その② まだ続く夜
深夜に、同じ家屋の下で、青年の主人公と狐の少女の展開はどうなるか、ゆっくり楽しんでください~
輝くお月様は星のない夜空に浮かんで、あらゆる物のお休みの時間を静かに見守り続ける。
この落ち着く時間帯に、一日の疲れを取るために、眠りに落ちる人々に対して、唯一の青年と少女の二人は目を閉じる意図がない。
石山大樹という、自然好きな青年。
大樹の住宅に迷い込んだ狐の少女。
大樹の手にある新鮮なリンゴに注目を取られて、体がほぼ丸出しの少女は一歩ずつ、木の扉を通る。
裸足で見たことない物が溢れる、変わった環境に踏み入って、好奇心があんまりすぎたおかげで、少女は誘惑に勝て、リンゴから目を移せた。
足を止めず、家の奥へ徐々に後ろ歩きする大樹の存在をいったん忘れ、彼女は戸惑って、玄関でぼうっとする。
さっきと変わらず、彼女の緑玉の両眼は大きく開き、大樹の住む家を見通す。
外にある幻想的で魅惑的な夜景より、彼の内室は居心地の良く、暖かく、ぼんやりする雰囲気を持つ。
天井の真ん中に、一つの電球が淡いオレンジ色を放って、木造のインテリアを灯す。
大樹宅にある光は弱々しく、宅内にいる人と物の影を落とし、不安定だが、この人力で物を動かす時代では、よっぽど十分だ。
玄関ドアからまっすぐに向けば、床と接する料理場が見える。
三つの枝が支え合って、大きくて真っ黒なお鍋を空中に持ち上げる。
その鍋の下に、複数の木炭が置いてある。
あまり広くではないが、あそこは、大樹が毎日の飯を炊きこんだり、水を沸かしたるする所だろう。
家の奥に、一人分のベッドがある。大樹が毎晩横になる所。
そのすぐ隣に、大樹が親しんだ机と椅子がある。窓を直面して、彼が外の景色を眺めながら趣味を楽しめる所。
そして、壁に沿って寄りかかるのは、天井まで届く複数の棚。たくましく仕上げられて、大樹が採集した植物や薬草を持つ瓶などを抱える大事な家具。
あと、この空間の中心に安置されるのは素朴な食卓だ。
今、大樹がリンゴを持ち上げながら、向かっていている所。
「ほら、おいで。こっちおいで」
慎重に食卓の向こうへ歩み、大樹は自分より何十センチも低く、呆然としている少女の方向へ目を緩めず、餌なるリンゴを机の上に置き、両手をゆらゆらと振って、彼女の注目を取り戻そうとする。
大樹の誘いに答えて、少女はこの家に入る本来の目的を思い出し、勢いよく食卓へ飛びかかった。
狐の美少女の身を隠す、一枚の布は髪の毛とともに気圧に押さえられ、後ろに引っ張れる。
獲物を襲うように、少女は空中に滑らかな曲線を引き、扉から全身全霊で飛んでくる。
食事に使われる机と隣に、大樹との反対側に着地し、少女はドスンと静寂な空間を壊し、家を少し揺らした。
驚かされ、「うわ!」とこぼした大樹に落ち着く時間を許さず、少女は手早く、リンゴを取った。
机を、身を隠すカバーにして、少女は重心を下げたものの、上端にちょこんと白く染まる耳を隠すことを忘れた。
ついでに、大樹へ見上げる視線を送る。
しかし、甘やかしてほしい、上目遣いではなく、警戒心をまだ解いていない視線だった。
美味しそうなリンゴを連続に噛みつきながら、狐の少女はブラシュアップされていない尻尾を身近に巻く。
大樹に対して、いつもと変わらない不愛想な顔を出し、完全に防備の姿勢を構えている。
「びっくりした...」
大樹は鼓動の速さを調節し、気に入る静かさを乱した狐の少女をまた見つめる。
「まいったな、俺。小さい女の子に脅かされるなんて」
溜息をつき、彼は椅子に腰を下ろす。
両手をあご杖にし、思考に沈む。
(なんで、ここに獣人がいる?)
数十年前から、獣人の発覚の情報が来なくなり、敵に勝った事実を記念するように、人類は毎年大きいお祝いしたりしてきた。
生き残る生存者がいるかもしれないが、大部分の皆さんはその可能性を無視し、ありふれた生活を送る。
でも、その可能性が正しかったら、獣人という種族はこの世にいる。
人が探検しにくい森や山の奥深くで、人類が支配するこの世界の中にある秘密の場所でゼロから初めて、生息しているに違いない。
この狐の娘がここにいるのは否定できない証拠だ。
となると、この周辺、とっくに近くにある森に、ほかの獣人がいる線もある。
しかし、...
