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死者達の行軍

これは、ゴーグ達がコロシアムに姿を現わす数分前。


「……」


「どうしたの、爺ちゃん」


大きな荷物を背負ったムサシとダイチ。

2人は喧嘩祭りの予選を終えた後身支度をし、剣の修行をするため、ラビリスを後にしようとしていた。


「ムサシ殿……何か胸騒ぎがしますな」


そう言ったのは、Cブロックでムサシと剣を交え、Cブロックでムサシと呆気なくやられた男、トウショーだった。


ラビリスを出て、剣の修行をするにあたり、ムサシがトウショーも誘ったのだ。同じ敗者、そして剣を交えた者同士、さらに高め合おうと思えたからだ。それはダイチにもいい影響を与えると。


「何かが来る」


「何かってなんだよ」


ムサシとトウショーは何かを感じているようだが、ダイチにそれはわからなかった。

活気のある街。歓声の響くコロシアム。

ラビリスでは、ダンジョンでとれた特産品を売ったり買ったりする冒険者、喧嘩祭りの賭けや中継を見る者達で賑わっており、平和そのものだった。


ドラゴンが空を飛んでいるわけでも、隣国が内戦を始めたというわけでも、ダンジョン内のモンスターが溢れかえったわけでもない。

だが、ムサシは自分の経験を信じた。

重々しく、口を開く。


「暴力が、来る」





「ん?なんだありゃぁ……」


ラビリスを囲む、巨大な城壁。その上にある櫓から、守衛はそれを確認した。


「スケルトンにワイトに……ゾンビまで?」


それはアンデッド。

ラビリスの周りには、いくつものダンジョンがある。守衛が見つけたモンスターはそのダンジョンから偶に出てくるモンスターに過ぎなかったが、問題は()種類(・・)


「レッドスケルトンにオーガゾンビ……ありゃあ、ボーンスケイルドラゴン……!Sランクじゃねぇか!おい!!」


守衛は慌てて櫓の下にいる同僚に声をかけた。


「冒険者ギルドに緊急依頼だ!!アンデッドの大群がラビリスに向かって行軍してきてる!!」


「何?!数は!」


「わからん!!数百。いや、数千はいる」


「わ、わかった!すぐに報せに行ってくる!」


同僚が走り去っていくのを確認し、アンデッドの大群に目を向ける。未だ遠くにいるそれらだったが、それは確かにこちらに向かってきている。櫓の守衛は空を飛ぶ巨大な亀を確認すると、すぐに退避した。





「ゴ、ゴ、ゴーマ。駒の数は後どれくらいだ」


「Bが3200。Aが34。Sと幹部は4体じゃ」


「わかった。よ、予定通り。地上はゴードにま、ま、任せた。セルシアン(・・・・・)は俺たちとカチコミにいく」


「了解した」


ゴーグに返事を返したのは、2mとは思われる大きさの骸骨。鎧で体を包んでいるが、頭だけは何もつけていない。


ゴーグは指示を出すと、用意されていた魔法陣の上に立ち、空間を引き裂いた。

黒いヒビの中に手を入れ、力一杯に広げる。

その後ろにゴーマ、ゴーパ、セルシアンが続く。


ゴードはそれを見送った後、室外へと出た。


眼下に見えるのは、アンデッドの大行進。隣には骨でできたドラゴンが飛んでいる。


「エルダーリッチ」


ゴードがそう言い、指を弾くとどこからともなく湧いて出る。


「お前はB〜Cランクのアンデッドを生み出し続け、兵力の強化。強襲は残りのSランク、亀と龍だ」


ゴードはそう言うと、亀の背中から飛び降りた。

急降下し、行軍するアンデッド達の前に大きな音を立てて、着地し、ズンズンと共に歩き出す。

エルダーリッチはその側をふわふわと飛んでいる。


「死の軍団の第2の指揮権はお前に譲る。上手く使え」


「ゴ、ゴーグサマ、ドウスル」


「私も前線に出る。皆の者!!これは勝ち戦だ!我らが力を、陛下の力を人間共に見せつけろ!!」


両の拳を打ち付け、そう高らかに言った。





「な、なんだよあれ」


「アンデッドの群れ……か」


「……」


妙な胸騒ぎを感じたムサシ、ダイチ、トウショーは、一旦ラビリスを出るのをやめ、街に残った。すると、大慌てで街の中を駆ける守衛をみかけた。声をかけてみると、アンデッドの群れがここに向かってきているらしいのだ。方角を聞き、3人はすぐさまそこへ向かった。


骨だったり腐っていたり、漂っていたり。

ラビリスの門からもそれらは見えていた。


「……ありゃあ……手強いのぉ」


ムサシが見つめる先には、巨大な鎧で身を包み、顔のみを出しているアンデッドだ。


「ギルドから援軍は来ると思う……がっ!」


トウショーが刀を片手に走り始める。それに続くように、ムサシとダイチもラビリスの外へ向かって走り出した。


3人はすぐにアンデッド軍団の先頭とぶつかろうとしていた。


「少しでも数を減らしておかなきゃあなぁ!!」


「同感です!」


「……!」


3人はそれぞれ刀を抜き、大敵に挑む。


「来たか、だが、3人だけでは我が軍を退けぬぞ?」


ゴードは、龍の頭蓋骨でできた巨大な槌を取り出し、構えた。


「いいや、4人だ!!」


頭上から違う男の声がする。それが聞こえたと思えば、死した大空亀が大きな音を立て、大量のアンデッドを巻き込みながら墜落した。


「3も4も変わらぬと思うが?」


「ふんっ、変わるさ!!」


ゴードは槌をその者に振り下ろした。

男はその槌を己の拳で相殺し、受け止めた。


「助太刀、感謝する」


「あぁ。すぐに大勢くる」


ムサシが男に声をかけると、男も声を返した。

3人には見覚えのある男。


それもそのはず、3人と同じ大会に出場し、3人と同じく予選で敗退した男。


コルキンだった。


「骸骨(ヅラ)には少しイラついててな。八つ当たりさせてもらうぞ」


「できるものならな」


ムルト達とは別に、街を守るための戦いがはじまろうとしていた。


カクヨムにも掲載致しました。

コンテストにも参加中です。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054886093350/episodes/1177354054886093365

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