その① ある夜中の出会い
ゆら~り、ゆる~りとほのぼの物語を進めたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
昔々、人類と獣人の間で、ある大きな戦争は起きた。
人類側では何万人の命が落ち、何十村が燃やされ、大きな被害が出た。
人々は家族を失い、財産を奪われ、大変な生活を送らざるを得なかった。
しかし、人類は勝った。
その結果、獣人はほぼ絶滅し、この世で見えなくなった。
居場所を無くし、残りの獣人の人数は時間の流れとともに、少しずつ削られていく。
数百年後、人類は長い長い繁栄の時期を過ごしていく一方、獣人という種族はもう消されたとよく言われている。
もう存在しないはずだが、...
...目につかないどこかの場所で、最後の獣人の子孫たちが人類の動きを観察しながら、慎重に身を隠し、静かに生きているという噂はまだ消えていない。
空は暗闇を身につけ、雲を散らし、輝く月様を強調する。
遠く離れる月様は暗い地界を照らし、夜回りの人を導く。
今日の夜空はきれい。
秋の涼しい風が吹き、草原の表面でゆらゆらと走る波と共に、眺める人の目を奪う。
この美しい夜景の真ん中に、小さな木造住宅が立っていて、窓から寂しい光を放っていた。
人混みの村から離れ、穏やかな自然と友になる住宅でした。
そして、その単独の建物の主は石山大樹という、二十歳の男の人。
大樹はべつに村人に嫌われているではない。むしろ、愛されている男だ。
働き屋で、人をよく手伝って、会話すると、とびっきり優しい男の人だ。
老若男女問わず、石山大樹へ敵意を向ける意思は一切ない。
村の女の子から、恋の誘いを何度もされたが、大樹は全部微笑みながら、丁寧に断った。
恋人ができる機会が少なくないのに、大樹はまだ独身男性で、一人暮らししている。
彼はただ自然好き過ぎて、できるだけ自然に近い場所で一生住み続けたいだけである。
村人たちも彼の選択を尊重し、彼を自由にいさせる。
村の中で、大樹がそう望むなら、それでいいという考えはほぼ一致している。
今夜、大樹はいつもより寝るのが遅い。
なぜかというと、彼は昨日近くの森の中で探った薬草を眺めつつ、特徴や効能などをメモしているからだ。
机の上に複数の花と薬草が並び、男性の大きな手に丁寧に扱われ、研究されている。
弱々しく無防備な植物たちに対して、研究側の大樹は愛用の手帳を抱えながら、文字で空白を素早く埋めている。
自然をもっと理解し、人々に役立つことができるように、大樹は普通の人が知らない。こういう知識を積む。
さらに、森で歩き回って、自然と触れ合うのが好きだから、趣味としてやっていると言っても正解だ。
長い時間が経ったせいで、頑張り屋さんの大樹でも集中力が切れる。
あと、同じ場所にじっとすることも背中に悪いので、まだ若い青年である、この住宅の主は息抜きすることにした。
「はぁ~、疲れた、疲れた」と言いながら、大樹はため息をつく。
同時に、愛用する手帳も閉じて、机の上に置く。
席から立ち上がって、彼は体と頭を左右動かして、ストレッチングし始める。
背中をまっすぐ伸ばし、両手を合わせて天井を向けて上げる。
肩を始め、体の各地で凝った関節がぽきぽきと音を鳴らす。
結果的には、この軽い運動は効果的だった。
全身が柔軟性を少し取り戻したおかげで、大樹の顔に気持ちよく癒された表情が明瞭に書かれる。
「丁度良く、今夜は満月そうだし、外で休憩しようか」
深呼吸した後、大樹はそう言って、扉へ足を運んだ。
外の世界へ踏み出したとたん、夜の風が肌にぶつかって、涼しさを伝う。
絵のような風景が大樹の視界に入って、彼の疲れた心を癒す。
遠くからあらゆるものを見守る、遥かな月様も大樹をかすかに照らし、彼を歓迎する。
「こんなに美しい景色がすぐそばにありながら、家の中で引きこもって、体を休ませるなんて愚かな行動かもね」
夜空を見上げて、大樹は頭を空っぽにする。
複雑で余計なことを考えず、目の前に広がる美しさを堪能する青年は一人で笑みを浮かべながら、軒下に立ち止まっていた。
夜景に夢中になって、いつの間に、大樹は感覚が鈍感され、周りの環境の認識力が下がってしまった。
だから、彼は家の後ろからガタガタする音に気付かなかった。
ガチャン!
