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骸骨は買い物する

「今、何と?」


思わず俺は聞き返してしまった


「レヴィア様が屋敷へお二方を招待しています。」


同じことを繰り返してくる。が意味がわからなかった。報復してくる理由はあれど、招待などと…それも城ではなく屋敷へ


「おい、ムルト、レヴィアっていったら女王じゃねぇか。何したんだ?」


「戦った」


「戦った?!お前それで生きてんのかよ!?」


「ムルト様、来ていただけますか?」


「行って…何をする」


屋敷に招待しておいて、俺たちを襲う算段かもしれない。警戒するに越したことはないが、昨日の件は昨日で丸く収まっているはずだ。俺は震えるハルカへ囁く


「ハルカ、どうする」


「怖い…ですが、ムルト様についていきます」


「そうか…クロムとやら、その招待。是非受けよう」


「ありがとうございます。それでは夜の7時頃、また顔を出しますので、是非」


「何か準備するものはあるか?」


「着の身着のままで構わないとのことです」


「わかった」


「それでは」


クロムはそのまま出て行ってしまった


「ムルト、一体何したんだ?」


「大したことではない」


「大したことでなんで女王に…いててて!」


シンは女将さんに耳を引っ張られ仕事へ戻される


「シン!ムルトさんにはムルトさんの事情があるんだ!首を突っ込まないの!すみませんねぇ」


「いや、大丈夫だ」


ハルカはまだ震えていた。きっと、屋敷へ着いてからが心配なのだろう。


「ハルカ、心配するな。私が必ず守る」


「ムルト様…」


ハルカは優しく俺に抱きついてくる。俺はそれにそっと答え、しばしの間そうしていた。


俺たちは気を取り直し、今日の目的である買い出しへと出かけるのであった





「女性の衣服はよくわからない。男性のもわからぬのだが…好きに選ぶといい」


「好きに?とは?」


「ハルカが着たいものを買うんだ」


「で、でも」


「それが保護者の責任、ではないか?」


「保護者…ですか…」


俺たちは今、衣服店に来ている。この通りには道具屋や武具屋なども近くにあり、服を買った後、必要があれば寄ろうと思っている


「ムルト様も一緒に選んでくれませんか?」


「私でよければ。センスは保証できないがな」


「うふふ。大丈夫です」


ハルカに連れられ、婦人コーナーへと行く。新品のものから中古のものまである。ハルカは中古の服を3着ほど選んだ。

黄色い花柄のワンピースと、上が赤の方の部分が空いているオフショルダーというもの。下は白のふんわりとしたロングスカートだ


「それだけでは足りないだろう?」


「い、いえ、これだけで十分です。」


3着合わせて銀貨35枚手持ちはまだまだ余裕があるのでもっと買ってもいい。俺は服を必要としないので、その分をハルカに回してもいい


「ふむ。それでは私が選んでやろう」


「えっ、そ、その、はい…」


ハルカは顔を赤くし、俯いてしまった。傷つくようなことを言ってしまっただろうか…

女性は衣服を自分で選びたいものなのだろうか…


「私が選んだ服は嫌か?」


「い、いえ!!嫌じゃないです!むしろ嬉しいです!」


「そうかそうか。嬉しいか。ははは。人を喜ばせるのは好きなのだ。ハルカも少しばかりアドバイスをくれ」


俺は笑いながらどのような服が似合うか考える。黒い髪に黒い目、綺麗な白い肌をしている。その二つの色を生かせる服はあるだろうか…

俺は真っ白な長めのチュニックのようなものを1着、部屋着用としてピンクのブラウスと通気性の良いデニムのハーフパンツを選ぶ。


これで6着…二人合わせて6着…センスがないのだろうか…全て中古で銀貨90枚。安いほうなのだろう


先ほどから、ハルカがチラチラある方を見ていたことに気づいた俺は、その方を見てみる


(何か欲しい服があるのだろうか)


そこには、木の人形に着せられているなんとも美しい服が飾ってあった。

黒地のワンピースなのだが、そのワンピースの首元から胸の下の方が青から黒へと少しずつ変わっているグラデーション模様をしていた。


(夜空に浮かぶ月…)


「ハルカ、あの服はいいな」


「え?!いや、違うんです。欲しいとかじゃなくて…」


「いや、私もあの服を気に入った。買おう」


「で、でも、金貨5枚ですよ…新品ですし、絹でできてるんです…」


「構わない。買おう」


俺はそのまま押し通した。合計7着で金貨5枚と銀貨90枚。

途中で俺は下着類を買うことを思い出し、ハルカに声をかけた。

ハルカはまたもや顔を真っ赤にし、小さな声で


「下着は一人で選んでもいいですか…」


と言われたので、5日分を買うようにいい、待っていた。

下着類は上下セット5日分で銀貨50枚だったが、店主がたくさん買ってくれたお礼ということでまけてくれ、服7着、下着5組を金貨6枚で売ってくれた。


俺たちは店主に礼を言い、露店を見て回っていた。


「ハルカは戦いたいか?」


「戦い…ですか」


「嫌であれば無理強いはしない」


「い、いえ、戦ってみたいです…異世界に来て、しかも私にはすごい力があるらしいので…」


「氷獄の姫のことか?あれを使えば奴隷商から逃げることも可能だったのでは?」


「それが、MPが足りないらしく使えないんですよ…他の魔法もそうみたいで…でも、戦うのは怖くて…」


「ハルカがちゃんと戦えるようになるまでしっかり見ているから安心してくれ」


「私が戦えるようになったら、私のこと…捨ててしまいますか…?」


「なぜ捨てる…一緒に戦ってもらうことになるぞ」


「是非!!私、ムルト様のお役に立ちたいです!」


「ははは。楽しみにしている。お、あれはなんだ?」


俺が指を差した露店は、オリジナルアクセサリーを作ってくれるお店のようだ。

色のついた石を削り、それにチェーンを通す。簡単なネックレス、といった感じだろうか


(あの黒いワンピースに似合うかもしれないな…)


