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はぐれスライム逃亡記  作者: 夕月 遥
第一章・臆病風に誘われて
7/72

LV7

〜〜〜


 鬼ごっこが始まって十数分。

「ね、ぇっね。ちょとまっ、てょお……っぐ。ほらほらあ、これぇ。みでみてょお」

 だいぶスタミナも尽きてきたのか膝を震わせ、息も絶え絶えな女冒険者の姿がそこにあった。

 その手には腰の裏の道具袋か何処かから取り出したのか、魔物が逃げにくくなったり餌付けできたりするという骨付きの成型肉が握られている。

 まあ、ビットラビット辺りなら十分喰い付くと思うが、今の俺には幸腹の指輪があるから食事は必要なさそうだしなあ。

 ――いやいやまてまて、逆に今、俺があの肉にまったく関心を示さなかったら指輪を持っているかもしれないと思われるか?

 その場合、今は逃げ切れてもこの話が広まれば俺に対する大規模な狩猟隊が組まれてしまう可能性も考えるべきだろうか。だからといって口止めというのも……ううむ、仕方ない。

 スタミナ切れかとうとう座り込もうとする女冒険者に向かって反転して走り出し、すれ違いざまにその手の肉を奪い取る――つもりだった。

「かかったあ!」

 突如、肉のあったはずの位置に道具袋が口を開けて現れ、視界が暗転する。出ようとした時にはもうキツく袋は縛られてしまったらしく、つまりは閉じ込められたらしい。

「ふっふふーん。釣れたわねえ、シルバースライムちゃ〜ん。うふ、ぐふふっ。つ〜かま〜えちゃったあ〜ん」

 踊っているのか振り回されているのか、見えない天地が揺らぎ、声が前後へ近づいては離れる。

 いったいどこにそんな体力が残っていたのかと思ったが、なるほど演技だったとうことか。妙に手慣れた感じから、同じように逃げるビットラビットを捕獲していた可能性もある。

 さて、俺の防御力ならそうそう倒されたりしないと思うが、ここから逃げるとしても、俺の火球魔法でこの袋は焼き払えるだろうか。

 外から聞こえてくる声のくぐもり方からしてそこそこ厚めで頑丈そうだ。冒険者用の道具袋というのはこんなものかもしれない。

 何か役に立ちそうなものが一緒に入れられてないかなとも思ったが、袋の内面が丈夫そうな革製であろう情報と小さな肉の欠片以外は特に触れられる範囲での収穫は無かった。

 おそらくあの肉を入れていたのがこの革袋で、ふむふむ……うん。指輪のような装備品は取り込んでもそのままのようだが、水や肉などは消化が始まってしまうらしい。

 この袋を食べるのは……ギリ無理な気がする。それにしてもこの肉。攻略本で見た時から旨そうだと思っていたけれど、実際に旨い。

 なんというか、飢えからとは少し違うこの渇望感。欠片だけでこれならば本体はどんな様子なのだろうか、これは魔物が餌付けられるのも納得である。

「ねえねえ、シルバースライムちゃん」

 不思議とその声は優しげなものを漂わせ、一瞬これから命を奪おうとする罪悪感からと思いかけたが、もっと純粋に――

「私達。お友達にならない?」

 ううん〜? えっと、あれえ?

 それは今までの喧騒を忘れさせるような口調。強制や脅迫するような圧力は感じられず、ほんの少しだけ開けられた革袋の口からは、美味しそうな肉塊の匂いが漂って来るのであった。

 餌付けられるつもりは、ない。別にコレを食べる必要がないのはわかってるけど、頭では理解しているんだけ〜れ〜ど〜も〜っ!



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