突如に響く何かが割れる音を聞き、大樹は音源の方向へ頭をぐっと振る。
「今はなんだ?また、ネズミたちかな」という彼の疑問だった。
いや、そうはずがない。
確かに家の後ろに、耕すのも狩るのも難しくなる冬のために、食糧を貯蔵する壺やバスケットがいくつか置いてあるが、全部重くて、蓋があって、縄で硬く絞られたから、ネズミのような小動物は自力で転がしたり、解いたりできるはずがない。
さらに、ここは俺しかいない平野だから、侵入者が来た可能性は思えられない。
となると、...
脳内で速く推理し、大樹は結論をだした。
「狼とか虎とか...」と低いトーンで言う大樹の表情は暗くなり、これは深刻な状況かもしれないと告げる。
彼にとって、これは初めての事例ではない。
理由は彼の住む場所の近くに、森があるから。
日中の間、普段安全に探検したり、薬草を取ったりできる森であれば、夜に獲物を捜すために動く夜行性の動物たちが生息する森でもある。
時々森から出て、人や家畜を襲ったりすることもある。狼とっくに。
もちろん、家に戻って、何も聞かなかったことにしても策なんだが、食糧を無くすと、将来困るから、大樹は勇ましく、その音を鳴らした犯人を追い払うことに決めた。
危険な動物から身を守れるように、大樹は武器を作っておいた。
彼は速やかに家に戻って、毎日鋭く研がれた槍を取り握って、現場へ向かった。
気配を潜め、音を立てずに、大樹は家の正面から右側の壁を沿って歩く。
現場に近づくにつれて、なにかが何かを食ってる音が大きくなる。
ガツガツと。
緊張感が全身を走り、大樹は口でたまる唾をごっくりと飲む。
また深呼吸して、二十歳になった青年は手元にある槍を強く握る。
そして、勇敢に飛び出して、「ぎゃあ!」と大声で脅かし、相手に槍を向けた。
大樹の視界に迫ったのは彼の予想外だった。
彼の顔の上に、緊張感が消え、その代わりに呆然する色だった。
不細工で単色な布をまとい、ほぼ全裸で、リンゴを口の中に入れている少女の一人がいた。
しゃがんでいた彼女は大樹の叫びに気づき、ばっと振り返った。
口元と頬にリンゴの皮がついているものの、彼女はあまり気にしていない。
頭に寝ぐせが多く、荒く、長く、黄色い髪の毛が伸びて、まるで獣のようだ。
明るく光る緑色の両眼が丸く、大きく開いてこの家の主に固定された。
夜中に現れる、謎の女の子はちっとも動かず、大樹を見つめ続ける。
彼女の表現において、困惑や無邪気さや好奇心など、様々な感情が混じり合う。
見たことないものを見つける眺めだった。
しかし、大樹をより戸惑わせるのは彼女の頭と後ろの部分だった。
金色で端にちょっこんとホワイトな毛に包まれる両耳と尻尾。
これは、...獣人の特徴。
学んだ常識を探りだして、大樹は彼女は人間ではないとわかった。
獣の身体の一部を有し、体質が優れる獣人。
数百年前に人類と戦って、滅びたとされている種族。
類によって、穏やかな草食系の獣人がいれば、凶暴な肉食系の獣人もいる。
彼女の外見からすると、間違いなく...
狐の獣人だ。
狐は肉食に近い、雑食とよく言われるが、彼女の様子からすると、襲う意図がないらしい。
(どうしよう?)
