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骸骨達の入国


「ご無沙汰してます。バリオさん」


「……」


ミナミがバリオにそう声をかけたが、バリオは腕を組んだまま何も言わない。

王城の中にある、王国兵士達が使う一番広い訓練場に、ムルト達は降り立っていた。

ムルト、ハルカ、レヴィア、キアラ、ティング、ゴン、ミナミ、サキ、ダン、シシリー、ティア、ミチタカ、ジュウベエは兵士に囲まれている。

兵士の訓練場なのだから、訓練している兵士がいてもおかしくないのだが、それにしては誰一人訓練をしていなければ、誰もが武具を身に着け、静かな面持ちでムルト達を睨んでいた。


「なんなのだ……?」


ムルトはその異様な光景に少しだけ嫌な気持ちになるが、それも大きな風切り音と爆発音ですぐに消え去った。


「いやぁ~すまんすまん。大穴があいてしまったな」


特に悪びれてもいないガロウスが自分の頭をかきながら穴の中から這い出てくる。

大きな龍であるガロウスがレヴィアと同じようにこの訓練場に着陸しようとすれば、周りのものを破壊してしまう。それこそ城をだ。だからガロウスは遥か上空で自分の背中に乗っていた者達を落とし、空を飛べるレヴィアに枷をつけてもらい、人型のまま地上に落ちてきた。

イカロス王国に向かっていた全員がこれで揃う。ずっと無言だったバリオが、初めて口を開いた。


「帰ってきたと思えば、S2ランク以上はあるモンスターをごろごろと引き連れてくるとはな。戦争でもしにきたか」


そう言った瞬間、ムルト達を取り囲んでいた兵士たちが武器を抜き、それを向けた。


「違います!私達はバリオさんから送られてきた探鳥に従ってすぐに戻ってきたんです」


「あぁそうだ。お前の心配することは何もないぞ、バリオ」


「……ジュウベエ」


バリオはそれ以上何も言わず、ムルト達を見渡す。未だに納得はできていないようで、何とも言えぬ顔をしている。


「お初にお目にかかる。俺はムルト。月蝕の偽骨王ブレンドムーン・バッドスケルトンSランクだ」


ムルトは、突然仮面を外し、自己紹介をした。それを見たティングも仮面を外し自己紹介をする。


「私はティング、偽欲のクレイ……」


「自己紹介はいい。お前たちのことはよく知っている。全く、異色のスケルトンを三体も出してしまうとはな……」


「……私はワイトなのだが……」


そう呟くティングの肩を、ゴンが優しく叩いている。バリオはまた考え始めてしまったようで、沈黙が帰ってくる。が、それをガロウスはすぐに破った。


「腹の探り合いはよそう。お主も相当な手練れだということは見ればわかる。そしてこの兵士たちも一筋縄ではいかぬ曲者揃いだということもな。お主たちが戦争を始めるのであれば、先ほどの我らが空中にいたときに追撃をするはずだ。それもせず、このような中枢に着陸を許したのだ。そちらも争う気はないのだろう?」


ガロウスがバリオにそう投げかけると、バリオは右手を挙げた。それを見た兵士たちは武器をしまい、先ほどと同じような綺麗な円となる。


「……その通りだ。今はまだ争う気がない。だが、俺が戻るよう命じたのはそこの三人だけだ。なぜこんなに増えている」


「それは……」


「任せてください。ムルトさん」


ムルトが前にでようとしたところを、ミナミに止められる。イカロスはミナミが世話になっている国で、バリオは上司。ムルトに迷惑をかけるわけにはいかない。


「探鳥の手紙を読んで、戦力が必要なことがわかりました。なので、力になれるであろう信じられる仲間達と共に帰還しました。それに、こちらのハルカとティアは美徳を持っていますし、ゴンさんとミチタカさんはSランクの冒険者です。ガロウスさんは龍王ですし、ダンさんとシシリーさんも強く、必ず力となります。それにこちらのティングさんはモンスターではありますが私達と良好な関係を築いていますし、ム」


