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骸骨と白い羽


「それでは俺たちは行くとしよう。世話になった」


「お世話になりました」


俺とハルカは深々と頭を下げる。

ここは渓谷の上、つまり地上だ。

俺とハルカは天魔族の住処である霊龍の渓谷で3日過ごし、稽古をつけてもらい、ハルカは蓮華を強化してもらった。


「シヴィエード様もお見送りしたいと仰っていたのだが、仕事もあって来れない。私から詫びよう」


「いや、フローラ大丈夫だ。こちらこそ忙しい中世話までしてもらって申し訳ないのだ」


「そうか。それではあいこということにしよう」


「頼む」


フローラは微笑み、右手を差し出した。


「達者でな」


「フローラ達も」


固く握手を交わし、俺とハルカは仮面を被り、一礼をしてから歩き出す。

渓谷が見えなくなるほど森の中を進んで行く。


「良い方達でした」


「その通りだな。最近は人の優しさばかりに触れている」


「ふふふ、人間ではありませんけどね」


「逆に人間は優しくないように思えてしまうな」


「ムルト様ったら」


「ははは、冗談だ」


ハルカと冗談を言い合いながら迷宮都市ラビリスに向かう。

フローラ達の話によると、真っ直ぐ進んでいればすぐにわかると言っていた。

そしてラビリスに近づくほど、看板が増えると言っていたのだが、何の看板かがわからない


「ラビリスは、ダンジョンがたくさんある街らしいです」


ハルカは、ラビリスについてシヴィエードから詳しく教えてもらっていたようだ。


俺達が今向かっている迷宮都市ラビリス

その街の周りには、GランクからAランクまでの様々なダンジョンが存在しているのだという。少し遠出をすればSランクのダンジョンまであるのだとか。

そんなラビリスが巨大な都市になったのは、そのダンジョン達のおかげである。

ダンジョン内で手に入るモンスターの素材や、ダンジョン内で見つかる宝箱から出てくる魔道具や、剣などといったアイテムが特産品になっており、便利なものも多数市場に流れるらしい。


そして、俺たちの目的である喧嘩祭り、ダンジョンで賑わっているからこそ、猛者が集い、行われる。使用武器や魔法は自由、街の中心部にあるコロシアムでぶつかり合うらしい。


「きっと面白い魔道具や便利なものもあるかもしれませんし、市場を観光するのもいいかもしれませんね」


「そうだな。ハルカに渡した魔力の指輪のように自己強化のできるアイテムなどがあるといいな」


「楽しみですね!」


まだ見ぬラビリスに期待を抱きながら、森の中を進む。


「っ」


俺は何かを感じ、立ち止まる。


(敵……ではない。いや、生物の気配もない)


俺はいつものように、憤怒の魔力を薄く辺りに張り巡らせ、モンスターを近寄らせないように進んでいた。この辺りのモンスターは天魔族が間引いたりしてることもありあまり強い個体はいないはず。だが、俺は何かを感じた。


「ムルト様も、感じますか?」


「あぁ。ハルカもか?」


「はい……この感じは、大罪、ですね」


そう、何の変哲も無い、森の中の少し開けた場所、戦闘の跡もなく、ただただ静かに風が木の葉を揺らしているだけだ。

だが、俺が持っている大罪に似た魔力が漂っているように感じる。


「ムルト様、ここに」


ハルカが木に近づいた。

その木は、何かが当たったかのように丸く凹んでいた。

そしてその木の下には、白い羽が落ちている。


「これだな、微かに魔力が残っている」


その羽からは大罪の魔力を感じたのだ。そしてその羽から、オレンジのような色をした魔力が滲み出て、俺の宝玉へと浸透していってしまった。


「大罪の魔力で間違いないな。そしてこの魔力は……」


「傲慢、でしょうか」


「恐らくな」


憤怒と怠惰が俺、強欲と暴食がエルト、そしてレヴィアが嫉妬なのだが、もしこの魔力が色欲だとしたら、嫉妬の魔力を感じないのはおかしい。


「白い羽ですか」


「俺のように自我を持った鳥系のモンスターだろうか、それか」


俺は口を噤んだ。

一瞬頭をよぎった種族、先ほどまで仲良くしていた種族。

人間族以外に大罪スキルが発現するのであれば、当然可能性はある。

しかし、俺はその考えを捨てた。


「進もう。ここにいたところで何もありはしない」


「そうですね。特に何があったかもわかりませんし」


俺とハルカは何事もなかったかのようにラビリスへと向かう。

突然突風が吹き、白い羽がハルカの手元から離れた。


「あっ」


俺たちから逃げるように飛んでいく羽は、とても優雅に、それで恐ろしくも見えた。

その羽は俺たちから逃げたのではなく、何かを連れて帰ってくるように感じた。


『大罪は1つに集まる』


誰が言ったかわからないその声は、俺の胸に、深く響く。

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