(なんで、この子は一人?)
いつでも発覚され、追及されかねない現状では、団結したほうがいいんじゃない?
互いに支えて、障害を乗り越えて、人類の目から隠し合う。
あと、一人より、多いほうが心強い。
けど、この子は単独。
捨てられたなのか、集団から剥がされたなのか、俺はわからない。
獣人より、獣らしき。
一枚の布しか持っていない、無防備で、ある意味で勇敢な少女。
彼女がここまでに辿り着く経緯は多分永遠に解けない謎かもしれない。
「はぁ...」
このため息は何回目だろうか、と自分を尋ねる大樹だった。
次の行動はどうするかと思ったら、大樹は答えがわかった。
というより、食卓の向こうにいる彼女は大樹にヒントをあげた。
ぐぅぅぅぅぅ!
ほとんど食べ尽くしたリンゴを持つ少女の手はいきなり握力をなくした。
芯しか残っていないリンゴは床に落ち転がる。
満足されていないらしく、室内で響く音を鳴らしたお腹に、少女は下を向いて、両手を優しく置く。
立っていた狐耳が凹んで、彼女は舌なめずりし、まだ足りないと無意識に示す。
そんな彼女を見て、大樹は笑い声をこぼした。
真剣に悩んだ顔もやわらかくなった。
「お腹が空いているだろう?そこに待っていて。俺はご飯を取りに行くから」
彼は立ち上がって、料理場へ足を運ぶ。
さっきと違って、そこにいる小柄な侵入者に対する態度は180度に変わった。
彼の足元にあった慎重さはもうない。
不自然に凝った動きの手、なにか心配する姿勢、全部過去の話になった。
なぜなら、目の前にいた少女は食べさせるべきな迷子にしか見えなかった。
大樹はお鍋の蓋を開けて、中に余ってある白いごはんを陶器のお椀に移し始める。
その過程の間、親切な彼から目を一秒も離れなかったのは、気長に待つ少女だった。
彼を何するつもりか、彼女は全く見当つかないんだが、彼の緩めた雰囲気からすると、危ないことしないとわかる。
さらに、大樹がこぼした笑い声と表情。
言葉を知らない、野獣のような彼女だとしても、その行動の意味も理解できる。
「贅沢ではないけど、これで我慢してくれ。君が食った貯蔵するものは、今の時に使うものではないから。こう見えて、俺はお金持ちじゃないからね」
半分しか埋まっていないお椀を机の上に置き、大樹はそう言った。
彼は嘘をつくなんてない。
家の後ろにある貯蔵庫は冬に使うだけではなく、商品として村人たちに売ったり交換したりする、石山家庭にて大事な稼ぎの道である。
どんなに少女を満腹で居させたくても、冬を過ごせなければ意味がない。
あと、彼はこう見えてって言った。
客観的に見ると、単色なアウトフィットを身につける大樹は、通常の農家さんやら、木こりやら、その辺の類にしか見えない。
確かに、筋肉がついていて、賢い男性、大切な人材だが、結論を出すと、大樹は一般人だ。人混みが苦手で自然好きすぎの部分を省けたら。
秋の夜に、長い間放置されて冷めたご飯をちゃんと観察できるよう、ずっと床にいた狐の少女は椅子に登った。
白くて、いいにおいもせず、普通のご飯に、彼女は不思議な視線を送る。
鼻でクンクンと嗅いで、指で触感を試した末に、彼女は左手でお椀を持ち上げ、右手でご飯を口に入れ込む。
最初は一粒。
それから、数粒。
そして、味が薄い飯を無邪気に楽しむ少女はどんどんお椀の中身をきれいにする。
その一方、大樹はただ無言で見守ってあげた。
いつ間に、彼は思わずにゃついた。
(獣人って、意外と単純な面もあるな...)
