私の想いびと
うちには五つ年上の兄がいます。兄は料理人を目指していて、今は専門学校に通いつつ居酒屋でもバイトをしています。兄は昔から何に対しても一生懸命で、たくさん努力する姿はとてもかっこいいです。そんな兄に私は恋をしてしまいました。
「ただいま〜」
「おかえり!お兄ちゃん!」
「おう。ただいま」
「ねえ、私お腹すいたんだけどなんかごはん作ってよ!」
うちの兄の料理が大好きです。昔、両親が用事で夜まで帰ってこない日に兄妹でオムライスを作ってから、料理にどハマりしました。兄の作るオムライスは何故か特別が味がします。その特別がなんなのか分からないけど、私はすでに兄に胃袋を掴まれています。
「うん、いいよ。オムライスでいいか?」
「うん!私お兄ちゃんの作るオムライス好きだよ、」
こうやってほんの少しですが、好意を伝えてみても兄は無反応です。
時々、思うことがあります。私の恋は絶対に叶わないのかなって。もし、私の想いがお兄ちゃんに伝わっても真面目な兄の事だから、私を傷つけないように優しくふるんだろうなって事も想像がつきます。
コンコン
「俺だけど、入っていいか?」
「うん、いいよ」
「どうしたの?」
「元気ないなって思ったからさ、相談のりにきたんだよ」
こうやってお兄ちゃんは私が必死に隠そうとしている弱さにも一番に気づいてくれます。
「やっぱりお兄ちゃんには敵わないな」
「俺はお前の兄貴なんだから敵わなくて当然だ。お前を一番近くで見てきたのは誰だと思ってんだ」
こういうことを言うからお兄ちゃんはズルイです。
「好きなものを好きなままで良いのかな」
「言いに決まってるだろう。好きなものってのは何にも変え難いことなんだ。その好きなものがある事で、毎日を生きる活力になる。そうやって毎日生きて、少しずつ好きなものを増やして、死ぬ時の周りが好きなものだらけだったらそれって、すげぇ幸せな事なんじゃないか?」
「でも、人に迷惑かけちゃうかも知れない、」
「良いんだよ、迷惑かけて。お前が好きなものはお前からの好意に気づいてるよ。ある程度の迷惑は笑って許してくれる」
「そうかな、」
「そうだとも!迷惑なら俺にかけて来い。俺はお前の家族だから、どんな事でも受け入れてやるよ、」
「うん、そうだね。決めた!私好きなものに全力で生きる!」
「そうそう!その意気だ!」
「それでね、お兄ちゃん。私、お兄ちゃんのこと、」
私のお兄ちゃんはいつまでも私のお兄ちゃんで、私の家族で、私が一番大好きな人です。