普段の狼などだったら、追い払う、または殺すが、彼女は人の姿を大部分持っていて、どう見ても迷った少女しか見えない。
でも、獣人は人類の敵だった、追及しなければ...
いや、もう起きたことだし、過去を掘り返す必要がない。
さらに、その瞳、その顔...
彼女は森育ちの獣人、いや人間みたい?
無邪気で、ピュアで汚されていない、無罪な存在...
自然の友と自称する俺は、自然の中で生きる彼女の命を奪う権利がある?
彼女は多分、皆と同じくこの世で生き続けられるように、頑張っているんだ。
同じく...
大樹はどうするつもりか迷って、一時的に何もせず、槍を半狐の彼女に向けたままだった。
彼女はなんとなく、大樹が持っている槍は危険物であるとわかって、警戒心を深めた。
見たことないものが危ないかどうか一瞬でわかるのは、獣人にある第六感かも。
侵入者から放つ雰囲気の異変に気づき、大樹は慌てて、槍を下げた。
彼は溜息をつき、片手で頭を抱えながら呟く。
「俺、無防備な少女に何やってるんだ、かっこ悪い...」
どうやら、この家の青年は侵入者を許すと判断したようだ。
そして、大樹は彼女と同じ高さにしゃがんで、緑色の目と合わせて、言い分を続ける。
「ほら、俺は襲わないから、怖がらないで。君の名前は?」
同時に、大樹は彼女をこれ以上混乱させないために、槍を地面にゆっくりと落とした後、何もない手のひらを見せる。
...
返事がない。
獣人の彼女は表情が変わらず、バチバチする両目で大樹の様子をいちいち観察した。
首をひねて、大樹の質問を理解できると見えない。
でも、大樹の動きは全く通じなかったと言うのも正しくない。
危険物と認定された槍が大樹の手から離れた時、銀色の狐の彼女は少し安心したと見える。
「やっぱり、人の言葉知らないか...」
今回予想外ではなかったが、大樹はまた長い溜息を吐かざるを得なかった。
言葉がわからなかったら、どうやって通じ合う?
下手に接したら、絶対に拒否され、望ましくない状況になりかねない。
どうすれば、と大樹はまた思考の流れに落ちる。
ところが、彼が名案を思いついたのは十秒に及ばなかった。
大樹は近くに転がってある一個のリンゴを持ち上げ、狐の少女の前に差し出した。
野獣を手なずけてペットにする、レッソン101。
餌で誘惑する。
こうやって、どんなに凶暴な野獣だとしても、落とせる。
今お腹がすいている彼女とっくに。
美味しい赤い果実に魅せられ、彼女は何気なく体を前に傾げて、大樹からリンゴを奪おうとするが、彼は彼女の指が届ける寸前に、少しずつ立ち上がりながら、後ずさる。
餌がどこか行ってしまうと心配して、狐の少女は大樹の動きを従う。
さっきから地面に体を低く下げたため、彼女の身長が測れなかった。
二十歳の大樹と比べたら、彼女は頭の一個分半、背が低い。
暗い家の後ろから出て、月様に照らされ、彼女の肌は闇に満ちる夜空に反して、白くて、滑らかで、いつでも傷つきそうで、見る人の守る欲望を引き出す。
寝ぐせだらけの頭は秋の風に当たって、草原の波を合わせて揺れる。
真っ黒の空を背景にして、緑玉のよう瞳から、神秘的な光がかすかに輝く。
両耳は前に向けて、時々びくびくし、後ろの尻尾は左右ゆらゆらと振る。
大樹の足跡をなぞる狐の娘は美しくて、弱くて、今にも消えそうやら、夜景に溶けそうやら、幻のようだった。
少しずつ、人間の青年と獣人の少女は木造の建物に入った。
この夜に。
この屋根の下で。
大樹も、狐の娘もわからず。
お二人の関係から生まれた物語が始まったのである。
どうですか。
これから、主人公の生活はもとより、村もこの狐の娘に左右されます。
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次話で待ちますね。