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骸骨の送別会

思い立ったが吉日、という言葉がある。と、ハルカに教わった。それと、有言実行だとも、俺たちは昼食を食べ終えたあと、カリプソに向かうための準備を始める。

準備、と言っても、食べ物を買い足すだけなのだが


「これから宿とか旅支度に使うでしょ。あげるわ」


そう言われてレヴィに手渡されたのは、大金貨だ。小遣いと言われ、一枚は持っていたが、そのほかのレヴィがワイバーンの分け前として受け取った大金貨を、全て俺に渡してきた。

俺は礼を言うと、レヴィが恥ずかしそうに


「あ、あんたがリーダーなんだから当然でしょ…財布はあんたが持ちなさいよね!」


と言われ、財布管理は俺と言うことになったのだが、レヴィもハルカも多少のお金は持っているので、小遣いを入れる財布として2人に小袋を買った。それとレヴィは、着の身着のまま旅についてきたので、着替えがない。ということで、服も買ったのだ


カリプソへは馬車で一週間、徒歩で二週間かかるかどうか、という長い旅になりそうだったので、食料は道中のモンスターを狩り、日持ちのいい携帯食料を三週間分買った


「ご飯を食べないなんて。なかなか節約できるわね」


全て揃えても大金貨1枚しか、かからなかった。所持金も潤っている


その晩はコットンの送別会のようなものを開いた。コットンはこの街で別れることになるが、またどこかで会おうと言ってくれた。

冒険者ギルドの伝言板に書いてくれたら、どこにいてもすっ飛んでくるらしい


「異色のスケルトンに、再び悲しみを背負わせないためにな」


俺にはよくわからないことを言っていたが、本心で俺に助力してくれるのは確かだ。

送別会は終わり、各々宿の部屋に帰っていくが、二次会、というやつなのだろう。俺とコットンの部屋にハルカとレヴィが訪れた


「ムルト…これ、どう?」


レヴィはそう言って、薄い生地でできているランジェリー、という服装を見せてきた。

ピンクの薄い布でできたその服には、可愛らしいフリルのようなものがついており、レヴィに大変にあっていた


「あぁ。大変似合っている」


「それだけ?」


「うむ…美しい、というよりかは、可愛らしい。かな」


「レヴィア様…少々過激だぞ…」


「あんたのことなんて眼中にないからいいのよ!」


部屋でぎゃあぎゃあと騒ぎすぎて、店主からは怒られてしまったが、静かな宴は夜遅くまで続いた


「ムルト様、よかったら一緒に寝ませんか?」


「私は睡眠を必要としていないが」


「あ!だったら私も一緒に寝るわよ!」


「ははは。ならば俺はお二人の部屋で寝ようかな」


「まて、コットン!私を置いていくな!」


「それでは、楽しんでくれ」


コットンはそう言って部屋を後にしてしまった。

当然、レヴィの力に俺が勝てるわけもなく、俺は泣く泣くベッドに横にされてしまった。左にはランジェリーを着たレヴィ、右には部屋着をきているハルカ。男には羨ましい光景ではあるのだろうが


(俺には性欲がないからな…)


「ムルト、なかなかゴツゴツしてるわね」


俺の腕に抱きつくレヴィがそんなことを言う。控えめな胸に俺の上腕骨が当たり、どこに、とは言わないが、手根骨もいけないところに当たっている


「んっ…うん。いいわね」


「全く、何がだ」


「いいのよ…んっ…」


艶やかな声を出しながら、レヴィは目をつぶり、しばらくすると、眠りに落ちてしまったようだ


「ムルト様、起きてますか?」


「あぁ。眠ることはないからな」


「そう、ですね…その、ムルト様」


「なんだ?」


「私、ムルト様と出会えてよかったです」


「…あぁ。俺もお前に、お前達に会えてよかった」


「えへへ…」


ちゅっ、と下顎骨にハルカの唇が押し当てられ、そんな音を奏でた

確かに性欲のない俺だが、恥ずかしいことには変わりないのだ。ハルカも恥ずかしかったようで、反対側を向いて、俺の腕を抱き枕にして眠ってしまったようだ。俺の右腕は持っていかれている


(…賑やかなのは、良いことだ)


俺はこれまでの旅と、これからの旅を思い描き、ゆっくりと目をつぶった


(これが、寝る。ということなのだろう)


一度洞窟の中で眠りについたことはあるが、その一度のみだった。その夜のこと、少女達を救い、少女に恐怖されたこと、眠れない骸骨は色々なことを思い出していた





「何が欲しい…!」


「そなたの命」


「命以外のものならなんでも差し出す」


「我が欲するは生のみ」


「…はっ、命を持たないお前が望みそうなものだなぁ!」


「…余地なしだ」


黒いローブを纏った巨大な骸骨は、その男へと手をかざすと、黒い霧が男を包み、その身を骸へと変えた


「…足りない」


その骸骨の周りには、すでに万をも遥かに超えるスケルトンの軍勢が出来上がっていた。

だが、そのスケルトン達も様々な形態をしていた。角の生えたスケルトン、尻尾の生えたスケルトン、犬歯が鋭利なスケルトン、終いには、スケリトルドラゴンと言われる、龍もいた


「さぁ行こう。我が欲するもの、それは、この世界の全て。まずはその第一歩とし、我が国を作ろう」


龍は吠え、ほかの骸骨はカタカタと音を立てた。それだけの音だったが、この数、そして周りにはその音を遮る森もなかった。その骨の鳴る音は恐怖として全世界を震え上がらせる


「待っていろよ。強者ども。その力を我が軍勢に加えてやる」


その頃のギルドは、この死の暴力を討伐するため、様々な手を弄していた。

討伐依頼もあり、諸悪の権現は倒せずとも、周りの骸骨を微力ながら後方から少しずつ削っていたのだ


「我が名はエルト、死の王にして、欲深き者。強欲のエルトだ」

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