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はぐれスライム逃亡記  作者: 夕月 遥
第一章・臆病風に誘われて
2/72

LV2

〜〜〜


 思えば逃げてばかりの人生で、遊びも勉強も親兄弟や親戚に同級生、進路やバイトや恋愛事からも逃げることを選んできた。

 そうして最後には、生きることからも逃げたくなっていた気がする……のだが。

 いつの間にやら、見知らぬ場所で目覚め、見ず知らずの連中に命を狙われ、ひとまず逃げるしかない状況に置かれてしまっている。


 ――シルバースライムとして。


 まったく、どうしてこうなった。いや、見様によっては似合いの末路。なのだろうか。

 なんにしても、今は逃げることにしよう。この夢……追っ手からも。現実からも。

 この身体がシルバースライムのそれでゲームの仕様と同じならば、そう簡単に害されなくとも叩かれ続ければいずれは倒されるだろう。

 別に追っ手を倒す手段が無いわけではない。

 ただ、俺の経験上。この手の、問答無用で暴力を振るう連中は下手に反撃して追い詰めたりすると、とにかく面倒臭い事になる。

 具体的には逆ギレしてさらなる暴力に訴えるか、不利になった途端暴力反対を周囲に訴えて被害者面するか。

 なので真面目に相手にしないのが一番楽で、かつ相手の体力ないし精神を削りやすい対抗手段なのだ。

 さて、後はどうやって撒くかだが……うん。少し、思いついた事を試してみるのも悪くないはずだ。

 命懸けの鬼ごっこからスタミナ切れで脱落していく兵士達の隙を見て建物の影に隠れ、記憶の中のシルバースライムが使えた下級火球魔法を試してみる。

『――――!』

 冬の虎狩笛のような、掠れた金属音と共に視界の多くが橙の光に遮られ、やがてテニスボール大の火球へと収束していった。

 これが、魔法。それはあまりにもあっけなく、まるで手持ち花火に火を点けた時のような小さな感動。だが、その余韻に浸るのはもう少し後の方がいいだろう。

 どうやらこんな詠唱でも問題はなく、そしてこの火の玉も自分の意思に従うように動かせるらしいので、とりあえず外に飛び出しながら追っ手の一人にぶつけてみる。

 それは顔に当たる直前、甲冑の小手によって防がれたものの、赤熱によって剣を落とす程度には痛みを与えられたらしい。

 少しだけ、嫌な焦げ臭さが広がる。ああ……痛覚の方は未だ試せていないが、嗅覚はしっかり働いているらしい。鼻、なかったけど。

 どうやら、そろそろ認めたほうがいいようだ。これは、夢よりもむしろ現実に近い事を。



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