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骸骨は泣いた

「あら、人がいるなんて珍しいわ、領民の方ですか?」


後ろ声をかけられるで気づけなかった。注意力が散漫になっていたようだ。敵というわけではないらしく、暗闇に、こちらはフードを被っていることから、まだスケルトンだということには気づかれていない


「あ、あぁ。月を見ていたんだ」


「月を…綺麗ですよね」


声色から考えると、まだ成人していない年端もいかない少女、といったところか


「隣、失礼しても」


「構わない」


人と話すのは2日ぶりといったところか、別段空いたというわけではないのに、話をすることで心に余裕を持つことができた


「失礼します。あの、突然なんですけど、私の話を聞いてはくれませんか?」


「こんな私でよければ構わないが、今出会った人物に話してもいい内容なのか?」


「そう、ですね…あまり聞いていて心地よい話ではないと思いますが、私自身どうしたら良いかわからなくて…」


「話して楽になるのであれば聞こう」


少女も俺と同じく悩みを抱えているのだろうか。俺が聞いて解決できるものとは思えぬが、その話を聞いて少女の肩の荷が落ちるのであれば協力するのは吝かではない。


「ありがとうございます。今日の昼間の出来事なのですが、別荘に向かう途中で盗賊に襲われまして…」


「それは…災難だったな…今ここにいるということは、助かったということだろう?」


「はい。もうダメだと思った時、あるお方に助けていただいたのですが、その方が…」


俺はその続きをわかっていた。その助けてくれた人というのは間違いなく俺のことだろう。ということはこの少女は昼間襲われていたやつか


「スケルトンだったのです。そのスケルトンは瞬く間に盗賊を倒すと颯爽と森の中に消えていきました」


「モンスターなのに襲ってこなかったのか。ラッキーだったな」


「えぇ、ですが私は助けてくれたスケルトンにお礼も言えず、私は怖がることしかできませんでした…」


「モンスターは忌み嫌われるものだ。それが当然の反応ではないのか?」


「そう言われると、そうだと思うのですが、あのスケルトンは私たちを襲うつもりは微塵もなさそうだったのです。盗賊を倒した後すぐに剣をしまい去っていった。きっとスケルトンは私たちの反応を見て気を遣って去ってくれたのかもしれません」


「ふむ。して、あなたはそのスケルトンに何をしたいのだ?」


「お礼を言いたいです」


「…そのモンスターはもう関わりたくないと思っていたら?」


「それでも、この気持ちを伝えたいです。

ごめんなさい。そしてありがとう。と」


「そう、か」


少女と俺の間に静かな沈黙が流れた。それでも月は美しく輝き俺たちを照らす

心地の良い風が吹き湖に波紋が広がる


「それでは私はもういきますね。遅いと家のものが心配してしまいますので」


「あぁ。」


「ここは私のオススメスポットなんですよ。月と湖がとても綺麗でしょ?」


「あぁ。」


「この湖は精霊が住むと言われていて、モンスターは近づけないから安全なの」


「そうか」


少女が立ち上がり少し離れながらそんな話をしてくれた。俺も立ち、少女に背中を向けながら言う


「それでは、俺も失礼しよう。話せてよかった」


「私も話せてよかったわ。ありがとう。ごめんなさい」


俺は森の中に姿を眩ました。

後ろからは少女のすすり泣く声が聞こえてくる。

俺はそれでも振り返らず、月を見上げながら、口を開ける。

俺もカタカタと泣いていた

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