成り得た道
ifルートです
完全なるぼっちルート。
俺は道端で膝をついてしまう。
2つのしたいという欲が、互いを食いつぶし合う。溢れては消え、それが段々と大きくなる。俺の自我は徐々に蝕まれていった
(ぐ……ハルカ、ハルカを探さなければ)
俺は軋む体に鞭を打ち、よろよろ立ち上がり歩き始めた。
魔力を薄く広げ、ハルカのいる場所を探る。
奴隷紋がそれに反応し、ハルカのいる場所を確定してくれる
(あちらに……ハルカが)
俺は走って向かう。ハルカは山へ向かって走っている。俺はその後を追って、ハルカへと追いつく
「ハルカ!待ってくれ!」
俺は人目も気にせず、大きな声でハルカに声をかけた
「ムルト様……」
俺はまた膝をついてしまう
俺ではない何かが俺の中でぶつかり合っている。何もしたくない。仲間がそんなに大切か。ハルカもレヴィアも大切だ。そんなものがいるから休めない。休みたいなら1人で休め。休むならば3人で観光がしたい。1人の方が気楽で自由だ。頭が割れる。やめろ。やめろ。やめろ。やめろ。やめろ。やめてくれ。
「ムルト様!」
ハルカは俺を心配して俺の体を起こす。
今にも泣きそうな顔をしていた。この女を殺せば自由になる。雨で分からなかったが、絶対に殺さない。もう泣いていたのかもしれない。
「俺から……離れろ……!」
頭が割れるように痛む。胸の奥が熱い。体が熱い。
俺の心は、壊れて混ざる
「ふんっ!」
俺はハルカを薙ぎ倒す。ハルカは少し離れた場所へ吹き飛んでいく。体を浮かすようにして吹き飛ばしたのだが、少し痛くしてしまったようだ。
俺の体は進化をするときのように光り輝いている。だが、今の俺は進化し方ばかりで、未だレベル1のはずだ。何が起きているのかわからない。光は収まり、進化が終わったようだ
名前:ムルト
種族:混欲の死王
ランク:EX
レベル:1/100
HP38000/38000
MP0/0
固有スキル
死ノ眼
死骨
欲塊(怒怠の総)
スキル
剣術Lv10
暗黒魔法Lv10
称号
月を見る魔物、月の女神の寵愛、月の女神の祝福、月の使者、忍び寄る恐怖、心優しいモンスター、挑戦者、嫌われ者、人狼族のアイドル、暗殺者、大罪人、救済者、欲深き者、欲に呑まれた者
頭の中がスッキリする
俺は仮面とローブを脱ぎ捨て、辺りを見渡すと、皆が俺を見ていた
『……不快だな』
俺の体から赤い瘴気が放たれる。俺は右腕を振りかざす。それだけで建物や人が吹き飛んでいく
俺の周りだけがぽっかりと空いている
それと同じように俺の心の中にもぽっかりと空いている何かがある
(あと、5つ)
俺は遥か遠くに、恐らくその足りないものがある。と本能でわかった。俺の中にある2つの感情がそれを求めていた
「ムルト様!」
先ほど吹き飛ばした女が俺へ叫んでいる
俺は指を立て、そこに力を収縮させ、それをその女へと放った
「貴様っ!」
見覚えのある女が飛び出してきた。
確かミナミ、と言ったか
そいつは刀を使い俺の攻撃をずらしたようだ
「これはどういうことだ!」
『……どういう、とは?』
「貴様は暴れるはないと思っていた!そして、ハルカを守るとも!」
その女の仲間が集まり、俺は既に囲まれていた。負けることはないが、分が悪いだろう
『はて、そんなこと、言ったか……それはそれで、めんどくさいな』
俺は、一番弱そうなサキの後ろに回り込み、剣で一閃……剣は鞘から抜けなかった
『ぬっ?』
「はぁっ!」
ミナミがすぐに距離を詰め、切りかかってくる。俺はそれを腕で防いだが、後ろから攻めてきたジャックの攻撃を受けてしまう。が、俺の骨を断つことはできなかった
『ふむ。この場は去るとしようか。それでは、また会おうではないか』
俺は宙に浮き、そのまま向かうべきところへと飛んでいく
「ムルト様ァー!!」
女が悲しそうに俺に叫んでいたが、俺は何も感じることはなかった。はずなのだが、俺は不思議と後ろを振り返り、その少女を見てしまう
(……俺には足りない。まだ、まだ足りないのだ)
目指す場所は崩れた洞窟。俺が次に手に入れるのは、強欲だ
そう考えた瞬間、龍の咆哮が頭上に轟く




