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骸骨に任せた


「お?その後ろ姿はポルコじゃないか?」


ムルト達が十傑の集まる円卓の間に向かう途中、前を歩いている大男に向かってジュウベエが声をかけた。その声に反応した大男が振り返り、ジュウベエを見つけて小走りに駆け寄ってきた。


「ジュウベエさん!お久しぶりです!お元気そうで!」


「おうポルコ!お前も昔とちっとも変わらんな!」


ドワーフにも負けないような髭を蓄え、お世辞にも良い体型とは言えないほどに太っている。着ている服などパンパンに膨れ上がってしまっている。


「えへへ、僕のお気に入りですから……」


ポルコはそう言って自分のお腹を優しく撫でた。


「その様子を見るに、小心者なのも変わらんようだな?」


「こっちの方が落ち着くので……ところでその人たちは?」


「おぉ!紹介が遅れたな、こいつらは俺達の新しい仲間だ!」


ジュウベエが簡単にムルト達の紹介をした。


「ムルトだ。よろしく頼む」


「僕こそ、ポルコです」


ムルトとポルコは握手をする。


「む?」


ムルトはポルコと握手をし、何かを疑問に思う。ポルコの顔を見てみるが、ポルコもなぜムルトが固まっているのかわからず、首をかしげている。


「ほう?気づいたか?」


「え?すごいですね」


ジュウベエもそんなムルトに気づいたようで声をかけた。


「む?まさか……」


「まぁまぁ、そのお話は後にして、早くしないとバリオさんに怒られてしまいますよ?」


「あ、そうですね。ムルトさん、ジュウベエさん、行きましょう」


「そうだな。話す機会はまだまだある。行くか」


円卓の間はポルコと会った廊下を行ってすぐのところにあった。王城の中にある重要な部屋ということもあり、その扉は荘厳な造りだ。


「待たせたなバリオ。ジュウベエ、ミナミ、ジャック、サキ、コットン、ポルコ、ここに到着した」


ジュウベエが率先して前を行き、部屋の扉を開け、そう言った。

円卓の間には、バリオとラマだけがいる状態だ。


「待っていたぞ。 ……そいつらは何」


バリオが後ろにいるムルト達を見て何かを言おうとした瞬間、強烈な破裂音が聞こえた。


「な、何をするっ」


「異色の……スケルトン!!」


ラマがムルトに向かって鞭を放っていた。ムルトはそれにすぐに反応し、月光剣で防いでいる。


「おいラマ!落ち着け!」


「ラマさん!落ち着いてくださいっ!」


ジュウベエとミナミが慌てて声をかけるが、ラマにはそんなもの関係なく、完全に戦闘態勢に入っている。


「落ち着く!?ジュウベエもミナミも何を言ってるの!そいつはセルシアンを殺して聖国も襲って、世界を滅亡させようとしてる凶悪なモンスターなのよ?!」


「それは違います!ムルト様は聖国を助けてくれたのです!」


「世界を滅亡させようとしているのはムルトではない!もう一体の黒いスケルトンのほうだ!」


「それにそこのあんた!ゴンがいるということは、あの時のワイトキングね?どうして生きているの?」


「あんたの貧弱な鞭じゃ死ねなかったとよ」


「ゴンっ!いや、あ、あの時はなっ、こ、心苦しくも我が曲芸団員を……」


突然の攻撃と口論に、円卓の間は混乱の渦に飲み込まれていく。


「そんなことどうだっていいのよ!!モンスターのあんた達がなんでこんなところにいるのかって聞いてんのよっ!」


ラマがティングの頭を砕こうと鞭を放り、またもや大きな音が聞こえる。だがその攻撃は、バリオが素手で掴んでおり、ティングに届いてはいなかった。

バリオの姿と殺気に、場が静まりかえる。


「落ち着けラマ。そこのお前らもだ」


バリオが見たのはガロウスとレヴィアとキアラ。ガロウスとレヴィアはめんどくさそうな顔をしながら臨戦態勢に入っており、キアラに至ってはニコニコとしながらも殺気を隠そうともしていなかった。


