表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/49

序章《第1話 天界の絵画展》

読んでくれてありがとうございます。


新たなダークファンタジー開幕です。主人公二人の目的が叶うかどうか、是非最後まで見届けてください!

  そこは眩しいほどの白く長い廊下だ。天井は手を伸ばしても届かないほど高く、先が見えない長くまっすぐ通路はまるで終わりがないような錯覚を受ける。


  辺りを照らす照明のようなものはどこにもないが、壁、天井、床それ自体が自ら明るく輝いていた。


  その道を、文字通り神々しい輝きを放つ三人の美女が歩いていた。


  白い床を、美しい素足で先頭を歩くのは、汚れひとつない純白のキトンを纏い、腰までの長さの金色(こんじき)の髪を持つお淑やかな雰囲気の女性。


  その後ろを歩くのは、艶のある黒髪をショートカットにした女性だ。流麗な甲冑でその身を覆い、盾の紋章が彫られた籠手をはめた左手で兜を大事そうに抱えて歩く。


  最後尾にいるのは、白いノースリーブのシャツに茶色のスパッツを履いた、空色のツインテールの少女が、革のサンダルで包んだ両足を忙しなく動かしながら、キョロキョロと左右の壁に視線を何度も往復させる。


「おお〜。今日もいろんな絵がいっぱいだね!」


  少女の大きな声が、足音しかしない白い廊下に反響する。


  三人が歩く通路の左右の壁には絵画が飾られている。


  三人の美女はある絵画展に足を運んでいた。

  しかしここはただの絵画展ではなかった。


  金の額縁の中に収められた絵は、様々な人々が描かれている。人間はもちろん、エルフやドワーフなどの亜人の姿もあった。


  だが全ての絵からは華やかさという言葉は感じられない。

  何故なら全ての絵に描かれているのは人の死に際だけだった。中には華やかな葬儀の絵などもあり、そういう意味で言えばある意味華やかなのかもしれないが。


  壁にかけられた絵を見てみると、文字通り眼の前に矢が迫る女性のエルフ。オークと相打ちして血の海に沈んでいくドワーフの王。そして剣を抱いて目覚めることのない長い眠りにつく人間の王の姿があった。


  それ以外にも様々な人の、今まさに命の炎が燃え尽きようとしている瞬間が、これでもかと三人の鑑賞者の目に留まろうと必死に主張しているようだった。


「ヘラロス姉様。今日は姉様が導く者はいましたか?」


  一つの絵をじっと見つめる金色の髪の女性ヘラロスに黒髪ショートの女性が話しかける。


「ええ。グノナス。わたくしはこの方を導こうと思います」


  ヘラロスは左手の人差し指を伸ばす。その時薬指に付けた指輪がさり気なく輝いていた。


  指差したのは一人の老人だった。彼は死の床につき、周りで泣いているのは家族だろう、息子夫婦や孫達が涙を流しながらベッドの周りに集まっている。


「彼はみんなから慕われていたようですね。御覧なさい。周りにいる人達は皆彼の死に対して悲しみに暮れています」


  姉の言葉にグノナスは頷く。


「確かにそうですね。普通なら一人ぐらいは、邪なことを考えていたりするのですが……例えば、今のうちに金銭をかすめ取ろうとか」


「ええ。この絵からは悪事を働こうという気配は誰からも感じられませんね……少し様子を見て来ようと思います」


「はい。いってらっしゃいませ」


  ヘラロスは伸ばした人差し指で絵に触れて目を閉じる。


  その美しい横顔をグノナスは黙って見つめていた。

暫くすると、ヘラロスが閉じていた瞼を開ける。


「姉様。どうでしたか? 予想通りの人物でしたか?」

 

  話しかけてきたグノナスに、ヘラロスはニッコリと微笑む。その母譲りの微笑みは母性に溢れていた。

妹のグノナスであっても、その笑顔を向けられると心が癒されていく。


「今見てきましたが、あのご老人は真面目にコツコツと生きてきたようです。周りの人々からもとても好かれていたようですね」


グノナスは顔が緩まないように必死に引き締める。姉にだらしないところは見せたくないからだ。


「じゃあそちらの方にするのですね?」


「はい」


  ヘラロスが右掌を絵に向けると、老人が描かれた絵が壁から外れて小さくなり、まるで花に集まる蝶のようにその手の中に収まる。


「グノナスはどなたにするのですか?」


「はい。私は……こちらの絵が気になっています」


  グノナスが気になっている絵に描かれていたのは、熊の毛皮を被った筋骨逞しい狂戦士の姿だった。


  狂戦士は全身に刀傷や矢傷を負いながらも、絵を見ている者を射殺すような鋭い目つきでこちらを睨みつけている。

グノナスはそれにひるむことなく、(つるぎ)の紋章が彫られたガントレットを着けた右手の人差し指を伸ばすと、目を閉じて絵画に触れる。


「……この戦士は、人並外れた強さを持て余し、遂には部族を皆殺しにして、強者を求めて戦いの日々に明け暮れていたようです。

そして最後は千人の兵と戦い、それを全滅させて自分も力尽きたようですね」


「それだけを聞くと、貴女が導く人間には思えないけれど?」


「彼は、強者を求める途中で、女子供や老人を殺し回っていました。なんでも『戦えない弱い奴など生きる価値はない』と思っていたそうです」


「なるほど、そういう人間なら貴女が導く価値はありそうですね」


「ええ。彼ほどの悪人はこのまま転生させても同じことを繰り返すでしょう。なので私が、冥界に導きます。そして戦力になりそうならば我が軍の戦士の一人として迎え入れるつもりです」


  ここまでの話を聞いて気づいたかもしれないが、この二人は人間の女性ではない。天界を統べる神王の血を引く女神達だ。


  慈愛の女神である長女ヘラロスは下界で死んだ善人の魂を展開に導き、戦と知恵の女神である次女のグノナスは下界で罪を犯した悪人の魂を冥界に導く役目を帯びているのだ。


  女神達は一日に一回。ここに足を運び、一人ずつ自分たちの世界に招き入れていた。

 

  選ばれない魂はどうなるかというと、女神達に選ばれるまで、何度も下界で転生するだけである。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