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傲慢の罪


彼は突然変異をしたグリフォンだった。

鷹の頭を持ち、獅子の体を持つモンスターのグリフォン。


本来はそうなるはずだったが、彼は鷹の頭に獅子の体、それに蛇の尻尾に人の手足を持ち合わせていた。

端的に言って異形、その姿は仲間たちから嫌われ、いじめられていた。


だが彼の体は仲間たちよりずっと頑丈で、知識もあった。体から生えている手足を使い、器用に服や武器を作り、戦えるほどまでに。


彼は当初からいじめてくるものを退けては、返り討ちにしていた。


いつしか彼は慢心をしていた。それも負ける日までずっと、そして傲慢の罪を手に入れる。彼は自分の体を変化させることに気がつき、動きやすい体へと変化させた。鷹の頭に獅子の体、しかしその形は、人間のものと同じだった。


さらに武器と装備を強化し、自分を虐げていた仲間たちを全て打ち滅ぼし、傲慢の大罪になった。


それからは早い。自分が生まれ育った森から出て、旅をした。


出会う人間にはチャンスを与えた。


『我に一撃加えてみろ』


少しでも体に傷をつけられるものがいれば逃した。

そうでない者には……


『武器を捨てるか、命を捨てるか、選べ』


命が惜しい者や戦うことのできない商人は武器を渡していたが、そうでない者もいた。思い入れのある武器、高い値で買った武器、仲間と共に戦いを決めた者たち。


その者たちは命を代償として払うことになっていた。


傲慢の大罪に負けはなく、逃しはしても殺されることはなかった。

向かってくる者の命を奪い続け、慢心はさらに大きくなる。それだけ力も増大していっていた。


だが、とうとうその日は来る。


彼の目の前を少年が通る。


『止まれ』


彼は、最悪のモノを引き止めてしまった。





彼は特別な力を持つ天魔族だった。

天魔族特有の浅黒い肌に、真っ黒な目玉に紫の目、そして翼は特別な力を持つ者が生えるといわれている腰に、同じような時期に2人目の腰羽持ちの内、1人目の幼児が誕生したのだ。


(ここは……?)


彼が産まれた時、産声をあげなかったことで、出産に立ち会った者全員が慌てた。背中をさすり、喉に何かが詰まっていないかと出させようとしたり、体を拭ったり、魔法でどこか悪い場所がないか探したりなどだ。


だが彼の体に悪い箇所はどこも見つからなかった。天魔族は成長が早い。彼はすでに自我を持ち、落ち着いた男の子、ということで収まった。


天魔族達の予想通り、彼は自我を持っていた。そしてもうひとつ。前世の記憶も持っていた。


(僕は確か山の中で……)


自分がどのようにして死んだかを朧気にだが思い出す。

彼は腰羽持ちということもあり、大切に育てられていた。生後1時間で言葉を喋り、2時間で魔法を扱えた。


「すごいわ!あなた!」


「あぁ!本当にすごい!自慢の息子だぞ!」


「うん!ありがとう!!」


産まれたばかりの彼はすでに溢れるほどの愛に包まれていた。それは前世にはなかったもの、彼は感動をしていたが、すぐに思う。


(はぁ……つまらないなぁ……)


彼は思い出す。前世で楽しんでいたことを……


そしてその晩、彼はすぐに歯を生やし、乳を吸うよりも先に、食べ物を食べることになった。

そして彼が授かった特別な力を知る。


(悪食……?)


ゲームのウィンドウのようなものが彼の目の前に現れる。それはステータスの選択肢だった。彼の家族には見えていないようだ。


(スキル取得選択……)


猪の肉を食べた時、それは出てきた。

突進、牙突、スタミナUP、牙、皮……

その猪が有してるものが出てくる。

彼は何気なく印象の強い牙を選ぶ。


そしてそれを自分の体へと反映させた。

彼の鼻の端から、雄々しく鋭い牙が生えてくる


「リク!どうしたの?!」


「あ、あぁ母さん、これは、その……」


「まさか、それがあなたの力?」


「うん。そうみたい」


彼の親子は我が事のように大喜び。


(ステータス……ふーん。【悪食】か)


食べたもののスキルや身体的特徴を1つだけ自分のものにすることができる。だがそれは食べた個体につき1つ。例えば鶏の胸肉を食べて能力を手に入れたら、手羽先を食べても能力は手に入らない。というものだ。


「ねぇ、母さん、父さん」


「なんだいリク」


「僕も翼があるんだから飛べるんだよね」


「あぁ飛べるようになるぞ!」


リクは翼をバサバサとし、飛ぼうとするが、体を浮かすことすらもできなかった。


「ははは、そう急ぐなリク、産まれたばかりさ。リクはすぐに喋れて考えて食事をできるだけでもすごいんだぞ?」


「えぇそうよ。あ、でもフローラ様は産まれた頃から飛べるって言ってたけど」


「あぁ、産まれた時から翼が6枚あったらしいからな」


「じゃあ僕も翼があればすぐに飛べるの?」


「あぁそうかもしれないな。でも、練習すればすぐに飛べるようになるさ、もしかしたら、翼も生えてくるかもしれない!」


「でも僕は今すぐ飛びたいんだよなぁ〜」


その時リクは考えてはいけないことを考えた。


(そうだ……この能力を使えば……)


リクは自分の能力を思い出す。悪食という恐ろしいスキルを


その晩、リクの両親はいなくなった。

前世でもしていたことを、現世でもやってみた。


「うわぁすごい!本当に飛べた!」


6枚(・・)の翼をバタつかせながらリクは部屋の中を飛んでいる。鏡に映った赤く塗れた自分を見て思う。


「神様みたいだぁ……あ、でも神様ってもっと羽があるよね……う〜ん。あ!そうだ!」


リクは恐ろしいことを思いつき、それを実行してしまう。





夥しいほどの翼を生やした少年は、肉塊の上で目玉を咀嚼していた。


「う〜んいっぱいスキルがあって迷うなぁ〜」


少年は手を休めることなく肉塊を次々と腹の中へと収めていく。


「ー吸収ーっと」


地面や木々に飛び散っている肉片や血なども、手に入れたスキルを使い余すことなく体に取り込んでいく。

どのスキルを取ろうかと悩んでいる少年、リクはあるスキルに目を止めた


「傲慢の大罪……?大罪って言ったらやっぱり七つの大罪?」


前世の世界でも漫画などになっていた七つの大罪の1つ、傲慢、彼は目新しく、今までにみたことないスキルだったため、興味をもった。


「これがいいよね」


リクは数あるスキルの中から傲慢の大罪を選択する。ステータスウィンドウが消え、確かに力が漲ってくることを確認する。


「これはすごい……これでまた強くなったね。ま、僕に勝てる人なんていないと思うけど!」


血の一滴も残すことなく平らげたリクは翼を広げ、大空へと舞っていく


「次はどっちに行こうかなぁ〜……ん?なんかあっちは嫌な感じがするな……」


空を見渡し、リクは嫌なものを感じる。

それが大罪スキルとは対をなす、美徳スキルだということをリクは知らない。


「こっちに行ってみよー!」


嫌な感じがする方角とは逆にリクは飛んで行った。


大きな悪が、世界が震え上がるほどの鼓動を、脈打ち始めていた。


いつもありがとうございます。


ちなみに傲慢の大罪前任者の種族名は、慢力の混獣王です。

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