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ハルカVSティア2


「ユキッ!」


『30秒ってところね』


「十分っ!」


ハルカはユキにそう聞くと、ユキはすぐに答えた。この秒数は、ユキが聖結吹雪(ホーリースノー)を今の範囲のままだし続けられる時間であり、ハルカの氷獄の戦姫(アイス・ヴァルキリー)が保てる時間でもある。


ハルカはすぐに駆け出しティアとの距離を詰めようとするが、増えては消える骸の壁が中々ティアへの接近を許してはくれない。


「氷の鎌、綺麗。だけど、鎌なら私()も負けない」


ティアは膝をつき、杖を置き、祈るように手を合わせる。


ユキが使っている魔法、聖結吹雪(ホーリースノー)はハルカの聖天魔法の魔力をユキに流すことによってその聖なる力を発揮している。

ティアも聖天魔法の元になる信仰の美徳を持っているのだが、ティアの使う死霊術との相性が悪く、聖属性を付与することもできず、聖天魔法自体のレベルも高くはない。


「美徳のスキルのいいところは、聖天魔法が使えるようになる。ことだけじゃない」


ティアを包むのは、聖天魔法の魔力にも似た輝かしい何かだったが、それとは違う。


「信仰の美徳。現神招来(げんしんしょうらい)


魔力はティアから溢れ出し、空中でその形を成した。


「『死神(しじん)・タナトス』」


光で形成されたそれは、完全な人型となる。

黒いシルクハットに、白いペストマスク。

ズタボロな黒い衣服の下には、頑丈そうな革鎧を着込んでいる。

そして何より一番目立つのは、持ち主と同じほどの背丈の長さの真っ黒な鎌だ。


「タナトス様、お呼びしてしまって申し訳ありません」


『気にすることはない。……お前にしては魔力を使いすぎているようだな。相手が相手だから仕方がないが……』


タナトスは目の前の女性2人を見て、その力量を測る。

自分の足元には到底及ばないながらも、召喚された自分が倒しきれるかどうか、というところだ。


『どれくらい保ちそうだ?』


「……10秒」


『充分すぎるな』


タナトスはそれを聞き、すぐに駆ける。

止めどなく召喚されていたはずのティアのモンスター達は、それを止めていた。

これがティアの使った現神招来の欠点である。

膨大な魔力を使ってしまうだけではなく、神を呼んでいる時は他の魔法が使えず、ずっと祈りの形をとっていなければならない。


『7人のうちの1人、か』


ハルカとタナトスは刃を交えた。

甲高い音が幾度となく鳴り響く。

タナトスはハルカの攻撃を全て防いでいるが、どうにも攻めあぐねているようだ。


『中々筋が良い』


既に30秒は経過しており、ユキの聖結吹雪(ホーリースノー)は消えている。

ハルカの氷獄の戦姫(アイス・ヴァルキリー)も途切れるはずだったが、ユキがすぐにハルカの中へ戻り、多少の魔力を還元している。それでも保つのは数十秒。

ハルカは歯を噛み締めながら耐えている。


『ティア!あと10秒は耐えろ!キメる!』


タナトスは大声を上げた。ティアが言った10秒を超えてしまったのだ。

ティアも歯を食いしばり、魔力を練り続ける。

タナトスは鎌を巧みに振り回し、ハルカの鎌を弾き、隙を作らせた。


「くっ!」


『鎌の使い方はまだまだのようだな』


タナトスは前傾姿勢になり、体をねじり、鎌を構える。


『とっておきで決めてあげよう。ー死の大鎌(デス・サイズ)


タナトスの背丈ほどの鎌がさらに大きくなる。コットンの使うハンマーのように、その大きさは変幻自在のようだ。


ペストマスクを被っているタナトスの表情は見えないが、ハルカにはどこか笑っているように見えた。


(これがティアちゃんの信仰の美徳の力……だったら私も堅固の美徳の力を……使えるはず……!)


悲鳴をあげる体に鞭を打ちながら、思考をフルで回転させている。

だが堅固の美徳の魔法を使ったこともなければ、使い方がわかるはずもない。ハルカは自分に迫る大鎌を凝視していた。


(ムルト様が体を堅くしている時に、怠惰の大罪の魔力を身に纏っていると言っていた……なら私も……?)


ハルカは諦めずに考える。自分の体の中の異質な魔力を探す。それが、堅固の魔力。

魔力が枯渇寸前だったのがよかったのか、自分の体の中にある特別な魔力にはすぐに気づけた。が、それを引き出そうと思った瞬間。


(んっ……!扱い、きれない!)


堅固の美徳だと思われる魔力は見つけた。引っ張り出すことには成功した。が、それは言うことを聞かず、荒れた海のように、大きな波となって暴走する。


『ほう』


ハルカの最後の足掻きに驚いたタナトス


(この状況で、まだ勝とうとする意思、そしてどうすれば勝てるかという判断。挑戦。悪くはないな。だが)


『体を覆うことができなければ、間を突かれるぞ』


タナトスはハルカから溢れ出す堅固の魔力の間を縫って、堅固の魔力が覆っていない部分を大鎌で狙った。首筋から入り、左胸を経由し、腹を裂き、右足の付け根へと抜けていく。


ハルカはそれを耐えきれるはずもなく、上下に体を裂かれてしまう。


「ムルト様っ……!」


無慈悲に響いた声は、ティアの耳に届く。

ハルカがステージ上から消える頃、ティアにも限界がくる。

タナトスは突然消えた。


そして、ステージ上にただ1人残ったのは、言わずもがなティアだけだった。

ティアも無理に魔力を練ったせいで、すぐに気を失ってしまったが、これで喧嘩祭りの本戦、第1回戦の勝者決まった。

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