表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

その④ 遅くなる晩御飯

おはよう・こんにちは・こんばんは

どっちにせよ、その④まで読んでくれてありがとう!

いや~、最近忙しいわ~

忙しい (T_T)

忙しいけど、僕、執筆を怠らない(多分)

この忙しい日々から少しでも脱して、この世界に飛び込めればいいな~

というわけで、ゆっくり楽しんでください!

ようやく大樹を屈させて、あの扉を突破できた獣人の少女は何か気づき、足を止めた。

クンクンと嗅ぎ、彼女は右側にある料理場に視線を向ける。

ぱちぱちする、花火のような焚火。

熱々の黒い鍋から上がって、天井に設置してある排気口を通して、外に脱する白い湯気。

部屋の奥まで広がり、空間を満たし、ふわっとしたお米の香り。

少女は感想を言わず、よだれを垂らし、大きい目で大樹を見る。

じっと佇んで、物欲しそうな顔から彼女の意図を察して、大樹は扉をゆっくり閉めて、これからの予定を述べる。

「お腹が空いているのはわかるが、しばらく待ってて。前回のようにご飯しかない食事がほしくなければ、そこに大人しく座れ。今すぐ、野菜と君が持ってきたウサギを調理するから」

そう言いながら、大樹は唯一の電気の下にある食卓を指差す。

親が手に負えない子供を指導するように、彼の声は諦めたやら、負けたやら、勢いがなかった。

会ってから、一日でも経過していないのに、少女を大分理解できたと大樹は思っている。そして、自分の優しさは今までの流れの原因であることも。


大樹が指した方向を目で従って、少女は食卓へ歩き、優雅に腰を掛ける。

椅子も、身長も低いため、彼女のざらざらする尻尾は床に届く。

尻尾を定期的に揺らし、空中で細い両足を振り、少女は上半身を食卓の上で伸ばし、特別な意味のないことをする。


その一方、大樹は少女の視線をいったん無視して、作業に戻る。

ご飯はもう美味しく炊き上げたから、キャベツが茹でられるように、焚火のスペースを空かす必要がある。

火傷しないよう、太い布で鍋の縁をしっかりと掴み、横に置いた後、大樹は料理道具の在庫から、ちょっと大きめで別の鍋を取って、焚火の上にかける。

水を注ぎ込んで、大樹はお湯が沸く時点を待つ。

秋の夜の寒さに冷やされたため、沸騰する時間は普段より数十秒長かった。

でも、長かったからこそ、人はそのわずかな数十秒を使って、忙しい日々から抜け出すことができる。

頭を空っぽにして、静かな時間とともに過ごす。


お湯がついに沸騰して、大樹にぶっ切りしたキャベツを加える時点だよと伝える。

茹で野菜はシンプルな料理なので、ブクブクする鍋の中で火が通って、お皿に盛り上げられるのに、あっという間だった。

二品目を完成し、大樹はまた焚火をきれいにする。

そして、彼は独り言を呟いた。

「メインディッシュに入るか」

ウサギを目にして、彼はちょっと不安を感じた。

(そういえば、俺はウサギの丸ごと一匹をさばいたことないよな)

今まで、大樹が食べてきたのは、使いやすくされた、下処理済の肉だ。

毛皮のない、身体の部分をそれぞれに売られる商品はほとんどだった。

しかし、少女が持ってきたのは生々しくて、耳や足や内臓など揃っているウサギの遺体。

大樹にとって、この度は初体験で、やらかしてしまうかもしれないが、今ちゃんと料理しないと、彼女の期待を裏切ることになる。

常識ゼロで、ちょっとしたしつこい獣人であろうと、大樹は純粋な子供を悲しませる趣味がない。

大人の立場からすると、恥じるべきことだ。

さらに、新しいことに挑戦する際に、失敗を恐れずまっすぐ挑むべきだというのも、彼の信念だから、彼はこの作業を積極的に接することに決めた。


処理中に出る血や汚れが床につかないように、大樹はウサギの下に数枚の紙を敷いて置いた。

寝る場所と繋ぐ料理場で、悪臭が残るのは誰でも望ましくないだろう。

あと、後片付けも楽になる。


(確かに、まずは中身を取り出すこと...)

