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骸骨は微笑む

翌日、村は昨晩の宴の余韻を各所に残していた。

木の枠組みで組まれ、燃やした後と思われるもの、外で腹を晒しながら眠るもの、酒瓶を抱きながら眠っているもの、未だ狼の姿のものなど、この村のいいところを垣間見る


「あら、ムルト様、お早いんですね」


村の中を散歩していると、1人の若い娘と会った。腕には体格のいい猪を握っていた


「おはよう。お嬢さんこそお早いですね。その猪は?」


「これはですね。今日の朝ごはんです。昨晩仕掛けた罠へ取りに行ってたんですよ」


「ほう。人狼族はやはり肉が好物なのか」


「そうですね。女である私ですらこの猪の半分の肉は食べますからね…で、でも、もっと好きなのは…」


娘は頰をほんのり赤くし、もじもじしながら俺のことを見つめてくる


(幾度となく見てきた…これは歓喜の目…次の言葉は…)


「「骨です(か)」」


「は、はい。そうです」


娘は顔を下に向けながら小さな声でそう言った。片手に持っている猪はともかく、こう言った恥じらいや仕草は人間の娘、年相応に見えた


「失礼でなければ、ほら」


俺はそういい右腕を前に突き出す。するとその娘はよだれを垂らしながら俺の顔と腕を交互に見る。それはまるで、待てをされている犬…のような。


(この考えは失礼だな)


ゴクリ、と大きな音が娘から聞こえてくる。これまた小さな声で「本当にいいんですか?」と聞いてきた。俺は快く頷くと娘は勢いよく俺の骨をしゃぶり始める。仕草は可愛くまさに、犬。昨日の晩の狼の姿であれば尻尾を千切れんばかりに振り回していたことに違いない


10分ほど経った後、娘は我に返り、俺の腕から離れると


「すいま、ありがとうございましたぁ!!」


と深々とお礼を言った。これだけ喜んでくれると逆に嬉しい。俺は軽く返事をし、村の散歩に戻る


(ふむ。あれだけ喜んでくれるのであれば、しゃぶられ甲斐があるというものだ。)


先ほどから視線を感じていたのだが、敢えてその方を見ないようにしていた。実は少しだけ見てしまったのだが…そこにはドアを少しあけ、骨をしゃぶられている俺をガン見していたニーナ…その眼差しは嫉妬と喜びのようなものだった。

自分もしゃぶりたい。そんな目だった





散歩を終え、ビットの家に戻り、朝ごはんを共にとっていた時のことだった


「ムルトさん、見てたよ」


ニーナが唐突にそう言った


「見たってなんのことだ?」


ビットがニーナにそう問いかける。ニーナの目は朝見た目と同じ嫉妬のような目、ジトーという効果音がつきそうな目だ


「ムルトさん、ハセっちゃんにしゃぶらせてあげてたの」


「なにぃ!俺もまだしゃぶっていないのに!」


ジットは机を叩きながら悲痛のような叫びをあげる


「ジット!食事中に失礼だぞ!すいません、ムルトさん」


ジットを諌めながらビットは俺に謝罪をしてきたが、その目は物語っていた。自分もしゃぶりたい。と


(人狼族は本当に骨に目がないな…それも俺の骨に…なぜ俺の骨?)


「よ、よければ皆さんもしゃぶりますか?」


「「「い、いい(んですか!)(のか!)(の!?)」」」


3人の息のあった返事がハーモニーを生んだ


(親子だな…)


「あ、あぁ。し、失礼でなければ」


「失礼などと!早速歯を磨いてきます!」


3人は朝ごはんをさっさと口の中に放り込み、村の井戸へ歯を磨きにいってしまった。

井戸へ走りながら誰が一番最初にしゃぶるか、という話をしているようだった。家長の私が、とビット

長男の俺が、長女の私が、とジットとニーナ


(全身が骨なのだがら3人分しっかりあるのだがな)


俺はその光景を微笑ましく見つめ、ビットの家でただ1人、3人の帰りを待っていた。


だが、この時の俺は、まだ知らなかった。この後に起こる大変な事態を

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