俺は先ほど購入した夜空のようなワンピースを思い出し、自分の首にかけている月のネックレスをみる。きっと、これをつければさらに美しくなるだろう。一つ銀貨5枚と、安い


「主人、これと似たようなものは作れるか?」


「はいよー。銀貨5枚だ」


店主に銀貨を渡し、しばらく待つ。5分もかからずネックレスは出来上がり、それを受け取る


「ムルト様、二つも同じものをつけるんですか?」


「あぁ、いや、これはハルカへのプレゼントだ」


「えっ」


「先ほど買った黒いワンピースに似合うと思ってな。俺と同じではないが、似たようなものを身につけると仲間みたいでいいだろう?」


俺は密かに仲間、というものに憧れていた。

バルバルで出会ったダンとシシリー

ハル達、エルフの集落の皆

ビット達人狼族の皆


俺はそれを見て、心のどこかで憧れていたのかもしれない。スケルトンという種族であっても、月下の青骸骨という種は俺一人。せっかく旅をする仲間になるのだ。何か同じものを身につけたかった


「もらってくれるか?」


「はい…もちろん!!」


ハルカは笑顔でネックレスを受け取り、すぐに首にかける。とても喜んでくれたみたいで、俺も思わず嬉しくなる。小さな声で「お揃い…」と言いながらネックレスを撫でている。俺もお揃いということで嬉しくなる


「して、主人、ここらでオススメの武器店などはあるか?」


「そうだなぁ…骨人族の兄ちゃんが使うとなると…」


「いや、この娘が使うのだが」


「戦闘奴隷かい?戦士…じゃないな。魔法を使うのであれば、ここを真っ直ぐいったところに魔道具店がある。そこに行くといいだろう。緑の看板に杖と本が描かれてるところだ」


「ほう。感謝する」


店主は指を差し、道を教えてくれる。

店主に教えてもらった通りの看板を見つけ中に入る。

店の中にはランタンのようなものや、松明、魔道具というには貧相に見えるものもあった。


「いらっしゃい」


「杖が欲しいのだが、何かオススメはあるか?」


俺は店主と思われるとんがり帽子にローブを着込んでいる老婆へ話しかける。


「そうさねぇ…杖を使うのはそこの嬢ちゃんかい?」


「そうだ」


「使える属性はいくつだい?」


「え、ええと…」


ハルカが口ごもる。確かハルカの使える属性は4属性、うち一つは最上級魔法なのだ


「正直に言えばいいんじゃないか?」


俺は小声でハルカへ語りかけた


「レベル1で4属性使えるのはおかしいんですよ…」


ハルカも小声でそう返してくる。確かに、産まれた頃より4属性を持っていることは稀なのだろう。レベルも1のままなのだから


「ヒッヒッヒ。聞こえてるよ。レベル1で4属性とは、恐れ入るね…そうさねぇ…この杖なんてどうか」


そう言って老婆が持ってきたのは、銀の杖に、花のような装飾がとりつけてある、いわゆる、ロッド、と呼ばれるものだ


「ロッドか。魔法だけじゃなく打撃もできる。いいのではないか?」


「これはねぇ、少々値は張るが、5属性までなら負荷に耐えられるよ」


「蓮の花…ですね…」


「買っておいて損はないと思うが、レベル1じゃMPも限られているだろうからな…この木の杖でいいだろう」


持ってきたの木の杖、だが、かすかに魔力を感じる。これも同じくロッドだ


「これはトレントから作ったものでね。丈夫でとても使いやすい。そこのお嬢ちゃんに期待を込めて、これは差し上げよう。ローブも何か見繕ってやろう。」


そう言うと老婆は黒いローブを取り出し、それを杖と共に渡してくる


「お代はいらないよ。杖も天魔族が作ったものを買うといい。見た所旅をしているのだろう?天魔族に会うこともあると思う」


「このおばあさん、なんでもお見通しですね…」


ハルカが小声で囁いてくる。確かにこの老婆はズバズバと俺たちのことを見抜いてくる。が、それは耳がいいとかではないことに俺は気づいていた


「魔眼だろう?」


「ほぉ…気づいたか」


「俺も魔眼持ちだからな」


「ほっほっほ。スケルトン(・・・・・)が魔眼持ちとは、面白い」


老婆は高笑いをし、顔を上げると、


「まぁ、あたしゃ、そんな便利なものじゃないけどねぇ。あたしゃその人の保有魔法の属性が色で見えるってもんさ。そこのお嬢ちゃんは4色だが、微かに違う色も見える。そして、あんたは赤と緑と黒、そしてなんとも、言えない真紅の魔力が別で見える。」


老婆はそんな風なことを言い、品物をさっさと渡し、店を追い出されてしまった。

時刻は4時ほどだろうか、買った品物は全てハルカのアイテムボックスというスキルの中に入れさせてもらっている。

これは、半径5m以内であれば、俺でも出し入れ可能だという。これは許可した人物にしかできないらしい


俺はその後も露店を見て回ったり、ハルカが食べ歩きをしたりして宿へ戻る。


衣類や装備などを出し、足りないものはないか確認をしていく。ハルカに服やローブを改めて着てもらい、それを眺める。「アイドルみたい」と言っていた。アイドルというものはわからなかったが、ハルカはとても可憐だった。


その後約束の時間になるまで待機している間、魔力循環の方法をハルカに伝え、一緒にやっていた。


(杖術を教えなければな…)


俺は触れたことのない武器をいかに教えるかについて考える。


そして、約束の時間になる

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