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童話

環状線「虹」修理工募集中

作者: 夕立

世界中のあちらこちらに架かってあちらとこちらをつなぐ虹の橋。

実はこの橋、環状線なのです!

え?

全然円じゃないって?


それがこの環状線「虹」の辛いところなのです。

なにせ環状線「虹」はとてもとても古い道。

ここもそこもボロボロで、崩落している場所ばかりなのです。


修理工はいるのですが、なにせ大きな道なものですから。

修理が一周したと思ったらまた痛んできている、というのがいつもの日常でして。

環状線が完全な円を保てている時はほんの一瞬です。

草むしりに追われる夏のお庭と同じですね。



 Преобразование



修理工さんは、今、赤い橋の補修に一生懸命。

中国という国の上空が作業場です。


赤い橋の補修には赤い素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて赤いものを探します。

といっても、ここは紅色がめでたい色とされる中国。

赤色探しはそう苦労しないと思っていました。

今だって、ほら、目の前で、鮮やかな赤い旗がたくさん風にゆれています。

これをちょっと拝借すれば、補修に必要な素材はまかなえそうです。


修理工さんは道行く人をつかまえて、旗を作っている工場の場所を訊ねました。

なぜ旗をもらう交渉をしなかったのかですって?

それは、周囲で風にゆれている旗が「国旗」だったからです。

国旗を補修に使うのはちょっと気が引けます。


教えてもらった工場には赤い布がたくさんありました。

あまりに綺麗な赤い布だったので、修理工さんは補修とは余分に布をもらって、仕立て屋さんで奥さん用のドレスを作ってもらいました。



 Преобразование



修理工さんは、今、橙色の橋の補修に一生懸命。

インドという国の上空が作業場です。


橙色の橋の補修には橙色の素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて橙色のものを探します。

探し始めるとすぐにお腹がぐ~となりました。

だって仕方ありませんよね。

そこかしこからとても良い香りが漂ってくるのですもの。


香りに引き寄せられて、修理工さんは1軒のお店に入りました。

周囲のお客さんが食べているものをのぞき見してみると、どれもおいしそうです。

おなかぺこぺこだった修理工さんは、欲張って、複数のカレーを楽しめるセットメニューを頼みました。


食べ終わったらもちろんお腹ぱんぱんです。

なにせ欲張りましたから。

今から橙色のもの探しをするのがおっくうで、そのうえ目の前には橙色のカレールーがあったのもあり。

修理工さんは、橙色のカレールーを橙色の橋の補修素材にすることにしました。

とてもおいしかったので、おうちで奥さんにも味わってもらいたくて、カレールーセットも特別にもらいました。



 Преобразование



修理工さんは、今、黄色い橋の補修に一生懸命。

サウジアラビアという国の上空が作業場です。


黄色い橋の補修には黄色い素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて黄色いものを探します。

おっと間違えました。

探し物をしに地上に降りた修理工さんですが、この国で探すのは補修の素材ではありません。

なにせ黄色いものは、そこら辺の砂漠にあふれているのですから。

そう、砂です。


お仕事に必要なものは見つかっているのに、修理工さんは何かを探しています。

何が見つかるのか修理工さんもわかりません。

奥さんが喜んでくれそうな、サウジアラビアらしいものを探しているのです。


売店のおじさん店員さんにお土産は何がいいか訊ねてみました。

「そりゃあ、嫁さんに送るなら黄金のアクセサリー一択さ」

店員さんが黄金のアクセサリーをたくさん見せてくれました。

素敵なアクセサリーは奥さんにとても似合いそうです。ですがお高い。

お財布と相談して、修理工さんは指輪を買って帰りました。



 Преобразование



修理工さんは、今、緑色の橋の補修に一生懸命。

スウェーデンという国の上空が作業場です。


緑色の橋の補修には緑色の素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて緑色のものを探します。

上空から緑色の大きな絨毯に見えたものが素材候補です。


緑の絨毯はすぐに見つかりました。

修理工さんが絨毯だと思ったものは、牛さんの放牧場でした。

牧草をわけてもらえるように牧場主さんに交渉してみたら、すんなり了承をくれます。

