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第一章 《第5話 海の上》

  夏の強くて眩しい太陽の光に照らされながら、一隻の大型客船が海の上を進む。


  三本のマストに張られた帆が風を受けて、船体は揺れることもなくとても滑らかに進むんでいく。


  その船の名は《優雅に泳ぐ人魚号》という。


  全長は百メートル。三本のマストと船首に飾られた微笑む人魚像が特徴的だ。


  この客船の乗客はほとんどが貴族ばかりだ。その理由は一つ。世界最速の船だからである。


  船の動力は帆船のように風の力を受けて進むか、それともガレー船のように人力でオールを漕ぐかのどちらかだが、《優雅に泳ぐ人魚号》はどちらとも違う第三の動力を用いていた。


  それは魔宝石(マジックストーン)である。


  数百年前。ある魔法使いが作り上げたそれが船には搭載されていた。


  魔宝石とは、その名の通り魔力を閉じ込めた石のことである。


  見た目は唯の宝石のようだが、それを用いることで魔法が使えるようになるのだ。


  《優雅に泳ぐ人魚号》には二メートル近い特大の魔宝石二つが船内に設置されている。


  発動している魔法は二つ。


  緑の魔宝石は風魔法《ハーピィの羽ばたき》を発動させている。

  船のマストに風を送り込むことができ、たとえ無風の状態でも一定の速度を保ちどんな船よりも早い。

更に船全体に快い風を送り込んでいるのだ、乗員乗客は炎天下でも快適に過ごすことが可能だ。


  もう一つの水色の魔法石が発動している《人魚の尾ビレ》は、周辺の海を操って波を穏やかにし、横揺れを抑えることを成功させていた。


  世界最速の船という名は伊達ではなく、通常なら二週間はかかる道のりを一週間に短縮することに成功していた。


  客船でありながら、護衛の船は一隻もついていない。理由は簡単。早すぎて追いつけないのだ。


  軍船も追いつかないということは、どの海賊船も追いつけないので問題はなく、むしろその早さが船自身を守る事につながっている。


  そのおかげでこの船はとても早く居心地も良く、安心安全な船旅が出来るとあって、毎日のように貴族達がこぞってこの船に詰めかける状態であった。


  噂では王族が、お忍びで来たこともあるらしい。


  そんな《優雅に泳ぐ人魚号)だったが、いつも使う航路で一つの問題が起きてからは、毎日行われていた航海が途切れていた。


  けれども、ある二人組が乗ることによって、航海を再開する事になった。

 

  《優雅に泳ぐ人魚号》はまるで大海原を優雅に泳ぐように海の上を進んでいた。


  眩しい太陽の光が、さんさんと降り注ぐ甲板の上。


  そこには十人近い男女がいる。


  樽を持ってどこかに運んだり、遠眼鏡で周りを見回す立派なヒゲを伸ばしたドワーフの船員達。


  見回りのために歩く衛兵達は鯖に強く動きの阻害されないレザーアーマー。腰に下げているのは船などの狭い場所でも使いやすいカットラスだ。


  豪華な身なりの夫婦と思われる二人の男女のエルフが、手摺に手をついて、日の光を反射する青い海を見物していた。

 

  女性エルフの方は日差しが気になるのか、この暑いのに長袖を着て帽子を深く被り、日傘をさして完全防備だ。


  その様々な人が賑わう甲板を一人の女性が手を後ろに組んでニコニコしながら歩いている。


  見た目も身長も少女のようだが、これでもれっきとしたこの船の船長だ。


  彼女の名はアムット。この船で働く船員達をまとめ上げる存在だ。


  日焼けした肌に、動きやすいようにショートカットにした黒髪に溌剌とした印象を与える黒の瞳。


  身長は百四十センチと小柄ではあるが、既に船乗りとなって三十年のベテランである。


  この船の船長となったのは十年前の四十歳の時だ。


  驚くことはない。平均寿命三百歳のドワーフの女性達は百歳だろうが二百歳だろうが、見た目はずっと人間の十代の少女ぐらいなのであるから。


  彼女は歩きながら被っている帽子のズレを直す。


  船長の証であるキャプテンハットは丁度いいサイズがなく少し大きめで、そのせいで余計に子供ぽく見えていた。更には服も少し大きめだったりする。


  周りから見れば、子供が憧れの船長の格好をしているようでとても微笑ましい。


  けれどもこの帽子は船長としての誇り、寝る時以外はいついかなる時でも手放す気は無かった。


  因みに外見の事を口に出せばどうなるか、船員達は骨身に染みているので決して口には出さない。


  そもそも子供っぽい見た目とは裏腹に船長としての実力は折り紙つきなのだ。皆彼女の下で働くことに誇りを持っていた。


 アムットが船員達の作業や海を見つめる貴族達を見ながら歩いていると、甲板の一角で貴族でも船員でもない二人組を見かけて歩みを止めた。 

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