そう思いつつ、大樹は右手で包丁を握り、左手でウサギを固定し、一本を入れる。

慎重に慎重に、鋭い刃先がもふもふする毛皮を貫いて、大樹の手に従って、少しずつウサギのお腹を割っていく。

(いや...、気色悪いだな、これは)

表情を凝らした大樹の目の前に、子供が見るべきではない物は切ったところから、ぶよぶよと滑りだす。

意外と血が出なかったが、感触やにおいだけで、大樹の食欲が消えた。


(次は背中に一本入れて...、毛皮を剥がすこと)

考える通り、大樹はウサギの下処理を続ける。

普段だったら、包丁で作った毛皮と肉の隙間に両手を差し込んで、同時に逆方向へ一気に引っ張るんだが、大樹はまだ素人のため、躊躇しがちで、何度も引っ張り直さなければならなかった。


(最後に、小分けにする...)

包丁で関節のとこを狙い、大樹はウサギの身体を解体し始める。

頭、背中、バラ、足。

全部大樹の前で順々に並んで、ピンク色をピカピカに光ってくる。

さすが、天然の物。

生々しいけど、美しい。


(これでいいだろう)

包丁を下げて、大樹は頑張って出した製品を見て、少し自慢気に微笑む。

左に毛皮、右に内臓、真ん中に肉に包まれる各部位。

完璧ではないが、合格と言えるには、十分に足りている。

あとは、この肉でどんな料理にするか決めることだけ。


(もう遅いだし、手間がかからない物にしよう)

シンプルで速く終わらせる方がいいと判決し、大樹は立ち上がって、串を取りに行く。

今晩、メインは焼肉になる。

(ていうか、あの子はどうなってい...)

「あっ!」

後ろに、しゃがんでいて、ピカピカするピンク色のウサギ肉に釘付けになった獣人がいた。

両手を膝に乗せて、目やり場にあるものを丸呑みしそうな緑玉の瞳とよだれが止まない口元の少女。


「いつからいたのよ、君は?全然気づかなかったんだけど!」

狐の少女に心臓を走らされて、大樹は思考のそのままを思わずふっと言い出した。

しかし、返事も、反応もなかった。

なぜかというと、彼女はきれいに下処理された肉に無我夢中だったから。


(さっきから、音が聞こえなくなって、静かだなと思ったが、ずっと後ろから観察していたんだな。

お腹、ずいぶん空いているそうだし、しょうがないか...)