俺、村人から獣人に関する知識を教わった。
獣人は悪、人類は善。
獣人は戦争好きで、人類は平和好き。
獣人は人類を滅ぼそうとしたから、人類は自己防衛という理屈で反撃し、獣人を滅ぼす権利がある。
もしも、獣人に遭遇したら、直ちに逃げて、政権に連絡すること。
獣人は危険だからって。
でも、この子を見るたびに、俺は教わったことに再び従わざるを得ない。
多分、俺が、いや、皆が知っている獣人たちはただ虚構な話に過ぎないって。
大樹からもらった飯を食べ終えて、少女はまた理解しがたい動きをし始める。
きょろきょろし、なにか捜すように、視線を四方八方へ向ける。
「ふーん?不満か?ご飯だったら、もうないよ」
彼女に通じるはずがないとわかっているのに、大樹はつい言ってしまう。
残念ながら、少女が求めるものはご飯ではない。食べ物でもない。
数秒ごとに、少女は唇をなめて、乾燥した表面を潤す。
果実より、ご飯にて水分がゼロに近いため、喉を乾いている少女だった。
「あっ、なるほどね。ちょっと待って」
ようやく問題を解いた大樹は水を一杯取って、彼女の前に置いた。
カップが机に当たって、一刻もかからず、少女は素早く手にして、ゴクゴク飲み干した。
(ちょっと子供らしくて、可愛らしいな)
あっ、ほっぺに一粒のご飯が...
無意識に、大樹は手を伸ばして、取ろうとしたが、...
ぐっ—————
唸れた。
少女は許される距離を侵す直前の大樹に、ぐっ———と唸れた。
相手が後退するように、顔をこじらせて、威嚇を放つ、獣にある典型的な反応。
なれない者に勝手に触れられるって、獣どころか、人間でもいや。
この際において、獣と人間の間にある違いは、獣は音を鳴らす一方、人間は言葉を使う、または物理的に打撃する。
狐の娘の合図に気づき、彼女をそれ以上怒らせないように、大樹は手をぐっと戻した。
危ないって。
野生する彼女を対応するのは本当難しい。
植物の知識の分野では、大樹はベテランかもしれないが、動物の方では、彼は常識を持つレベルの素人に過ぎない。
月がより高く昇り、夜が更ける。
このままじゃ、起き続けるのもいかない、と大樹は考えた。
明日、彼は早起きし、村へ行き、買い物したり、品物を売ったりしなければならないから。
ここは村から少々離れているから、大樹は出発時間の手前に数十分を置かないと。
でも、狐の少女のことについて、何もせず眠りにつくのもいられない。
じっとする彼女に対して、大樹はただ天井を仰いで、悩んだ。
(どうしよう...)
彼女にやってあげることはなくなった。
彼女もある程度に満足しているし。
ん...
もともと、獣人でまだ若くて言葉知らない少女に心配し、あまり考えず、家の中に誘惑し誘いこんだが、今更振り返ると、適切な行動ではなかったかもしれない。
今まで、彼女は一人で生き続けられるなら、これからも、生き続けられる。
さらに、彼女が一人しかいないのは俺が勝手に押し付けたこと。もしも、彼女は親がいたら、俺の行動は誘拐になる。俺、親と子供を別れさせる趣味がない。
言葉をまだ知らない人に対応するのも簡単でもない。
最後に、...
ここまで来る人が確かに少ないが、村人の誰かに発覚されたら、彼女は追及されちゃう。そして、俺も面倒なことに巻き込まれる。
だから、俺は目の前に大人しく待っていた少女に言うべきことを言った。
「これで満足?君は君の居場所に戻った方がいいよ」
緑玉の瞳は俺の目と合わせる。
「俺も、俺の居場所に居ないといけないんだ」
無感情で小さな顔。
「誰か君を見つけたら、君だけではなく、俺も困るから、...」
かすかな首の捻り。
「だから、この家を出てほしい」
言いたいことを言い終えて、俺はただ優しく微笑んだ。
彼女がちっとも理解できるはずがないと、俺は思った。
やりたくないが、やらなければならない時に、やるしかない。
しかし、次の展開を、俺は予想しなかった。
狐の耳と尻尾を持つ少女は、俺より早く立ち上がり、完全に閉まっていない扉へ走って、家を出した。
まるで、俺の言葉が通じたのようだった。
扉を通して、軒下まで歩いて、俺は両手両足で森へ走る彼女の背中を見送る。
月様に照らされた草原の中で、風とともに、金色の髪の毛が踊り、小さな侵入者の背中が夜景に囲まれる森へ消えていく。
できる限り、両方の視点からストーリーを合理的に書きました。大変でしたが、ストーリーに引き込まれて心も落ち着いて、なんか楽しかった。
狐の少女はもう消えたわけではないんですから、ご心配しないでください。(まだ第二話ですしwww)
お続きは次話で、お待ちしております!
最後まで読んでくれて、ありがとうございます!