そのうえ、この牧場の牛さんのお乳はおいしいから、ぜひ飲んでいってくれと、牛乳をご馳走してもらいました。


牧場主さんご自慢の牛乳は本当においしかったです。

奥さんにも味わわせてあげたくて、修理工さんはヨーグルトをお土産にもらいました。



 Преобразование



修理工さんは、今、青い橋の補修に一生懸命。

アルゼンチンという国の上空が作業場です。


青い橋の補修には青い素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて青いものを探します。

目的の青い素材めがけて降下していると、冷たい風がびゅぉおと吹きました。

体がぶるぶる震えます。


それもそのはず。

修理工さんが青い素材として選んだのは氷河の氷だったのです。

世界自然遺産にも登録されている氷らしいですよ。

なんかすごいですね。


修理に使うぶんより少し多めに氷を採取して、修理工さんは青い橋に戻りました。

奥さんへのお土産のヨーグルトが腐らないように冷やすのに、もってこいのものが見つかりましたね。



 Преобразование



修理工さんは、今、藍色の橋の補修に一生懸命。

太平洋という海の上空が作業場です。


藍色の橋の補修には藍色の素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて藍色のものを探します。

海にどぼんと飛び込んで、そのままどんどんもぐりました。

深い深い海の底の、どこまでも深い藍色を素材にしようと思ったのです。


けれど残念。

深海からくみ上げた水は、お空の下では藍色でなくなってしまいました。

あーあ、また素材を探さないとな、と天をあおぐと、東のお空が藍色になっています。

夜が近くなってお空が藍色になりだしたのです。


お空の藍色を素材にして、修理工さんは急いで藍色の橋の補修にとりかかりました。

奥さんへのお土産に、海の浅い所まで泳いでいってサンゴを探したりしてたので、ほどよく時間が流れたお陰ですね。



 Преобразование



修理工さんは、今、紫色の橋の補修に一生懸命。

日本という国の上空が作業場です。


紫色の橋の補修には紫色の素材が必要なので、修理工さんは地上に降りて紫色のものを探します。

ごーるでんうぃーくという、この国の大型連休中らしくて、たくさんの人が遊びに出てきています。

修理工さんは人の波にのまれて流されてしまいました。


流れ流されようやく落ち着いた先には見事な藤棚がありました。

藤というのは紫色のお花です。

修理工さんは藤を紫色の素材に決めました。


花を持ち帰って奥さんにも見せてあげたいのですが、藤は花束には向きません。

花屋さんに寄って、藤に似た色の花で花束を作ってもらいました。



 Преобразование



ついに、環状線の全ての道がきれいな状態になりました。

修理工さんはこれからしばらくお休みです。

補修の旅で手に入れたたくさんのお土産を持っておうちに帰りました。


修理工さんが帰ってきて奥さんは大喜び。

花束は花瓶にきれいに飾ってくれました。

今晩は、お土産のルーを使ってカレーを作ってくれるらしいですよ。


ご飯ができるのを待つ間に、修理工さんは金の指輪とサンゴを指輪屋さんに持っていきました。

そうして、2つをひっつけてサンゴの指輪にしてもらいました。


夜になって。

紫色の花の飾られた部屋で、修理工さんは奥さんの指にサンゴの指輪をはめてあげました。

奥さんの顔にも満面の笑みが花開きます。

赤いチャイナドレスを着てサンゴの指輪をはめた奥さんと、修理工さんは食卓を囲みました。

おいしいけれどちょっとピリッとしたカレーの辛さを和らげてくれるのは、お土産のヨーグルトから奥さんが作ってくれたラッシー。


修理の旅の報酬に、素敵な幸せ時間を修理工さんは見つけました。

あなたも修理工になって、幸せ時間を見つけませんか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] むしろ仕事で使う補修素材がおまけなくらい奥さんを溺愛してて、素敵なお話でしたね〜。 特に深海の藍色は素材にならないのに、空のディープブルーを素材にできるあたりで、溺愛具合を確信しました(笑…
[良い点] こんばんは。 虹の修理工さん、まさか世界を股にかけての大仕事だとは、と、かなり驚きました。 現地で色の素材と、奥さんへのお土産を集めて、仕事もバッチリ、出張土産もバッチリ、これはデキルお…
[良い点] ロシア語が使われていて、赤で中国、というあたりで これは……!?と思ったのですが、ほんわかとあっかいお話でした。 藍だったら日本がくるかな~とおもいきや、紫! 紫蘇かな茄子かなーと色気ゼ…
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