狩った獲物を食べず、朝から夕方まで家の前に待たされた少女。

家にきっと入れる確定ではないのに、そこまで待機の姿勢でいられるなんて、今更振り返ってみれば、すごいな、と大樹は思った。

だから、彼女が費やした時間を無駄にしないように、美味しい焼肉を焼こう、と大樹は決めつけた。


「手を出すんなよ。まだ終わっていないから」

彼女が食欲に負けないように、一応指示を下しておいた大樹。

そして、彼は長細い鉄の串を数本取りに行く。

その間に、少女は一メートルしか離れないウサギの生肉に釘付けになったまま。


串を手に入れた大樹は元に戻り、可愛い小動物のようにしゃがむ少女の隣に座る。

「まあ、これは本番だ。よく見てね」

柔らかい声で、大樹は串で小分けした部位を徐々に貫いて、軽く塩をかけて、焚火の手前に少し傾けて固定させる。

この過程を何度か繰り返し、彼は用意した肉の分を使い切れた。


少女は肉がよく見られるように、焚火に近づく。

それに対して、火がじっくりと通ることを待つ間に、大樹は床にある紙とウサギの残りを片づける。掃除を終えたあと、大樹は壁に背中を預けながら、少女の後ろから見守る。

彼女は話したり、動いたりする様子がないから、大樹も会話を始めることはしない。

それによって、この密着な空間で、普段耳に届かない音は大きくはっきりと聞こえるようになった。

焚火は、寿命が短く虚しいスパークを放ちながら、ばちばちという音をする。

焼肉は、煙と熱を浴びながら、少し焦げて、じゅわじゅわと鳴らす。

しかし、大樹と少女の意識の的は音ではなく、そのにある五本の焼肉であった。

五本と言ったものの、使っていたのは完全に肉ではなく、骨付きの肉だから、実はそんなに多くでない。

でも、このお二人には十分だ。

この家を、嗅ぐだけで満足しそうな香りで満たすには十分だった。



「おいしく焼いていたね。そろそろ、盛り上げて食べよう」

油できらめく、茶色に染まった焼肉を見つめ、大樹はそう言った。

よく頑張ってくれた焚火を休ませて、彼はご飯、茹でたキャベツ、とメインディッシュの焼肉を食卓へ移動する。

少女は大人しく大樹の後ろからついてくる。

お二人の前に、それぞれのお箸とお椀が置かれている。

自分の分を取り出したついでに、彼女の分も出そうか、と大樹は思った。

洗う時、別に手間が変わるわけでもないから。


お二人が着席したとたん、もの知らずな少女は、全部作ってあげた家の主人がまだ一口していないことにもかかわらず、焼肉を一本取って口に入れた。

彼女が肉を噛みついた瞬間、体内で電流が流れたように、彼女の耳、尻尾、そして目はゾクッとし、時間が止まったのようだった。

しかし、叫んでいた空腹を黙らせるために、彼女は動きをつづけた。

彼女の側に、食べ尽くし残された骨はどんどん増えて、転がっている。

あっという間に、大樹が最初の一本を手にする前に、彼女は二本目を始めた。


「まあ、そこまで急がなくていいから。ここでは、ゆっくり、...しっかり...とか・ん・で、味わってもいいよ」

少女の乱暴な食べ方にちょっと心配し、大樹はそう言いながら、口を開き、噛む動きを見せて、彼女を同じことをマネさせようとする。

もちろん、焼肉を食べながら、解説する。

こうやって、解説がよりわかりやすくなり、実例で具体的に説明できるはず、と大樹は思った。

その一方、少女は定期的に尻尾を揺らし、常に大きく開く目を瞬いて、彼の動きを観察しながら、食べ続ける。

効果がないかなと思ったところ、大樹は奇跡を見た。

狐の少女が、大樹が食べる速度を合わせる瞬間を。

努力が無駄ではなかったことに、うれしかった大樹だった。

向こうにいる少女のことに集中しすぎて、焼肉のうまみをちゃんと味わえなかった大樹だった。


(可笑しいな...食卓の上にある料理の中で、肉がなくなる速さのわりに、ご飯と野菜はあまり減っていない)

「ご・は・ん、や・さ・い、も食えよ。体にいいから」

食べ物の名前を綴りつつ、大樹は少女のお椀にご飯とともに茹でたキャベツを盛り上げる。

(単音ずつ言うのは効果があるかどうかわからないが、一応...)

少女は大樹が言ったことを理解できなかったかもしれないが、彼が置いたお椀にある物はなにか、彼女は理解できる。

少女にとってはご飯や野菜など嫌いなんてないが、肉に比べると、優先度の低い食べ物である。

だから、肉がまだ残っているのに、白米と野菜で詰められたお椀が目の前に置かれて、少女はお椀と大樹の間で、目やり場を何度も行ったり来たりさせた。

どういう意味って言いそうな目だった。

でも美味しく召し上がる大樹の姿をしばらく見て、彼女も従って、やがて美味しく食べた。

さらに、彼女は大樹のように箸を使おうとした。

悲しいことに、数秒もかからず、箸が彼女の不器用な指から床に落ち、彼女は素手で食べることに戻った。


(時間がきっとかかるに違いないけど、やっぱり、彼女が言葉を知らなくても、ジェスチャで表せば、なんとなく伝わりそう)

新しい発見がいくつかできて、大樹は安心した。

これで、彼女との会話は完全に不可能ではないから。

さらに、昨日より彼女は表情を緩めたっぽい。ほんの少しだけ。

ほんの少しだけだったが、大樹からすると、かなり大きな進展だった。


そして、大樹は思った。

もしも運が良ければ、彼女はいつか人の言葉を学んで、大樹と自然に話し合えるかも。

それで、彼女は大樹にすべての経緯を教えてくれるかも。

彼女にとって、大樹の第一印象とか。

大樹に会う前に、何が起きたかとか。

なんでいつも話せなかったとか。

この獣人の中心に回る謎が全部解ける。彼女が話せることだけで。

ただ食事中に予報もなく浮上した発想だったが、現実になったらいいな、と大樹は思った。


残念ながら、大樹は直面する少女の様子を窺うことにすると...

...彼の期待に反して、その視線の先にいるのは、口の周辺に数粒のご飯がべたつき、食卓の上に落ちるご飯を一粒ずつ拾って口に入れる狐の少女だった。


予想外ではないのに、二十歳の青年はその考えに長い溜息をつかざるを得なかった。


(その日まで、まだ遠いね)


最後まで読んでくれてありがとう。

いや~この話を書くには、僕はウサギの下処理をググるしたよ~

ちょっとグロテスクだった。

まあ~、狐の娘が美味しい焼肉を召し上がれば、それでいい。

彼女の名前はいつ出るんだろうね~

この先の一話か、二話かもよ。

また次話で~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