骸骨は再出発する
暗い森を走り続ける。
追いつかれないように。出会わないように。
天気は雨、俺は走り続け疲れていた。HPは1しか残っていないのだ
(暗雲で月が隠れているな…)
月読のおかげで敵を避けながら真っ暗な光のない森をかけていく。そして一つの洞窟を見つけた
(懐かしい…俺のいた洞窟と似ているな)
疲れ果てた俺は何気なくその洞窟の中に入っていった。雨風を凌げ、心休める場所、そんなところを探していたのだ
月読にモンスターがうつる。それはスケルトンだった。ランクGなんの害もないスケルトン、彼らは部外者の俺に攻撃してくることはなかった。同じスケルトンだからだろうか。
俺は洞窟の奥に行き、やっと一息つく。
俺がいた洞窟のように大穴は空いてなく、月を見ることは叶わなかったが、今日はあいにく月が出ていないので好都合だった。
(今日はたくさん、ありすぎた)
俺は今日の出来事を順番に思い出す。朝に月の女神と出会い、昼に自身の変化にびっくりし、夜には1人で逃げている。
最後に思い出すのは少女のあの不安な顔、
(怖がらせてしまった…な。反省だ)
俺はそんなことを考えながら目をつぶった。
初めての、睡眠だった。
★
太陽の光が洞窟の入り口から差し込み、俺は目をあけた
「ん…眠って、いたのか」
俺は自分が横になり意識を手放していたことを思い出す
「これが、睡眠か…ふむ、悪くはなかったな」
俺はその場で立ち上がり現状の確認をする。
名前:ムルト
種族:月下の青骸骨
ランク:C
レベル:27/50
HP366/1240
MP600/600
固有スキル
月読
凶骨
下位召喚
下位使役
魔力操作
スキル
剣術Lv3
炎魔法Lv6
風魔法Lv1
暗黒魔法Lv1
危険察知Lv6
隠密Lv10
称号
月を見る魔物、月の女神の寵愛、月の女神の祝福、月の使者、忍び寄る恐怖、心優しいモンスター、挑戦者、嫌われ者
あの蠍を倒しただけでレベルがもう半分ほども上がっていた。
それに対してステータスも向上しているが、HPが不完全だった。
(ふむ…)
俺は自分の体を見て原因を突き止めた。それは、ボロボロの骨である。骨を数本砕かれ、そのほかにもひびの入っているものが多い
幸い、自分の骨は替えが利くのを知っている。そしてここにはスケルトンがいっぱいいる、
(しかし…やはり同族に手をかけるのはやめておきたい)
俺はスケルトンを目の前にし、剣に手をかけていたがそれをやめた。
試しに手を前に突き出し唱えてみる
「使役」
目の前のスケルトンはカタカタ、と音を立てると静かに立つ
(これでよいのだろうか…右手をあげろ)
目の前のスケルトンは右手をあげる。どうやら使役は成功したようだ。彼は召喚したスケルトンではないので魔力がつきても消滅することはないだろう
「成功。だな、よし、君の仲間の残骸があるところまで連れていってくれないか」
目の前のスケルトンは、またカタカタと音を出して歩き始める。歩いてすぐ、無数のスケルトンの残骸が無造作に転がっている場所につく。なぜスケルトンの残骸がここに集まっているのかはわからないが、好都合だった
「ありがとう」
俺はここへ連れてきてくれた彼に軽くお礼を言う。また彼はカタカタと音を出すだけだった。
俺は目の前の残骸から砕けたアバラ、足の同じパーツを取り自分の体に取り込んでいく。
ひびの入ったところも変えようと思ったのだが、どうやらひびが入っている骨は、他の骨を押し当てるとその骨を吸収してひび割れを治すらしい。
新しいことに気づけた。
俺はまた自分のステータスを確認し、HPが少しずつ回復していることを確認すると、予備の骨を5本ほど荷物に入れ元の場所へ戻る
(よし、これで体に関しては大丈夫だな)
次に荷物を確認した
決して手放すことのない月光剣、エルフにもらった荷物入れと紹介状、銀貨の入った袋、門兵にもらった大袋二枚に、先ほど回収した骨
仮面と外套はスコルピオンとの一件でズタズタになったのであの場へ置いてきてしまった。
ブーツは汚れているがまだ使える。
手袋はスコルピオンの毒のせいだろうか、溶けて穴が空き、骨を隠すことはできなくなっていた
(ふむ、とりあえずしまっておこう)
俺は現状の確認を終えると、使役をかけていたスケルトンを解放し、お礼を言い、太陽が昇り始めた森へ向かって歩き出した
向かう場所は決めていないが、これからの旅は明るいものだと思っていた。