「ここは敵討ちするための部屋だったか?違うだろう?武器を収めろ」


この場にいる誰もが、相手の力量を見定めることが出来るほどの強者。戦闘が始まればこの部屋はおろか、城自体が消えてしまうだろう。


「チッ……」


舌打ちをしながらもラマは鞭をしまい、ガロウス達も臨戦態勢を解いた。

なんとも言えない空気が流れる中、バリオとラマは自分の席へと戻り、ミナミやジュウベエもそれぞれの席に座った。


「双方思うところもあると思うが、この円卓の間、王城にいる内はその気持ちをしまっておいてくれ……だが、貴様らがなぜここにいるかというのは儂も気になるところだ。ここで何をしている?」


「それは私が」


説明をしようとミナミが口を開いたが、バリオはそれを手で静止した。


「それはこの間聞いた。戦力としてこちらに手を貸してくれるという話だろう?実力を疑う余地がなければ、王もこの国に滞在することを許している。それはわかった」


バリオは、ミナミが言おうとしたことを的確に当てた。そして円卓の上に手をつきながら、厳しい面持ちで続けた。


「だが、なぜ円卓の間・・・・にいる?」


そう言われたミナミとジュウベエ達は、難しい顔をした。


「ミナミ達勇者と、新顔のコットンはともかく、ジュウベエ。貴様もここがどういう場かということはわかっていると思っていたが、それは儂の勘違いだったようだな。ここは国の中枢であり、作戦や問題を立案、対処案を考える場所だ。なぜ十傑という組織が存在しているのか、理解できない頭ではないだろう?」


バリオはジュウベエ達を叱責した。


「すまんバリオ。だがムルト達は必ず俺達の助けとなる」


「実力があれば仲間か?十傑と仲睦まじければこの場にいても良いと?」


「……それは違うが、こいつらは大罪に美徳だ。俺達の話し合いを聞いてもいいだろう?」


「それとこれとは別だ。この円卓の間に入ることを許されるわけではない。それに、実力ならばそいつらより上の人間などこの国にゴロゴロといる。そいつらもここに呼んで話し合いでもするか?」


「ほぉ?我よりも強い人間がいるのか」


「当然だ龍王よ。無論、儂以外にも貴様より上がいるぞ?」


「それは戦争の合図だととってもいいのか?」


「王の言葉がなければ、貴様など空の上で殺しておったわ」


「ほう?」


「あ、あの!!ガロウスさんもバリオさんも落ち着いてください!」


ミナミが慌てて二人を宥める。バリオもガロウスも、根っこの部分では似た者同士なのだろう。


「つまり、我らがここにいれるほど強ければいいのだろう?」


「……だからそういう話ではないと言っておるのだが……」


話が通じないガロウスに、バリオも呆れて折れてしまった。無理に追い出して暴れられても困ってしまうし、ムルト達と友好を深めているミナミ達勇者や美徳、大罪達がいなくなってしまうと思ったからだ。


「ならばわかった。十傑と同等の力を持っている冒険者と戦ってもらう。そやつに勝つことができれば会議への参加を認める。負ければ大人しく部屋で待つ。それでいいか?」


「おぉ!ありがたいな!それで良い!なぁムルト!」


バリオの提案に、ガロウスが嬉しそうに頷き、ムルトの背中を叩いた。


「あ、あぁ。無理を言って申し訳ないが、俺はミナミとこの国の力になりたいのだ」


「時間も惜しい。戦うのは龍王、お前だけで構わんな?」


「?何を言っている。戦うのは代表者、ムルトに決まっているだろう?」


「む?」


ムルトは驚いてガロウスを見るが、ガロウスは首をかしげてムルトを見た。


「時間がもったいない。さっさと行くぞ」


バリオは立ち上がり、歩き始める。ムルト達も覚悟を決めつつバリオの後ろをついて歩いた。


「言っておくが、貴様の相手は、頭はともかく、実力は儂に匹敵する男。三賢神が一人、剣神マサノリだ」


世界最強の一角、三賢人の一人に、今ムルトは挑戦する。

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