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7/5(木)その5:飛んできたのはロリっ子ロボ

 さてと、5分たったかな?

 浩之から借りた『タイガークエスト』のLV上げもようやくめどが付いた…現在午前1時。

 俺は夜食のカップうどんを食べるべく、のり付けされたふたを開けようとしていた。

 三流料亭を営むうちは、母さんの方針で、カップめんやレトルト食品といった類のジャンクフードは家では食べられないことになっている。

 もし食べるんであっても、母さんのいない間か今みたいな深夜や早朝くらいしかチャンスはない。

 しかし、自分でうどんや焼きそばを作る分(しかも自分で麺を打つ場合)には構わないらしい。なんだそりゃ。

 てなわけで、母も眠る丑三つ時……ではないが、この時分に夜食のきつねうどんを、てな運びとなったのだ。

「うまそー」

 ふたを開けると、思わず声が出る。

「ほんじゃ。いただきまーす」

 口を使って割り箸を割った、そのときだった。

「すみませぇ〜ん」

 情けない声がどこからか聞こえてきた。

 いったいどっからだ? それに声のほうから飛行機が飛んでくるような音もする。

「下からじゃない…」

 1階で飛行機が飛んでたらそれはそれでおもしろいけど。

 とりあえず、下じゃないとすれば…外か?

 カップめんをまずは置き、カーテンを開け、外の様子を見ようとすると――。


「うわわああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 キーの高い叫びを子守唄に、そのまま意識が遠のいていく。


「う〜〜ん」

 視界がぼやけてる。

 ここは、俺の部屋。だよな? なんかススが壁についてるけど、これなんだ?

「何とか……生きてるか…よかった……」

 謎の爆発に巻き込まれながらも生き残った自分を褒めてやりたい! 

 そこの女の子も外傷はないみたいでな、よかったよかった。

 ん? て、オイ!!

 じゃなくてなんで部屋で爆発? しかもこの子誰よ?

「誰だよ、あんた! 起きろって!」

 ぴったりとした青のボディスーツをまとった女の子。ていっても、ほんとにちっさい小学生くらいの少女が俺の部屋で気絶していた。

 しかも横にはSF映画並みのごっついエンジンが。

「そりゃねーよ…」

 好奇心も手伝って、ゆっくりとそこに近づいていく。

「モビルスーツでもこんなんしょってねーぞ?」

 よく見ると、そのエンジンにはなにやらタグが付いていた。しかも修学旅行なんかでカバンに付ける名札みたいなやつ。

「なになに……。M、A、R、I、N、E」

 MARIN−E? なんかの名前か?

「マ、リ、ネ?」

 それがこの子の名前かな? まあカワイイ子ではあるんだけどさ。

 しかしこんなとこで気絶しっぱなし、てのもマズいよな?

「おーい。起きろ? 風邪引くぞ?」

 ゆさゆさとマリネ(仮称)を揺すってみるものの、反応はまるで無し。しかし、小さく息はしているようなので特に慌てることもないか。

 でも、このエンジン?は邪魔だな…。俺の部屋が狭いわけじゃないけど、やっぱり結構なスペースをとっているのははっきりしている。

「先に片付けるか…」

 こんな女の子がしょっていたんだから、軽いもんだろう。

 そう高をくくっていた俺が馬鹿だった。

「うおッッッ!!」

 一気にこの星の重力を感じる。

「なんで、こんなん、背中に、しょえるんだよ…くそ、おもっ」

 たかだか2メートルくらいの移動なのに、終わったときには肩で息をするわ、滝のように汗を流すわ、散々だった。

 さすがにバタバタしたからな。これでこの子も起きるだろう。

「起きろ〜」

 今度は頬をぺちぺちと叩いてみる。

 しかし、まだ眠れる森の少女のままだ。

 軽くムカついてきた。

「起きろ! 起きないとキスしちゃうぞ?」

 小学生みたいな子にこんなこと言う俺は、日付も変わったことで無駄にハイになってるんだろうか?

(作者注:12歳以下へのみだらな行為は、双方の合意・非合意を問わずして法律により罰せられます。

 その一言が聞こえたのかどうかは知らないが、ようやくその子は起きる気配を見せた。

「う〜ん」

「ようやく起きたか?」

 横に俺の顔を見つけ、彼女は一瞬硬直した。そりゃいきなり目覚めたら知らねー男が見つめてるんだからな。俺がその立場でもそうする。

「あの…」

 外見通りの幼い声。アイドル好きな安倍なら惚れる位のロリ〜な声。

「ん?」

「ここは俺の部屋」

 目をぱちくりさせる彼女に合わせて、俺までもが慌てる必要はない。

「で、あの…私は?」

「なんだっけな、そうそう『すみませーん』てな感じで叫んだかと思いきや、俺の部屋に突っ込んできたんだわ」

「それは、すみません…お騒がせしましたぁ」

 すぐさま起き上がり、深々と頭を下げられる。

「いやいや、そんな謝んなくてもさ…」

 こっちが逆に恐縮する。

「で、私が聞きたいのが…私は誰ですか?」

 はい?!

「いや。誰って…な?」

 俺が聞きたいわ! でもさっきのタグに…。

「マリネって書いてあったよな?」

 パァッと彼女の表情が明るくなる。

「マリネって言うんですね! いい名前ですね?」

 なんか会話が噛み合ってない気がするのは俺だけか?

 一人釈然としないところに、着メロが流れる。

「ん、チョイ待って?」

 待ち受け画面表示は…澄香?

