていまして」


 

 そして私はホリーさんに、髪飾りと腕輪を渡そうと考えている旨を話す。

 ホリーさんは、最初はニコニコと話を聞いていたが、途中から眉間に皺が寄り始めた。

 

「……」

「どうかしましたか?」

「いえ、大丈夫よ。これを聞いてしまうのは、野暮というものね」

「?」

「分かったわ。両方作らせてもらいますわ。ちなみにどんな物がお好みで?」


 その後すぐにデザインの話を始めたので、先程のホリーさんの様子はすぐに忘れてしまった私だった。

ちなみにアレクシアに腕輪を薦めたネルのその後ーーーーー


「あら、ネル。ご機嫌ね?何かあったの?」

「ふふふ、恋のキューピッドも大変ですよ〜!」

「?」


 彼女は、まるで良いことをした、と誇るようにご機嫌で仕事を始めるのだった。

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