表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/330

骸骨と歌う少女

とりあえず俺は、カロンに案内はされていないが、説明を受けた区画へきた。

先ほど案内を受けた通りよりは活気はないが、道具屋や武具店、何かよくわからない看板を下げている店がある方へときた。人通りはまぁまぁある


(ふむ…道を聞こうか)


俺は近くにいた、野菜を売っている老人に声をかけた


「すまないがご老人、ここいらで書物を売っている場所はあるか?」


「んー?どうだかなぁ〜魔道具屋にスクロールはあるんじゃねぇか?」


「スクロールとかではなく、モンスターの図鑑や物語の本などが売っているところはあるか?」


「そうさなぁ…魔研のマリーがモンスター図鑑のようなものを売ってたなぁ」


「その店はどこに?」


「確か…」


俺は老人に簡単に道を聞き、そこへ向かって歩き始める。


お目当の店を見つけ、そのまま中に入ると、いろいろな書物が置いてあった。

モンスターの図鑑から、錬金術や、魔法の入門書、魔術についての研究、お姫様の童話など、多種多様なものが置いてある


「いらっしゃい。何をお探し?」


白い白衣のようなローブを身に纏った女性が声をかけてくる。どうやらこの人がマリーらしい


「そうだな、環境だったり、秘境だったりがかかれた本などはあるか?」


「んー…そうねぇ…地形や山、湖に生息するモンスターの本ならあるけど」


「ふむ…黄金の泉や、オーロラとかいうもの、雪山の白や、白い洞窟など、そういう話、だな」


「…確か絵本でそんな話がかかれたものがあったわね…売れてなければここらへんに…」


店に置いてある本はほとんど中古か、写しなので、一点物ばかりだ


「あった!あった!これこれ、絵本の割には分厚いのよね【フォルの大冒険】読んでみたら?」


俺はマリーから本を受け取り、パラパラと中を見る。簡単に説明すると、フォルという少年が、世界を旅する話なのだが、先ほど話した黄金の泉や、白い洞窟などが出てくる。

場所は細かく書かれていないが、小山のてっぺん、大きな鳥の嘴の奥、など、ヒントのようなものが書いてある


「ふむ。これをもらおう」


「毎度あり〜」


値段は金貨1枚と、とても安かった

次は、特に何を買うというわけでもないが、武具店にでもいってみようかと思いあたりを探してみる。


すると、どこからともなく歌声が聞こえてくる。透き通った声だが、芯のあるしっかりとした声だ。俺はその歌声に導かれるように、歌のするほうへ向かっていく


すると、少し路地に入ったところに、藁のようなものを下に敷き、缶を置き、そこに銅貨などを入れてもらっている、物乞いのような少女が歌を歌っていた


「いい歌声だな」


「!…はい。ありがとうございます」


話している声も凛としていて、どこか聞いていて心地の良いものを感じる


「今歌っていた歌はなんの歌だ?」


「何の歌…ですか…暖かいお日様の歌です…かね?」


「ははは。なぜ疑問形なのだ」


「その…自分で作ったんです」


「ほぉ!自分でか、なかなか才能がある。他にはどんな歌を歌うのだ?」


「どんな歌でも歌いますよ。何かリクエストがあれば、即興で作れます」


「ほぉ…そうだな、それでは、月、で作れるか?」


「はい!月は私も好きで、月の神様のお話をよく母から聞かされていたんです」


「そうか」


「はい。それでは、歌います」


正座していた足を少し組み直し、胸の前で手を重ね深く息を吸って音を奏でた


遠いどこかの世界の果て、ここではないどこかに、神たちは住んでいた。

夜を見守る明るい月、月を照らす、綺麗な星、それは二人を引き付け合い、結び付かせた。意地の悪い兄弟は、それを見ては笑ってた。輝きをます二人に怒りを抱いた。

月を騙して星は輝きを失った

泣いた月はいつしか色を失い、黄色の気持ちは涙で流れてしまう。流した涙は自分を塗り替え青くなる。深い深い、青になる


「…こんなところでどうでしょうか」


「ふむ。素晴らしい」


「その…聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」


「?なんだ、構わないぞ」


「その…あなた様は私を見ても差別をしないんですか…?」


「なぜ?」


「その…私は…」


少女は顔を上げて、髪をかきわけた。その両目は赤黒い何かが広がっていた。目玉をえぐりとられたような、そんな穴がぽっかりとあいていた


「私は、欠損品なんです」


「産まれつきか?」


「いえ、産まれて少しして、鳥に啄まれたらしいです」


「ふむ。そうか。別に、私は気にはしないがな。それに、君はとても美しい顔をしている。髪で隠してしまってはもったいない。少し待っていろ」


俺は人に当たらぬよう、隠密と危険察知、身体強化を最大にし、全速力で走り、洋服屋に行き、少女の髪色と同じ青のスカーフを買い、少女の元へ戻った


「さぁ、これで目を隠しつつ、綺麗な顔を出せるぞ」


俺は少女の両目を隠すようにスカーフを巻き、おでこがでるように髪を整えた。慣れてはいないので不恰好だが、先ほどよりもマシだろう


「こ、これは…」


「ふむ、美しい歌も聞かせてもらった。これで、どうだろうか」


入れたお金がチャリン、と小さな音を立てた


「ありがとうございます…ってこれ、大金貨ですか?」


「ほぉ。よくわかったな」


「子供の頃から目が見えないので、耳は相当いいんです!って!こんなにもらえませんよ!」


「いや、いい。十分楽しませてもらった」


「で、ですが!」


「いいんだ。それでは、またな」


俺は少女に背を向けるようにし歩き始めると、俺の背中に向かって少女の震えた声が届いた


「あの!!もう一つ聞きたいことがあるんですけど…!」


「ん?なんだ?」


俺は半身少女に向け、歩みを止めた


「その…あなた様は…なぜ心臓が動いてないのですか?」


俺はその問いに答えることはなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