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7/4(水)その1:死刑前の交渉

2時間目の国語が終わった休み時間。

俺は、裁判官でなおかつ死刑執行人であらせられる椎木女史のもとへと、歩みを進めていた。

勿論、先程考えていたワイロなど、用意出来ようはずも無い。

「失礼します」

「御倉か? 入っていいぞ」

 ここは、文化棟の3階。

図書室の一角に位置する古書研究室──だったはずなのだが、この先生が赴任してからはこの人の巣窟と化していた。案の定、部屋には読み散らかした漢書やら平安絵巻などの国語書が散乱している。

「あのぉ…」

「ん? どうした御倉」

「やっぱ、補習っスかねぇ」

 機嫌を損なわぬよう、徹頭徹尾、腰を低くして対する。

「まあ、な」

 ついに死刑判決は下った。お代官様にはお慈悲の心は無かったようだ。

 無言で立ち尽くす俺に、心情を察したのだろうか。先生が声をかけてきた。

「なんか申し立てはあるのか?」

 どうやら再審請求は認められたらしい。これ如何では……。

「次は頑張りますので、どうか今回はご勘弁を!」

 かなり久々に深々と頭を垂れた。こんなこと、澄香に浮気がばれた時もしない。

 念のため言っておくと、俺と澄香は付き合っているわけではない。親同士がノリで“許嫁”と決めただけだ。

「何をどう頑張るんだ?」

 ぐはぁ! 答えられぬ命題を!

「まあ、そこはですね、次回をお楽しみということで…」

「よし、なら御倉は夏休みを楽しみにしてろ。一生忘れられない思い出をつくってやる」

「もう少し、O岡越前ばりの御慈悲ってものがないんですか?」

「それは最低限のやるべきことをやった奴が言う台詞だ」

「お願いしますよ〜。俺のバラ色に満ちた夏休みはどうなるんですか?」

「知らないよ、そんなの。四条橋にでも聞かなかったお前が悪いんだろ」

 これは、いわゆる敗北ってやつですか?

 さようなら、俺の夏休み。さようなら、俺のアバンチュール……。

「しかし。これでは生徒の自主性を尊重する、この桜樹丘さくらぎおか高校の伝統に逆らうことになるか」

「歩先生の仰るとおりでございます」

「だよな。と言う事で、御倉は補習として私の研究旅行に付き合うこと。費用は私が出してやる」

 と聞くと聞こえはいいが。

「て言っても、たしか去年は資金が途中で尽きて、浜名湖でウナギの密猟やってたらしいじゃないすか!」

「まあ、な」

 にこりともせずに、ただ頷かれる。

「そんな犯罪まがいのことなんか俺は嫌ですよ!」

「いか違うな…それは一昨年だ。たしか去年は焼津に来た漁船からマグロを拝借しただけのはずだ」

「尚更だよ!」

「安心しろ。今年は以前書いた本の印税がガッポリ入るからな。観光地の売り子で済むはずだ」

 結局バイトはするんだな…。

「ん、御倉は不服か?」

「言わないと分かりませんか?」

 ここまで鈍いとは…ホントに教師か?

「うーん、そうだなぁ」

 歩先生は考え込むようにすると、そのまま黙っていたが、やがて何か思いついたようだ。

 B5用紙にサラサラと書き込んだものを俺に提示した。

「まあ、私も鬼じゃない。課題をやろう」

 今聞きたくない言葉ベスト5には入る禁句を……。

「それができないからここにいるんですが…」

「まあ聞け。課題っていっても楽なものだ。

 デンジャラスでエキサイティングな日々を送っている御倉になら、簡単な課題だろう」

「で具体的には…?」

「A4レポート用紙で5枚ほど書いてきてもらおうか。お題は『この夏であったこと』であれば内容は問わない」

 これは難しいのか、それとも簡単なのか?

「例えばだが、四条橋との愛と欲望の日々でも私は構わんぞ?」

「またまたあ、冗談キツイっすね〜」

 内心、冷や汗ダッラダラ。

「ま、不純な異性との交遊は校則に引っかかるから、注意するようにな。むかし停学食らった奴もいたらしい」

 ゲームではおなじみの光景も、本当は校則違反だったのか…。

「そんなんだから。戻っていいぞ」

 話はそれで終わった。


本作の舞台である、桜樹丘高校は公立校です。正式名称は「北○道桜樹丘高等学校」と表記します。

正直、プロローグで地域性を出せなかったのが悔しいですね。ただ単に筆力不足なんですが。

学校の見取り図もできてますので、チャンスがあれば公開したいと思います。


また、ふりがなを振っている人とそうでない人がいますが、これはメインキャラかそうでないかの違いのみです。

榊原、今川。これで分かる人は歴史好きの人ですね。榊原以外のクラスメイトも用意しておりますので、後々あろうメインキャラとの掛け合いもお楽しみに。


では、ご感想お待ちしております。




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