「もしもし」

「和くん? どうしたの? さっきすごい音がしなかった? じゃなくて、窓ガラス完全に割れてるじゃない!」

 澄香の部屋と俺の部屋はちょうど真向かいになっている。なにかあった場合にはすぐに筒抜けだ。

「いや、なんでもない。ちょっとカップうどんが破裂しただけだ」

「なにバカな事言ってるの!? そんなわけないじゃない!」

 マズい。理由はどうあれ、女の子(しかもロリ)を深夜に部屋へ連れ込んだとなれば澄香の制裁は必死……。

「まあ、色々あったんだ。ほら澄香、お前そんなに朝強くないんだからさ、早く寝たらどうだ?」

 必死で言い訳を並べ立て、澄香の介入を阻止しようと最大限の努力をするものの…。

「あの、ちょっといいですか?」

 横の少女が俺の努力をぶち壊してくれる。

「……和くん?」

 冷たい一言。澄香ハイパーモードの起動が始まった。

「横に誰かいるよね?」

「いえ、そのようなことはけして…」

「いるよね?」

 有無を言わさぬ迫力。

「はい。」

 なんか涙が出てきた。

「今から行くからそのままで、ネ♪」

 そのまま、ケータイからはツーツーと音しか聞こえなくなった。

 今から国外逃亡でもしようかな…。

「あの…。ちょっといいですか? 聞きたいことがあるんですけど?」

「ああ、いいよ。なんでも聞いてくれ」

 5分後には俺の社会的地位はどうなることやら、考えたくもない。

「お名前を聞かせてほしいんです」

 名前…。ついでに辞世の句でも聞いてくんないかな。

「御倉和弘、16歳。ルックスはご覧の通りだ」

 途端、少女から妙な機械音が聞こえてきた。パソコンの中から聞こえてくるようなウィーンてな音。

「やっぱり、そうだ!」

「なに?」

「マリネの、幼馴染のお兄ちゃんだ!」

「なに?!」

 俺が仰天するのも無視して、マリネはいきなり飛びついてくる。もとい、抱きついてくる。

「今まで忘れててごめんね! マリネ、頭あんまりよくないから忘れてたよ!」

 マリネの顔を見ると、うっすらと目に涙が浮かんでいる。

「って、待てって、俺、君のことなんて知らな…」

 そこまで言うと、マリネの涙がうっすらからだいぶ量が増えていった。今にもあふれ出しそうな感じで一筋で流れるにまでいきそうな勢いだ。

「お兄ちゃん、ひどいよぉ。マリネのこと忘れちゃったの?」

 抱きついたまま、泣き言を並べるマリネ。

 んなこと言ったって、ほんとに知らねって。

 小さい頃の幼馴染みなんて澄香しか知らないしなあ。

「ちょっと待て。はい、まずは離れような」

 マリネを引き剥がそうとすると、今度は本格的にマリネは泣き出してしまった。

「うぐっ、そんなのないよぉ、せっかくまた会えたのにぃ、お兄ちゃんに忘れられるなんてぇ」

 あ〜あ。泣ーかした泣ーかしたと周りから非難されそうな感じでいっぱいになる。俺は澄香をしょっちゅう泣かしてたから、よく分かるのだ。

 しかし、ここは一度現状打破を図るしかない。

「な、とりあえず、俺が君の幼馴染みのお兄ちゃんかは置いといてな、まずは泣き止んで、な?」

「うぐっ、ひっく、ひっく」

 効果、ゼロ。

 まずいな…このままじゃ澄香が部屋に到着する。この光景を見られたら、命じゃ済まないかもしれない。

 御倉一族から白い目で見られることになるのは必定! 

「分かった! 俺は君のお兄ちゃんだ!」

 自分で何を言ったのか、その瞬間は分からなかった。とりあえず数分後に起こるであろう修羅場を回避したかったのだろう。

「ほんとに思い出した?」

「ああ、もちろんだ」

 できる限りのスマイルで答える。

「じゃぁ、証明して?」

「どうすりゃいい?」

 なんでもやったるわ!

「あのね、あのね」

 もったいぶらずにさっさと言え!

「……キス、してほしーな♪」

「ッッ!!!!」

 今度は俺が硬直する番だ。

「さっき、マリネが起きるときねぇ、『キスしちゃうぞ』って言ってたからぁ。ね、キスして☆」

 そんなん、赤くなった目でニッコリとしないで…。

「いや、いやあ、いやあああ、はっはあっは」

 もう何を言ってるのか自分で把握できてない。乾いた笑いだけが部屋に響く。

「お兄ちゃん、笑ってるぅ。お兄ちゃんも嬉しいんだね!」

 違うでしょうよ……引きつってるんでしょうが。

「じゃあ、いくよ。目つぶっててね♪」

 もうどーにでもしてください。

 横からガチャという音。一陣の生ぬるい風が流れてくる。

「ねえ、和く……」

 横目で、澄香が口を金魚みたいにパクパクさせてるのが確認できた。

 ――それからどのくらい経ったのだろう?

 一秒が一時間のようにも感じられる。

 しかし、無情にも時は動き出す。

「和くん…なにやってるのかな?」

 口パクから一転、絶対零度の笑顔。

 ああ、死にたい。



 その後、何があったって?

 俺の名誉のために、徹夜で澄香の説教をいただいたとだけとしておこう。


やりすぎだったでしょうか。

ロボットでロリでしかも「お兄ちゃん」。


実を言うと、このキャラ設定は私が行ったものではありません。高校の同級生が無理やり持ってきたものでして、それに私が細部の調整を行ったわけです。

なんで当初は使わない設定がちらほらと。出力10万馬力とか…。それなんて鉄腕?


さて、だいたいヒロインは出終わりました。

劇中内翌日、つまり6日は美紗緒の回です。

インチキ関西弁にどうぞお付き合いください。


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