「ムルトか。異色の骸骨。今ではSランクのモンスター。そっちの淫魔とドラゴンも余程の規格外に見えるが?」


「……バリオさんの思っている通り、お二人は大罪持ちです」


「だろうな……危険はないのだな?」


「っ!はい!ありません!」


ミナミがそう言うと、バリオは固く結んでいた腕を解き、背中を向けた。


「聞けば、ラビリスから来たらしいな。疲れただろう。東棟の部屋を使え。国王からの指示だ」


「っ!それではっ」


「……お前たちの入国を歓迎しよう」


「おぉ……!」


ムルト達は入国を許されたことに静かに喜んだ。


「明日、十傑全員が揃う予定だ。会議の時間は追って連絡する」


バリオはそれだけ言うと、去って行ってしまった。ムルト達を取り囲んでいた兵士たちも、それに続くように次々と訓練場を後にしていた。

それと入れ替わるようにどこからともなくメイドがやってきて、ミナミへ複数の鍵を渡した。


「一時はどうなるかと思ったな」


「びっくりしましたね、ムルト様」


「皆、私はワイトだぞ」


「わかったわかった」


「我としては戦争してもよかったんだがな!」


「私も別によかったんだけど」


「あの人はともかく、周りの人たちは私の大罪でどうにでもなりましたのに……」


「ガロウスさん!レヴィアさん!キアラさん!!バリオさんに危険はないっていったのに!そんなこと考えてたんですか?!」


「向かってくるのであれば、我は受けて立つまでよ!……まぁ、最初からそんな気がないことはわかっていたのが惜しかったがな」


「私はみんなのおかげでビクビクするだけで済んだけどね」


「シシリー、俺もだ」


「っ!あんた龍王騎士になったんでしょ!シャキっとしなさいよ!」


「……早く、部屋行こう。疲れた」


入国を認められたことに安心したのか、皆がリラックスしていた中、ティアがそう言った。

皆もそれは同じのようで、ミナミはすぐに城の中を案内しようと歩き出す。


「バリオは戦争する気はないと言っていたが、常に殺気を放っていたな……」


「ムルトよ。お主もわかったか。いや、皆わかっておるだろう」


呟くムルトへガロウスが肯定し、その続きを話す。


「あ奴は戦争するつもりはなかった。が、あ奴自身、一人・・で我ら全員を殺す気はあったようだな」


「だが、それは思いとどまってくれたようだったぞ」


「ふん、どうだか」


「ほら!あんた達!さっさと来なさいよ!今度こそ討伐されるわよ!」


「あぁ、すまない」


ムルトとガロウスもミナミの後を追った。


「コラコラ!走ると危ないぞ!」


「ですが、感じるのです。この魔力は……」


訓練場を出て、東棟に向かう廊下でそんな声が聞こえてきた。

簡素ではあるが、王城にふさわしい僅かな贅が拵えらている廊下。それに似合わぬ慌ただしい足音が、ムルト達へと近づいてくる。その足音は丁度こちらの曲がり角と落ち合う場所に向かっているようで、ミナミが衝突しないように曲がり角で足を止める。だがその足音は迷うことなくこちらへ曲がってきたようで、ミナミに衝突してしまう。


「あぅっ」


「だ、大丈夫ですか?」


ミナミは身構えていたので大丈夫だったのだが、衝突してきた少女は違ったようで、揺るがないミナミに負けて尻餅をついてしまったようだ。


「だから危ないと言っただろう。全く。すまなかった。怪我はな……い、か?」


その少女を追いかけてきた男。赤と黒が波線で半分にされた仮面を被っている。王城の兵士や従者とは思えない風貌だ。その男がミナミ達へ少女の代わりに謝罪をしたのだが、固まってしまった。


「その仮面は……」


(あの仮面……)


見覚えのある仮面。目の前で尻餅をつく少女の服装にも、ムルトは見覚えがあった。

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